Destroy The [Groovy] Tribes 11
最初見た瞬間に感じたのは、言葉では言い表せない共感だった。
東洋人とは微妙に違う顔立ち、行き倒れていた砂に塗れていた姿。
もしネバー・サレンダーと父の忘れ形見であるモレノが居なければ、同じようになっていたかもっと酷い事になっていたのではないか。
衰弱していたレイにそんな感情を抱いていたレジーナはレイを拾い、そして瞳の色に確信を得た。
少年は自分と同じ、人種の違う両親の元に生まれた存在なのだと。
レジーナ・エジオグはアフリカ系の父、イギリス系の母の間に生まれた。
2000年頃に起きた白人への差別に耐え切れなかったペグ・エジオグは、家族を含めた全てを捨ててイギリスに帰国してしまった。
連絡先1つすら知らされなかったレジーナに残されたのは、父と母との思い出が詰まったエジオグ邸と農園と外資運用を含めた財産のみ。
それでもオベドとレジーナは、ジンバブエという劣悪な環境で必死に生き抜いた。
屋敷も農園もペグとの時間と共に築き上げた大事な財産なのだから。
しかしジンバブエの統治者が旧政府から新政府に変わった頃、2人の世界は大きく変えられた。
ジンバブエ新政府は"白人が関与している"という理由だけで、黒人であるオベドから農園を取り上げてしまったのだ。"ファスト・トラック"で与えられた土地ではないのにも関らずだ。
思い出が詰まった大事な農園を奪われたオベドは怒り狂い、残された財産を元手に反政府組織ネバー・サレンダーを結成した。
オベド・エジオグがクレメント・モレノと出会ったのはそんな最中の話だった。
旧政府軍が所有していた最強のD.R.E.S.S.戦力にして、新政府軍に家族を殺され、自身すら今にも死んでしまいそうな1人の復讐者。
戦闘用D.R.E.S.S.ではないナーヴスしか集められなかったオベドは、戦力補強の目的で泥と血に塗れたモレノを救った。
結果として情と恩で縛られたモレノは、新政府軍にマークされるほどの戦力としてオベドに報い続けた。
しかしそんなモレノであっても、人々の前に立って国と戦い続けていたオベドを救う事は出来なかった。
そんな孤独の末にレジーナは小さな頃から誉めそやされた美貌を磨き上げ、父と同じように抵抗し続ける事を選ばされたのだ。
ワガママ1つ言う事なく、誰かを選ぶでもなく、選ばれても応じずにただ求められるままに美しく微笑み続けた。
何もかもを微笑みに隠し続けていたレジーナが心から欲しいと願ったのは、たった1人の行き倒れた少年。
組織の人間達と少年をあらゆる手段を行使して選択肢を奪い、少年がどうあっても自分の傍から離れられないように仕向けるほどにレジーナは焦がれたのだ。
初めは混血から来た共感、しかし今ではただ1人の女としてレジーナはレイを求めているのだ。
有形無形の脅威を全て振り払い、望む事すら出来なかった1人の女としての扱い、そして未だ唇に残るかさついた感触。
レジーナ・エジオグは、レイ・ブルームスという歳の離れた少年に恋焦がれているのだ。




