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D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Smash To [Brutal] Desperado
175/460

P[R]ay To Wild Card 1

 時速約500kmという速度から生まれたG、死と炎を撒き散らすミサイルの熱風、悪足掻きとばかりに放たれる弾丸。

 時にそれを歯を食いしばる事で耐え、時にそれを回避し、時にそれを分厚い装甲に受けながら小玲はただ進んでいく。


 1機でも多く殺す。

 自身の復讐を果たす。

 そして必ず生きて帰る。


 その使命から衝動が生まれ、その衝動が小玲を動かし続けているのだ。

 シアングリーンのデュアルアイは赤い装甲に描かれた雷の文字を捉え、ブラウンの瞳は目視認証(アイタッチ)でミサイルを解き放っていく。

 しかし優秀なスナイパーでも居るのか、高速巡航ミサイルのほとんどが撃ち落されてしまい、雷斬ライキリへ辿り着く事はなかった。


『これなら、どうでありますッ!?』


 そう叫ぶなり小玲は目視認証(アイタッチ)でヴェンジェンシア・アグレッシャーをパージ、ロックした雷斬へと射出する。

 しかし雷斬はミサイルを飽和状にばら撒きながら、時速500kmで射出されたヴェンジェンシア・アグレッシャーを恐慌したような視線を見せないまま右腕のブレードユニットを展開して言い放つ。


『総員退避――ヴェルトロとセラフィナイトはツーマンセルを崩さずに他の部隊の支援を』


 硬質なバリトンボイスでそう告げた飛び出した雷斬は3次元的な機動でミサイルを回避していく。

 物言わぬ骸と成り果てた違法改修イリーガルナーヴスを踏みつけ、左手に装備したアサルトライフルで迎撃し、最後にはヴェンジェンシア・アグレッシャーの下を潜り抜けて、荒野の砂を撒き散らしながら着地したアナイアレイションへと右腕のブレードを振り下ろす。


 加速度だけで言えばネイムレス以上、近接攻撃の鋭さだけで言えば殲滅ジェンミア以上。


 間違いなく相手は小玲以上の実力を持ち合わせた強者だった。

 しかし小玲が幾度となく立ち向かい、その度に敗北した最強の傭兵ではない。


 アナイアレイションは右手に装備した合金製の特殊格闘武器、ブルータル・ボザーでそれを受け止め、雷斬を押し返すようにして弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた雷斬は宙返りするようにして勢いを殺しながら中東の荒野へと着地し、アナイアレイションは左手に装備しているバトルライフルの2つの銃口を雷斬へと向けて引き金を引こうとする。


 しかしその瞬間、地面へと叩きつけられたヴェンジェンシア・アグレッシャーが爆発する。

 アナイアレイションは咄嗟にブルータル・ボザーを盾にするように突き刺し、雷斬は盾を装備したラスールのD.R.E.S.S.部隊の後ろへと転がり込んだ。


 数十発のミサイルが爆破し、その爆炎によって引火した推進剤が起こす爆風が、辺りに存在するD.R.E.S.S.達の装甲に荒野の砂塵と鉄片を強く叩きつける。


 ――しくじったであります、が


 そう胸中で毒づいた小玲は、青と白に塗り分けられたアナイアレイションの頭部をラスールのD.R.E.S.S.部隊へと向ける。

 千載一遇のチャンスは逃してしまったが、速度以外においてアナイアレイションが雷斬を上回っている事を小玲はさきほどの1合で理解していた。


 1流の技術者が仕上げた雷斬。

 イヴァンジェリン手ずから作り上げたアナイアレイション。


 それは比べてしまうにはあまりにも酷な比較対照だった。

 爆風が弱まったその瞬間、アナイアレイションはブルータル・ボザーを地面から引き抜いてラスールのD.R.E.S.S.部隊へと飛び出した。

 歪み、欠けた盾を地面に突き刺して戦列を整えたラスールのD.R.E.S.S.達は、背部ブースターから吐き出された炎を背負う青白の巨体へ銃撃を始める。


 無数の弾丸がその装甲を穿つも、アナイアレイションはそれを意に介す様子もなくバトルライフルをラスールのD.R.E.S.S.達に向けて引き金を引く。

 3mオーバーの銃身と銃口というには大口径の2連装の銃口から、2発の弾丸が続けざまに吐き出される。


 その弾丸は硬い金属音を打ち鳴らし、盾ごとルードとクラックの装甲を食い破る。

 迫り来る見た事もないD.R.E.S.S.(アナイアレイション)、重層型に改修されたルードの装甲を破る弾丸、恐怖の象徴である緑色のマシンアイ。


 銃撃をやめてしまえば、無様な死に様を迎える事になる。


 そう理解しているラスールのテロリスト達は、恐怖に震えながら引き金を引き続ける。

 銃身は発砲の反動とは違う何かに震え、弾丸のほとんどが空を切るばかりでアナイアレイションを捉える事も出来ないない。

 そしてアナイアレイションは射程内に、殺すべき有象無象(たいしょう)を捉えた。


『くたばれであります』


 小玲の吐き捨てるように呟きを耳にした次の瞬間、横薙ぎに振られた合金の五角柱が複数のD.R.E.S.S.達を横薙ぎに襲い掛かる。

 7mという巨体の運動エネルギーを得たブルータル・ボザーは、立ちはだかる合金製の鎧を砕き、へし折って弾き飛ばす。


 合金の鎧越しに感じる、慣れ親しんだ人を壊す感触。


 D.R.E.S.S.が変わろうと、所属が変わろうと、名前が変わろうと、それだけは何も変わらず小玲に生を感じさせていた。

 その感触を小玲が噛み締めていると、叩き壊したD.R.E.S.S.の残骸の狭間から1振りの刃が飛び出してくる。


 小玲は首を傾ける事でそれを間一髪回避し、バックブーストを吹かせながらブルータル・ボザーを一気に振り払う。

 その刃を突き出していたD.R.E.S.S.――雷斬は一瞬で身を屈め、高速で振るわれた合金の五画柱の背を蹴り飛ばす事でその射程から退避する。

 アナイアレイションが築いた残骸の山の向こうに着地した雷斬を纏う、草薙は感心したようにため息をついた。

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