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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Burn To [Lovely] Ashes
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Dancin' Gonna [Bloody] 5

 薄暗いイタリアンレストランのフロアで、3人の男女が同じテーブルについていた。


 ビウエラ首領、ドミンゴ・デ・アウラホ

 デスティノ首領、パリス・ヨメッリ。

 そしてバイラオーラ首領、ガブリエラ・ビバンコ。


 かつて公安を差し置いてコルドバの街を仕切っていた3つの組織の首領達を、レイは壁際で遠目に眺めていた。


 ガブリエラが連れてきた護衛はレイとメリチェルを含めて8人。

 銃の有無こそは確認されたものの、D.R.E.S.S.の有無までは確認されなかった事実から、3組織はD.R.E.S.S.という存在に対して疎いのだとレイは断定する。


 そうでなければ腕利きとはいえ、たった3機の違法改修(イリーガル)ナーヴスごときに後れを取るはずがないのだから。


「さて、10年振りの会合だけどどうするかね。今年のワインについて語り合うのも悪くはないが、どうにもそんなつもりもないようですが」

「……確かに酒を飲む気にはなれないが、ここに呼ばれた理由が分からないのも事実だ」


 ブリュネットの髪をなでつけたにしたスーツ姿の男――ヨメッリはそう言いながらアウラホへと視線をやり、その意味深な視線を受けた黒髪をオールバックにした老人の男――アウラホは不愉快そうに眉を顰めるも、それも事実だと深いため息をついた。

 会合の場所こそヨネッリの所有するイタリアンレストランだが、3人の首領をここへ呼び出したのはガブリエラなのだ。


 当の本人であるガブリエラは、視線を向けてくる2人にもったいぶるように視線を返す。


 リアリストなヨメッリ、老獪なアウラホ。


 その2人を説得するのは容易ではなく、ガブリエラは美しい微笑みに僅かな緊張を覆い隠す。

 前回の会合が行われたのはヨメッリの言葉通り10年前で、会合に参加していたのはガブリエラの父なのだから。


「簡単な話だよ。今後のこの街について、ひいては私達の今後について話をしたくてね」

「バカバカしい。これだけいいようにされて未だに支配者気取りかい?」


 当然のように取り繕ったガブリエラの言葉に、ヨメッリは嘲笑うように吐き捨てる。

 3組織の中で唯一戦闘特化型ルードを所有していたビウエラは敗北し、残されたバイラオーラとデスティノはD.R.E.S.S.を運用した戦い方など知らない。


 レイ・ブルームスというD.R.E.S.S.戦のプロが雇われた事実を知らないヨメッリにとっては、それだけが事実なのだ。


「同感だな。そもそもD.R.E.S.S.を失ったビウエラに先などない」

「だからこそ私は聞かせて欲しいんだ。引くか消えるか、それとも不様であっても生き延びて見せるかを」


 両手を広げて鷹揚に言ってみせるガブリエラだが、ヨメッリはあきれ果てたように深いため息をつく。


「素直に言ったらどうなんだい? バイラオーラに従え、とね」

「どう取ってくれても構わない。それでも私には面子もプライドも、目的のために手段を選ばない覚悟もある」

「無駄な足掻きを、もはや化石でしかない我々になにが出来る。麻薬を捌き、政治に横槍を入れ、堅気には決して手を出さない。組織と共に受け継いだルールに今ではただの世迷いごとだというのに」

「認めたくはないがそういうことだ、うちの有様を見れば分かるだろう」


 気に入らないと言わんばかりのアウラホは、ヨメッリの言葉に自嘲するような言葉で同調する。

 だがガブリエラはその2人の様子に我が意を得たりと口角を歪める。

 2人が諦観に溺れてしまうほど痛めつけられてしまったように、ガブリエラもその身でいくつもの修羅場を駆け抜けてきたのだ。


「ならば証明して見せよう――バイラオーラがラスティバレルを殲滅し、私達にとって都合が良い平穏を取り戻して見せようじゃないか」


 ヨメッリはついに信じられないとばかりに額を手で押さえてしまう。

 ヨメッリ達とて、武装テロ組織ラスティバレルの殲滅を考えなかったわけではない。

 しかし依頼を出した民間軍事企業は街に入る前にあらゆる手段で殲滅され、デスティノは金銭面において大きなダメージを負わされてしまったのだ。

 麻薬という決して安くはない商品を扱っていたとしても、ラスティバレルによってその商売を邪魔されているのだから損失補填すら難しい。


 再度傭兵を雇用する間もなくビウエラのD.R.E.S.S.部隊は殲滅され、アウラホ達はラスティバレルを伸ばしにせざるを得なくなってしまった。


 だからこそヨメッリは知ったことか、とばかりに肩を竦めた。

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