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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Reveal To [Oblivion] Egomania
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Ready To Revolution From My [Bed] 2

「それで、どうしたんだよ?」

「何がでありますか?」

「俺が率先して何かを聞いてやるのはきっとこれが最初で最後だ、くだらねえこだわりは捨てろ」


 何もかもを見越しているようなレイの言葉に、小玲は思わず黙り込んでしまう。


 だが1つの衝動が小玲の背を強く押した。

 似て非なる人生を送ってきたレイなら理解出来るのかもしれない。


 確証もないその衝動が、小玲にゆっくりと口を開かせた。


「……なんだか恐くなってしまったであります。何で社長がシャオを選んでくれたのか、全部終わった後にシャオがどうなってしまうのか。考え出したらどうしようもなく恐くなってしまって、その……」


 胸中に生まれた不安を小玲は吐露し始め、やがて言葉を失ってしまう。


 殲滅ジェンミアとは比べ物にならないアナイアレイションというD.R.E.S.S.。

 自分が害意を持ってフィオナを殺そうとした事実。

 知ってしまった、その腕の中の暖かさ。


 自身のせいで大事な姉を死なせてしまった事実から目を背け、小玲は望んでしまったのだ。


 その手に手を引かれ続けていたいと、その腕の中で永遠に囚われていたいと願ってしまったのだ。

 しかしレイはそれを理解してか、あえて突き放すような言葉を小玲に告げる。


「なら期待に応えろ、傭兵おれたちが出来るのはそれだけだ」

「だから師叔は皆さんを守っているでありますか?」

「だっせえ話だけど、それもある」


 耳に痛い小玲の問い掛けにレイは肩を竦める。

 暴力はレイが唯一行使できる力であり、リベリオンによって補強されたその力が自身に価値を付けてくれると知っているのだから。


「危なくなったら、シャオも助けてくれますか?」

「甘えんじゃねえよ、バカ弟子が」


 どこか期待するように尋ねた小玲は、相変わらず冷たいレイの言葉にうなだれてしまう。

 4人の女達のようにレイと並び立つ事が出来ると思った訳ではない。

 血と硝煙で穢れた手同士で引き寄せ合う事が出来るなどと考えた事もない。


 師と弟子という関係はとても心地が良いが、それでもレイに近付きたいと思ったのは小玲の本心だった。


 そしてレイはそんな小玲の様子に、あきれ果てたようにため息を付く。


 アテネでの任務の後にロシアで痛感させられた、フィオナから受けた影響。

 自身レイを構成する1つとなったそれが訴えているのだ。


 小玲は過去のレイであり、やがてレイを越えていく逸材なのだと。


 レイはかつて復讐に生き、小玲は復讐のために全てを捧げた。

 そのレイに小玲の復讐を止める事は出来ない。

 小玲は復讐を果たさなければ先へ進めない。

 かつてと自身とイヴァンジェリンと同じその在り方を、復讐を果たした事で前に進めたレイが否定する事など出来はしないのだ。


 やがてレイはある程度整えた小玲の頭を、やんわりと胸に押し付けるように抱き寄せる。

 その体はとても小さく、復讐を背負っていくにはあまりにも華奢だった。


「……アンタの復讐はアンタにしか果たせねえ。手伝ってはやる、でも最後はアンタが決めろ。俺の弟子ならそれくらい出来るはずだ」


 あくまでそれが当然であるように、出来ないはずはないのだと言わんばかりにレイは告げる。


 救ってやる事は出来ない。4人の女達がしてくれたように、復讐を果たした空虚な存在に意味を注ぎ込んでやる事など出来はしない。

 だからこそレイが哀れな復讐者に今してやれるのはそれだけだった。


「俺はもう少し寝る、昼頃に起こせ」


 そう言ってレイは目を閉じて、やがて等間隔の寝息を立てる。

 その眠りを妨げまいと小玲はゆっくりとベッドから出ようとするも、レイの左手は小玲の頭を抱きかかえたまま放す様子はなかった。


「……ありがとうであります、師叔」


 出て行けという前言を覆してまで傍に居てくれるレイの胸元に顔を押し付けながら、声にならない声で囁いた。


 なお、昼をゆうに過ぎた頃に様子を見に来たエリザベータによって、小玲は地獄を見る事となった。


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