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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Reveal To [Oblivion] Egomania
354/460

Break The [Party] Clasher 5

 続けざまに吐き出された榴弾を回避しながら、レイは意趣返しのようにガトリングキャノンを持つリベリオンの右手の中指を立てた。


『お得意の交渉はどうした早漏野郎?』

「お前を殺すのに手段なんか選ばない! この醜いデカブツでも役に立つなら何だっていいのさ!」

『選べねえの間違いだろ、それだって時代遅れのホットロッドじゃねえか』

「その時代遅れのホットロッドが恐くて逃げ回ってるのはどこの誰だい!? お前はここで死ぬんだよ、嫉妬狂い(グリーン)(アイド)化け物(モンスター)!」


 目を見開き、唾を撒き散らしながら怒鳴るロンバードをレイは一笑に付す。


『恐くて逃げ回る? 冗談だろ、俺を誰だと思ってやがる――イヴァンジェリン・リュミエールの剣で、そのデカブツの開発主任を殺した嫉妬狂い(グリーン)(アイド)化け物(モンスター)だぜ?』

粛清(ジャッジメント)


 最終モードを告げるマシンボイスを聞き、嘲り切ったような言葉を紡ぐレイの様子に、脂ぎった髪を振り乱していたロンバードは思わず言葉を失ってしまう。


 非戦闘員を簡単に殺すというのは知っていた。

 D.R.E.S.S.戦以外にも工作に長けている事も知っていた。

 リスクを負う事と面倒を掛けられる事を嫌うが、その上でイヴァンジェリン・リュミエールを救う為に命を懸けて戦った事も知っている。


 当初侵入者の正体には気付けなかったが、その目的がEXCESSシステム試験型D.R.E.S.S.にある事は明らかだった。


 そのためロンバードはセキュリティシステムによって守られているシステムプログラムではなく、そのシステムを搭載した事によっては粒子変換が出来ないという憂き目にあっているEXCESSシステム試験型D.R.E.S.S.で迎え撃つ事にしたのだ。

 生体センサーの反応でこちらの策がバレないように警備兵達には他を警備させ、EXCESSシステム試験型D.R.E.S.S.のテスターと最低限の警備兵のみで待っていた。


 元々オブセッションを手に入れ損ねた陣営の施設である為に人員は不足気味だが、それでもただの工作員の侵入者であれば大した苦労もなく殺せると睨んでいたのだ。


 しかし頭に昇っていた血の気が引いた今だからこそ、ロンバードは理解させられてしまう。

 セキュリティはイヴァンジェリン・リュミエールによって突破され、施設内にはデータ以外に対する工作が施されている可能性が高い。

 そこから導かれる答えは1つ。自身らの切り札であるXCESSシステム試験型D.R.E.S.S.は、敵対者達にとって破壊対象の1つでしかないというものだった。


 そしてロンバードは見てしまった。


 サーチライトの光すら殺すように輝いている、青白い粒子の光を集束させる刃を。


「近付けさせるな! どうせハンガーは修復しなきゃならないんだ、どんな手を使ってでも――」

『バカが、何もかも遅えよ』


 ロンバードの不安を掻き消さんとばかりにパーティ・クラッシャーは榴弾をリベリオンへと放つが、リベリオンは当然のようにガトリングのキャノンの砲口を榴弾へと向けて引き金を引く。

 躊躇いもなく放たれた弾丸達は榴弾に喰らい付き、その寸胴な体躯を食いちぎられた榴弾は中身を撒き散らしながら炸裂する。

 途端に工場区に広がる爆炎と黒煙から逃れるようにロンバードは両腕で頭を覆い隠す。戦場に出た事などないロンバードには、その暴力はまりにも刺激が強すぎたのだ。


 しかしロンバードが逃れたいと望んでいたのは爆炎ではなく、黒煙を切り裂いて現れた白銀の死神だった。


『もう終わりにさせてもらう、アイツらが俺を待ってるんだ』


 獲物を見つけたとばかりに爛々と輝くシアンブルーのバイザーアイ。

 あれだけの砲撃を行ったにも関らず、くすみ1つもない白銀の装甲。

 振り抜かれた青白い粒子の刃。

 青白い粒子の光を纏うチェーンソーの刃は積み重ねられた装甲を食い破り、内燃機関を一気に爆発させていく。


 内部から溢れ出した炎はパーティ・クラッシャーの体を蹂躙し、炎が伝わった榴弾は爆発の度に壊れつつある巨体を躍らせる。

 そして爆散した装甲片がキャットウォークへと飛んでいくのを眺めながら、レイは背部ブースターをフルブーストさせて榴弾によって空けられた大穴から施設の外へと飛び出した。


 ●


『証明してやったぞ、アンタの無能さと俺の有用性をよ』


 駄目押しとばかりにC4目視認証アイタッチで起爆信号を発信して爆破させたレイは、誰に言うでもなく吐き捨てる。

 小爆破を繰り返す工場区の爆音に混じる、C4が何かを刺激した爆音と建物の崩落音。


 いつも通り戦火で塗り潰した、いつも通りの地獄絵図。

 いつも通りのやり方で引き寄せた、いつも通りに迎えた勝利。


 だが、結末だけはいつも通りとは行かなかった。


『レイ、急速接近しているD.R.E.S.S.反応がある』

『オブセッションか?』


 リベリオンを解除しようとしていたレイは、イヴァンジェリンの警告に訝しげに眉を顰める。

 援軍にしてはあまりにも遅く、今となっては守る対象もない。

 その事からレイはオブセッションが自分を殺しに来たと仮定したのだ。


『いいや、速度的にありえない。おそらく機動戦特化のルード、たとえるならネイムレスのような、だ』

『なおさら分からねえな』


 イヴァンジェリンに告げられた否定に、理解出来ないとばかりにレイは嘆息する。

 レイは自分がアラスカまで来させられたのは、パーティ・クラッシャーの破壊か自分の殺害のためだと考えていた。

 オブセッションを撃破し、ディファメイションを撃破したからこそ、パーティ・クラッシャーという"人々の手に負える切り札"で勝負に出たのだと。


 しかし現在も高速で接近しているD.R.E.S.S.はルードなどの量産機である可能性が高い。


 自分を殺しえるジョナサンは既にレイが殺し、ファイアウォーカーもおそらくディファメイションによって殺害されているはずとなれば、残るは命知らずの愚か者かそれとも新しい"何か"でしかない。


 レイはイヴァンジェリンが送って来た座標の方角へとバイザーアイを向け、遠くに見えた動体を捕捉する為にズームをする。


 見えたのは1機のルード。

 真紅と黒の装甲、エメラルドグリーンの単眼のマシンアイ、コンテナに描かれたスペードのエンブレム。


 超高速で向かってきているそのD.R.E.S.S.は、紛れもなくワイルド・カードだった。

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