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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Smash To [Brutal] Desperado
182/460

Here My Story's [End] 1

 1つの時代が終わりを告げた。


 エイリアス・クルセイドとロシア国防軍が、世界で最大規模を誇る武装テロ組織ラスールを壊滅させたのだ。

 それによってロシア国防軍は信用を回復し、各地で起こる対規模なテロ行為は減少の一途を辿っていた。


 しかしそれは表面上だけの話だった。


 人道的支援を行うために訪れた航空機、それの護衛のために起きた戦闘、各所への報告と保障。


 それらの報告を自身が所属するD.R.E.S.S.規制委員会の会合で行ったエリザベータを待っていたのは、リベリオンやアナイアレイションのデータ、ジハードと名前を代えられたオブセッションの残骸の要求だった。

 それぞれの国からそれらを要求された委員達は、エリザベータを通じてイヴァンジェリンにそれを要求しようとしたのだ。


 そんな要求に応えることなど出来るはずはなく、エリザベータがそれを拒否をした。

 リベリオンとアナイアレイションはイヴァンジェリン・リュミエール個人の所有物であり、既に強奪された経緯を持つオブセッションの残骸を誰かに譲渡する事など出来るはずがないのだから。

 しかし委員会の人間達は金切り声を上げてエリザベータへと詰め寄った。


 リベリオンとアナイアレイションという強力なD.R.E.S.S.を個人が所有しているのはおかしい。

 国防軍が粒子兵器を手に入れれば、世界から核の脅威がなくなるだろう。

 そして世界の宝であるイヴァンジェリン・リュミエールを、国家単位で保護しよう。


 その欲望が明け透けとなった言葉に、エリザベータは酷い目眩を感じた。


 1つの大きな脅威を排除したというのに人々は更なる力を求め、その挙句にイヴァンジェリンを籠の鳥に戻してプロジェクト・ワールドオーダーという過去の過ちを繰り返そうとしている。


 世界に自浄作用などありはしなかった。


 自身の希望と想い人に語っていた夢が確かに散ったのを理解したエリザベータは、国連のエンブレムをその場に置いて国連とD.R.E.S.S.規制委員会からの脱退を表明した。


 それでもイヴァンジェリンの恩恵を諦め切れなかった各国のエージェント達は、そのニュースが出回るより早くエリザベータの身柄を確保しようとした。


 スタンガンからD.R.E.S.S.までを装備したエージェント達は、モスクワの街道を走るアレクサンドロフ家のロールスロイスへと急襲を掛けた。


 エリザベータが過去に拉致された事がある事実が、エージェント達に途方もない自信を持たせていた。


 しかしその自信はシアンブルーのマシンアイを持つ、白銀の鎧にいとも簡単に切り捨てられてしまう。


 犯罪を強行させた部隊の消滅を訴える事が出来ない各国の指導者達は、それでも折れる事なく、フリーデン商会に訪れたフィオナ・フリーデンと、府中刑務所に訪れたアキラ鴻上コウガミへと同時強襲を掛けた。


 ギリシャと日本の距離はリベリオンであっても無にする事など出来るはずもなく、各国の指導者とエージェント達は今度こそ勝利を確信した。

 しかしギリシャに派遣された部隊は大量に展開された白いD.R.E.S.S.達によって駆逐され、日本に派遣された部隊はシアングリーンのマシンアイを持つD.R.E.S.S.によって駆逐された。


 嫉妬狂い(グリーン)(アイド)化け物(モンスター)の再来。


 自身らを支える後ろ暗いバックボーンを持つ者達はそれに怯え、自国が所有するもの以外のD.R.E.S.S.戦力を一気に掻き集めた。


 一部の資産家達はD.R.E.S.S.規制委員会の人間に金を握らせる事で、D.R.E.S.S.コード違反の兵器を製造していた。

 一部の資産家達は孤児を買い集めて、ジュニアソルジャーを多く作り上げていた。

 一部の資産家達は中東で起きた戦争によって露見した、D.R.E.S.S.が使用出来る規模の核弾頭に目を付けて同じ物を製造していた。


 それらの事実は資産家達と、そのバックアップを受ける指導者達を怯えさせるには十分だったのだ。


 そして世界に審判の日が訪れた。


 D.R.E.S.S.規制委員会に請われてイヴァンジェリンが雛形を作り上げたセキュリティシステムから、辺りに存在する全てのD.R.E.S.S.達の粒子変換機能を破壊するウィルスが漏れ出したのだ。


 Re:Abnegationというメッセージと共にウィルスは一瞬にして世界中に広がり、ある者は合金の鎧の中に閉じ込められ、ある者はただのアクセサリーと化したそのバングルを力なく見つめていた。

 世界中の指導者達はその事をイヴァンジェリンへ糾弾しようとするも、イヴァンジェリンは今回問題を起こしたセキュリティシステムの製造に直接携わっていなかった。

 そのためその糾弾でイヴァンジェリンを罪に問う事は出来ない、と指導者達は一様にうなだれるほかなかった。


 世界はエリザベータが望むD.R.E.S.S.による暴力を失った世界へと、歪みを湛えながら変化していく。


 これ以上の絶望はない。D.R.E.S.S.の消失に悲嘆に暮れていた者達の耳に、更なる絶望に叩きつけるニュースが飛び込んできた。


 カルフォルニア郊外にあるリュミエール邸が、謎の出火によって全焼した。


 そのニュースを耳にした者達はD.R.E.S.S.関係の何かが残されているのではないかと、屋敷跡地に部隊を派遣を決定する。

 荒野の中でただ1つ建てられていたリュミエール邸、その焼け跡からは屋敷だった残骸以外の物は何も発見する事が出来なかった。


 合金の欠片、あらゆる媒体の記録、人間の死体。


 そのどれもが発見できなかった事実に、人類は自身らがイヴァンジェリンに見捨てられた事を理解させられてしまった。

 自身らは方舟に乗せてもらう事は出来なかったのだと、救済を与えるに値しなかったのだと。


 そして世界からD.R.E.S.S.という最新にして最強の兵器が姿を消し、そして5人の女と1人の男が姿を消した。


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