Day Of The [Dead] 3
「申し訳ないけれどいくつか聞かせてちょうだい。今回施設の爆破をするのはあなたなのかしら?」
その問い掛けに少年は何の躊躇いもないかのように頷き、サラは懸念していた可能性に思わず顔を顰めてしまう。
少年に大して当たりの強いコリンズ、嫌がらせのように部屋を荒らしていった傭兵達、その状況に関心すら抱いていなかったファイアウォーカー。
邪推だと分かっていても、サラには少年を取り囲む敵意が気になってしょうがないのだ。
しかし少年はサラに釘を刺すように告げる。
「念のために言っておきますが、こういった工作は初めてではありません。どうかご心配なさらず」
「でもあなた1人で侵入する事になるのよ?」
「先ほどこちらの指揮官が言ってましたが、私とファイアウォーカーは基本的に誰かと協働する事はありません。確かに私は爆破のスペシャリストという訳ではありませんが、プロフェッショナルとして任務を果たせるだけの教育を受け、実戦での経験を積んできたつもりです」
「教育?」
思わず問い返してしまったサラに、少年は頷いて口を開く。
「私は戦闘だけでなく護衛、工作、奪還、救出等の訓練も受けています。だからこそ社長は私をこの作戦の工作員に推薦したんですから」
「……ごめんなさいね。どうにも歳を取ると心配してばかりで」
反論の余地すらない少年の言葉に、サラは嘆息混じりの言葉を吐き出す。
そして護衛の1人が話が済んだと判断したのか軽く咳払いをする。
時刻は既に22時を過ぎており、どういった観点から見てもサラがこの部屋に居ていい理由はない。
サラはゆっくりと椅子から立ち上がり、空き瓶に足を取られないように扉へと向かって行く。
途中、荷物が押し込まれただけのクローゼットを片付けたい衝動に駆られるも、サラはなんとかその衝動を押さえ込む。これ以上少年に疎ましく思われたくはないのだから。
しかしサラは護衛が開いている扉の前で少年へと振り返り問い掛けた。
「これが本当に最後、あなたの名前は?」
コリンズとファイアウォーカーのファミリーネームこそ知っているが、今話していた少年の名前すらサラは知らない。
「私はジョニー・D・スミスと申します、メンディエタ市長」
「ならあなたの指揮官に聞いても大丈夫かしら。ジョニー・D・スミスという人間はいるか、とね」
返された名前にサラは、就業中使う余所行きの笑みを浮かべて問い返す。
H.E.A.T.の社長と同じミドルネームとファミリーネーム、そして遠まわしに名無しと告げられた名前が偽名だという事くらいサラにも分かる。
突きつけられた決定打に少年は顔を歪め、やがて嘆息交じりに名前を告げた。
「……レイ・ブルームス」
どこか聞き覚えのあるファミリーネームに何か引っ掛かる物を感じながら、求めていた答えにサラはただ微笑を浮かべていた。




