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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Judgement To [All] Another
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After The [Dancer] 2

 辿り着いた玄関の有様に、ガブリエラは思わずクスリと笑みをこぼしてしまう。

 正面に停められたリムジンまでの道のりはレッドカーペットに彩られ、その両脇には構成員達がずらりと並んでいたのだ。


 仕方のないやつらだ、とガブリエラは口角を上げながら左手を上げる。

 すると構成員達はソレに応えるように一斉に頭を下げ、メリチェルに手を引かれてガブリエラはその花道を進んでいく。


 ガブリエラの両親は殺され、メリチェルの両親は殺した。


 その過去は直視したくないほどに辛い物だが、それ以上にガブリエラはこれからの日々に希望を持っていた。


 今度こそガブリエラはメリチェルと一緒に幸せになるのだ。

 だからこそ組織も過去も何も関係なく、ただの親子として今度こそ2人は幸せになるのだ。

 血の繋がりはなくても、2人はお互いの傍らに居る事を望んだのだから。


 レッドカーペットも半ばを来た頃、ふと視界の端にキラリと光る何かを感じたガブリエラは視線を上げる。


 バイラオーラのアジト兼ビバンコ邸は街中にある大きな屋敷だ。

 つまりは、狙撃をするためのポイントが多いという事でもある。


 光をスコープのレンズの反射と判断したのか、メリチェルはガブリエラを押し倒すようにして射線からガブリエラを庇おうとする。


 その光景をスローモーションで見ていたガブリエラは、一瞬の内に全てを把握してしまった。

 狙撃手はおそらく自分の足を撃ち抜いた人物で、失敗に終わった前回の狙撃から学習し、今度こそガブリエラを殺しに来たのだろう。

 誰もが非常事態に気付き、懐から銃を出しているが間に合う事はないだろう。


 そしてその凶弾は、自分を庇うメリチェルを撃ち抜いてしまうだろう。


 それだけは避けなければいけない。そう思うも足の古傷のせいですっかり弱ってしまったガブリエラの体では、メリチェルを突き飛ばす事も出来ない。

 最悪の事態に体から一気に熱が引いていくのを感じながら、やめてくれ、とガブリエラは建物の屋上で光るレンズに震える手を伸ばす。


 この後、ガブリエラは自分が所有するレストランに行って、メリチェルが生まれた年のワインを振舞う予定だった。メリチェルの好物であるレアチーズケーキも用意させてもいる。

 食事が終わればこれからのために郊外に購入した家に向かう予定だった。この5年の月日で身長を追い抜かれたメリチェルに窮屈な思いをさせずに済むような家を。


 もうメリチェルに悲しい思いをさせるのも、辛い思いをさせるのも嫌なのだ。


 そしてガブリエラの体が石畳叩きつけられたその瞬間、轟音が辺りを包み込み、舞い降りた大質量によって石畳が粉々に砕け散る。

 スナイパーライフルのチャチな弾丸では撃ち抜けない、蒼白の重装甲によって。


 シアングリーンの光と共に現れたソレは、無造作にバトルライフルの銃口を上げて引き金を引く。

 大口径の銃口から吐き出された砲弾のような弾丸は、屋上の1部を削り取りながら相対的に無力となった狙撃手の体へと喰らい付いて飛散させる。


 失われたはずのD.R.E.S.S.という最強の兵器、シアングリーンのマシンアイ。

 その圧倒的な暴力に誰もが動けずに居る中で、ガブリエラだけは伸ばしていた手を情報とはどこか違うフォルムの青へと向けていた。


「頼みがある。あの子に、伝えて欲しいんだ」


 石畳に叩きつけた背中の痛みに抗いながら、ガブリエラは途切れ途切れの言葉を吐き出す。

 嫉妬狂い(グリーン)(アイド)化け物(モンスター)と呼ばれるようになった少年、自分が突き放してしまった最強の傭兵として世界を塗り替えた存在。

 その代理人がそこに居るとなれば、ガブリエラはそのチャンスを見逃す訳にはいかなかった。


 これが最後のチャンスなのは、考えるまでもないのだから。


「ありがとう、すまなかった、と」


 返事のように竦められた肩はどこかシニカルで、ガブリエラにはなぜかそれが嬉しく思えていた。

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