表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
D.R.E.S.S.  作者: J.Doe
Smash To [Brutal] Desperado
166/460

[Rebellion]/[Annihilation] In The Name Of [Alias] God 4

「何が気に入らねえんだ?」

「シャオを仲間はずれにしていることでありますー、皆さんいろいろ師叔からもらったって言ってたでありますー」


 そうどこか拗ねたように言う小玲と余計な事をしてくれた”女”。

 その2人に深いため息をつきながら、レイは所々が擦り切れたキャップのつばのフチを指先でなぞる。


 フィオナは殺されかけたショックから小玲と話すことすら出来なくなっていたため、良心の呵責からかあえて今まで通り振舞っていた晶が情報の出所だろう。


 そう判断したレイは、データを見始めてから何度目かのため息をつく。


 晶は殺される可能性があった人物と平気で馴れ合い、小玲は戦闘前だというのに良くも悪くもリラックスし始めていた。


 小玲に緊張されてフレンドリーファイアでもされるよりはずっといい。しかし人嫌いなきらいがあるレイにはとって、小玲の話につき合わされる事は面倒な事に変わりはなかった。


「ず、る、い、であります! シャオも何か欲しいであります!」


 そうアクセントを付けながら不満を口にする小玲は、語気を荒げながら乱れた髪を整えていく。

 サイドに1つに結っている髪はボサボサに乱れて見る影もないが、小玲は自身の師がそれを直してくれる事などありえないと知っているのだ。

 やがて元通りとはいかないがある程度髪が整った頃、レイは椅子の足元に置いてある薄汚れたカーキのボストンバッグに手を伸ばした。


 どうせミネラルウォーターでも取り出すのだろう、そう判断した小玲は不満だとばかりにそっぽを向く。


 暗いブラウンの瞳にはロシア国防軍のエンブレムが入った車両や、情報工作の巧妙さから情報を仕入れられなかったフリーデン商会の航空機が写る。


 レイ達の事情もあるとはいえ、自身の復讐がこんな大掛かりになると思っていなかった小玲は感慨深そうに深く吐息する。


 義父の会社から奪った金で情報を求めてさまよい、ただひたすらに姉を殺した人間を求めて続けていたのだから。


 母は殺され、その復讐の対象である張は死に、姉が死ぬ原因となった威曠イコウは殺した。

 ここが何も果たす事が出来なかった藍玲ランレイの本当の終着点なのだ。


 そんな事を考えていた小玲の視界が突然黒い何かに遮られる。


「な、何でありますか!?」


 そう言って小玲は慌てて自身の頭に被せられたそれを剥ぎ取る。

 それは比較的新しいように見える、真っ黒なキャップだった。


「それ、アイツらにすげえ評判悪くてよ」


 シニカルな笑みを浮かべたレイは悪びれる様子もなく言う。

 確かにそのキャップのフロントに縫い付けられた4文字のFワードの革パッチは、女性陣に良い印象を与える事はないだろう。


「……評判が悪いからくれるでありますか?」

「そうだ、文句でもあんのかよ?」


 どこか呆けたような、それでいておずおずと問い掛けてくる小玲の言葉に、レイは吐き捨てるように返す。

 女達には評判の悪い品ではあるものの、それは紛れもなく自身の気に入りのブランドの物なのだ。


 気に入らないと言ったら許さない。


 そんな考えをシニカルな笑みに隠したレイが小玲の法へと視線をやると、小玲はそのキャップを胸に抱きしめて俯いていた。


「……大事に、するであります」


 囁くように紡がれたその言葉にレイは眉をしかめるが、やがて優しげで皮肉げ《シニカル》な笑みを浮かべる。

 そしてレイは小玲が俯いたままでいるのをいい事に、小玲の整えたばかりの頭を左手でわしゃわしゃと乱暴に撫でる。


「生きろ"シャオ"。復讐を果たすのはアンタだけど、手助けくらいはしてやるからさ」


 そう言って微笑みを浮かべ、小玲の髪を撫でるレイの左手の薬指には4つの指輪が輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ