第七章 黒の円舞
今回の話で鉄蛇沈める予定だったのに終わらなかった…
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雰囲気に気圧され呆然としていた彼らだったが、アストが愛槍から飛び降りそれを引き抜いたところでようやく我に返る者が現れた。
「馬鹿野郎!!早く散らば……アグッ!?」
最後まで言わせず疾風の如き動きで瞬時に間合いを詰め、その心臓を貫いた。即死した男に構うことなく動きを止めずに槍を引き抜き、その勢いのまま振り抜いて隣に居たもう一人を殴り飛ばし、オマケとばかりに背後に居た者を槍の柄で顎を打ち抜き昏倒させる。
---僅か2秒足らずの出来事だった…
三人目の犠牲者が出たことにより、ようやく全員が正気に戻ることができた。怒号と悲鳴、さらには反撃の銃声と魔法による炸裂音が聞こえてくるがそんな事など気にも留めない。屍ごと床が吹き飛ばされる頃には、アストはその場を離れ弾幕を避けながら甲板を走り回っていた。その最中、すれ違った敵をなぎ倒しながら空いた左手に魔方陣を発生させ、『魔導式』の魔法を放つ。
「【ハウンド・フォックス】」
呪文と同時に、魔方陣から犬のような形を模した複数の青白い光が解き放たれた。その魔法は獲物を狙う獣の様に空賊たちへと襲い掛かる。
「うあぁっ!?」
「クソッ!!」
ある者は直撃して吹き飛ばされ、ある者は必死で回避する。しかし、ほとんどの者が大小様々な形の盾で防ぐことに成功した。しかもその内の数人が持っていた盾は、アストの魔法を防ぐどころか直撃する寸前に霧散させてみせた…。
(3、4…6人か)
おそらくあの盾には、帝国出身者が持ち逃げしてきた『アムゼニウム』がコーティングしてあるのだろう。仕組みは知らないが、あれは魔力の出力を激減させる効果がある。それは魔力の塊を飛ばす『魔導式』の魔法とて例外では無く、先程のように軽いものなら容易に霧散させられてしまうのだ。
---しかし、魔力を持たない帝国の人間が魔法に対抗するために生み出した『反魔力物質』は、良くも悪くも王国の魔法の在り方を大きく変えてしまった…。
その特殊な盾を持った者の数を確認したアストは、槍を再度すさまじい勢いで甲板に突き立てた。周辺に凄まじい衝撃が伝わるのと同時に砕かれた甲板の破片が宙に舞う。
「【Directev Shurete】」
彼が先程とは全く違う詠唱を唱えた途端、破片が空中で静止した。周囲の人間が驚愕して固まる中、突如破片が粉々に砕けてその姿を粒子状へと変える。
だが、アストの動きは止まらない。攻撃を回避し、付近に居た敵をなぎ払いながら次々と甲板に槍を突き立て、同じように破片を生み出しては粒子の数を増やしていく。
そして、生み出した粒子の量がアストの体積を上回ったその時、彼は槍を天へと掲げた。
「【Sutoratos 】」
たった一言の詠唱が唱えられた瞬間、アストの生み出した粒子が彼の近くで数箇所に纏まり始める。やがてそれは、十本の『剣』へと姿を変えた。まるでアストのことを守るように浮遊する剣は、その刃先をゆっくり空賊たちの方へと向けた。明らかな殺意を向けられた空賊たちは思わず身構える…。
「【Eggisutora】」
アストは掲げた槍を振り下ろし、一言命じる。すると十本の剣は弾丸に匹敵する速度で彼らに襲い掛かった。さっきと同じように咄嗟に盾を構えて防ごうとする者も居たが、それは失敗だった…。
---宙を舞う剣達は、アストの魔法を防いだ盾をあっさりと貫いた…
『アムゼニウム』の優位性を完全に信じきっていた者は自分の身に何が起きたのかを理解する暇も無く絶命し、そうでない者も無数の剣による殺人演舞にその命を散らしていった…。
「ッギャアアアアア!?」
「な、何でアムゼニウムの盾が貫かれて…!?」
「あれは『魔導式』じゃねぇ、『魔術式』だ!!」
---王国四大魔法技術の一つ『魔術』
かつて王国において、魔法とは"魔力に形と性質を与えて飛ばす"『魔導』が主流であった。だが反魔力物質の存在が誕生したことにより、戦場の常識は変わった。いかに鋭い形と驚異的な属性を持たせようが魔導式の大半は魔力で構成されているため、その殆どが無効化されてしまったのだ…。
それまで戦場の主力であった魔導式が封じられた王国は、『科学の親戚』と揶揄され軽視されていた"この世の理を知るための学問″である『錬金術』の知識と技術を総動員し、対抗するための術を模索した。最終的にアムゼニウムは魔力以外の力には大した強度を持たないということが判明し、魔法使い達にとっては不本意ながらも、アムゼニウムは魔力を用いない方が簡単に破壊できるという結論に至った。
---その結果、編み出されたのが″魔力を持ってこの世の法則に介入する″『魔術』であった。
魔力によってこの世の物質に干渉し、人為的に自然現象を巻き起こす脅威の技術。なまじ仕組みが理解できる分、科学の本場である帝国は魔術の非常識っぷりに対して大いに驚愕した…。
---無数の鉱物を砕いて混ぜて合金を…
---大気中の元素を選別して起爆性のガスを…
---地脈を刺激して地震と津波を…
---気圧と気温を操り望む天候を…
魔力が無ければ理屈が解っても実現不可能、科学であって科学では無い未知の技術…。こうして王国は、再び戦場における魔法の優位性を甦らせたのであった…。
「あの剣の場合、硬さを維持すること自体には魔力を使って無いんだよ!!アムゼニウムなんてただの気休めにもならな…グアッ!?」
魔力に対しては絶対的な防御力を誇る反魔力物質。しかしそれは魔力に対してのみの話であり、アムゼニウム自体の物理的な強度は並の鉄程度しかない。かつて帝国が純アムゼニウム製の戦車を造ってみたところ、その戦車は岩をぶつけられただけで大破したという程である…。
簡単に言ってしまえば、アムゼニウムは『魔力を(・)造り替えた物』には強いが『魔力で(・)造り替えた物』には滅法弱いのだ…。
よって、例え剣を飛ばすための魔力を消滅させることができても、重力と遠心力による勢いと合成金属による特別製の刃を防ぐことは出来ない。
「【アヴィス・エア】」
「ぐぎゃあああああ!!」
「畜生!!」
追い討ちを掛けるようにアスト自身も魔法を放ち、さらには船上を駆け回りつつ槍を振るいながら次々と犠牲者を増やしていった。
「お前らは下がれ!!援護しろカルロ!!」
「おう!!」
気配のした方に視線を向ける。そこにはゴツい小銃を持ち、空賊の割には本格的な装備をした男達がいた。先ほどから続く破壊の嵐の中、そいつらが軽傷で済んでいる所を考えるに手練れのようである。
「死ね、化け物が!!」
寸分違わぬ精密な射撃がアストを襲う。咄嗟にその場を立ち退くと、さっきまで頭があった場所を弾丸が通り過ぎた…。
「撃たせるな!!撃ち続けろ!!」
「【Pulogia】」
どうやら彼らは魔法使いとの戦いに慣れているらしく、絶え間ない銃撃で中々魔法を使う隙をくれない。魔法使いが魔法を使わなかったら、ただの人間と変わらないことをよく理解しているようだ…。
暴れまわっていた剣達をやむなく自身の傍に呼び寄せ、盾代わりにして防ぐ。
「今だ!!」
アストが防御に集中して身動きが取れないことを確認した彼らは、銃撃を続けながら身に付けていた楕円状の形に機械的な部品が付いた物体…手榴弾を手にした。
「喰らえ!!」
数人の男達が一斉にアスト目掛けて手榴弾を投げ放つ。
---しかし、この程度で狼狽えては魔衛士は務まらない。
「【Tenolumia】」
アストは即座に槍を上に向けて構え直し、そのまま一言呟いて天に向かって投げ放つ…。
---それとほぼ同時に、爆発が剣の防壁を吹き飛ばした。
船上に爆音と硝煙が蔓延し空賊達の視界を塞ぐ。だが、すぐに硝煙は晴れた。最初に目に映るものが魔衛士の死体であることを期待した彼らはその場所を凝視する…。
「…やったか?」
---そこには、爆発で抉れた甲板しか無かった…
「ッ!!上だ!!」
「何!?」
空賊の1人が上を指差して叫び、それにつられて視線を向けると無傷のアストが最初と同様、槍に立ち乗りして上空に浮いていた。同時に自分達の周りの異変に気付く…。
「…おい、これ何だ?」
「鉄粉か…?」
仲間の呟きに反応して周囲をよくみると、微妙に残った硝煙に混ざって細かい粒子が漂っていた。その粒子は不自然にも、風圧に逆らいながらその場に漂い続けている…。
その粒子は、アストが先程造り出した剣を分解して粉末状にした物であったが、彼らは最後まで知ることは出来なかった。何故なら…
「……君達、粉塵爆発って知ってる…?」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
空から聞こえてきた不吉な言葉。再度上空にたたずむアストに視線を向けると、彼は右手に火の玉を発生させクルクル回して遊んでいた。
本来なら火傷するかしないか程度の小さな炎。だが、アストの言葉を聴いてしまった空賊達にとってその炎は死神にしかみえなかった…。
---そして彼は無表情のまま、棒読みでこう言った。
「あ、落とした。」
---小さな火種により発生した巨大な爆炎は、甲板に居た者を1人残らず飲み込んだ…
鉄蛇空賊団のフェルマッド号の船内では、船長を含む幹部クラスが騒いでいた…。
「外はどうなってる!?」
「たった1人に全員ボコボコにされてやがる…。このままじゃ全滅しちまうぞ!!」
その報告を受け、軽鎧を纏った船長らしき赤髪の男が呻いた。
近頃こちらの活動を邪魔ばかりしてくる蒼風空賊団…。その蒼風の一味を名乗る船を見つけた時は、日頃の鬱憤を晴らすいい機会と思い意気込んだのが10分前。敵船から何かが飛んでくると報告を受けたのが8分前。その正体は何故か魔衛士で、単身で乗り込んできたと聞いたのが5分前。
そして、爆音と最悪な被害状況を今さっき聞かされた…。
「…仕方ない、俺が行く。」
蒼風一味の頭とやり合うまでは体力を温存しておきたかったが、そうも言ってられなくなった。自身の相棒である杖状の『ジュエル・スタッフ』を手にして席を立とうとするが、突如船室に仲間の一人が慌てたように入って来て叫んだ。
「船長!!敵が来る!!」
「敵だぁ?そんなのとっくに…」
あまりに今更過ぎる報告に、その場に居た全員がそいつの正気を疑いかけた。だが、彼は至って正常だった…。
「違う!!奴らの船が…!!」
---その時、先程とは比べ物にならない衝撃が彼らを襲った…
甲板の四分の一が爆発で吹き飛び、ただでさえボロボロになったフェルマッド号に追い討ちを掛けるかの如く、その横っ腹に細身で縦長の船が船首をぶち込んでいた。
やがてその船首を伝いながら、フェルマッド号にレイスター号を突っ込ませるなんて暴挙を行った張本人が乗り込んでくるところを視認し、アストは黒焦げになった空賊達が転がる甲板に降り立った。
「やっと来たか…」
「おう、待たせたな。」
意気揚々とやって来たヴィリアントは、物言わぬ死体と半殺し状態で呻く空賊達が溢れるその惨状に眉一つ動かさず、持ち前の陽気さで声を返してきた。流石に見慣れた光景なのだろう…。
「お~、ヴァン達が認めるだけあって流石だねぇ!!」
「相変わらずの化物っぷりだな、俺も大概だが…」
彼に同伴するように紅葉とカザキリも乗り込んできた。アストとしては、紅葉が戦場に進んでやって来ることを少しだけ意外に思ったが初対面の時に見せられた馬鹿力を思い出し、さらにその背に担がれた巨大な物を見て考えを改めた…。
「…重くないのそれ?」
「軽い軽い、アタシが持てないのは責任だけさ。」
「うおい…」
紅葉の背中に担がれていたのは、刃の部分の大きさだけでも彼女の背丈を凌駕する『斬馬刀』だった。大きさの割にはしっかりと手入れがされており、綺麗な刀身が光を反射して輝いている。
魔法と科学が主流のこの世界において、かなり珍しい存在であるソレに見とれているともう一人、深緑色の髪の少女が遅れて乗り込んできた。
「フランデレン卿!!」
「ん?アイカも来たの?」
「はい、これでも魔導隊ですから。」
アイカだった。本職ゆえやはり大人しくしていられなかったのだろう…。ついでにエリゼネアは、監視の目的で船に残っているそうだ。このような時を考慮し、王国は監視役を二人と抑止力である自分を送りつけたのかもしれない…。
「丁度いい、俺らは残りを片付けるから2人は金目のものを物色して来い。リゲルの奴が先に侵入して『仕込み』を準備してるから寄り道するなよ?」
「分かった。行くよ、アイカ。」
「はい!!」
アイカを連れて言われたとおり船内に向かおうとするアスト。リゲルの『仕込み』は本当に危ないのでさっさと行かないと死に掛けることになる…。
「あ、アスト…」
「ん?」
だが急ごうとするアストをヴィリアントが再び呼び止め、そのままツカツカと歩み寄ってきた。怪訝に思いながらもアストが後ろを振り向くと、ヴィリアントが目の前におり…
「伏せ」
「ん」
---いきなりアストの首目掛けてサーベルを抜き放った…
「ッ!?フランデレン卿!?」
目にも止まらぬ速さで抜き放たれたサーベルによる斬撃…。隣に立っていたアイカは思わず悲鳴を上げたが、アストは言われた通りに伏せてあっさりと回避した…。
「気付いてたからやんなくても良かったのに…」
「いいだろ別に?」
その光景を目の当たりにしたアイカが顔面を蒼白にしているのに対し、当の2人は何食わぬ顔で会話していた…。
我に返ったアイカはアストが無傷なことを確認し、激昂しながら即座にヴィリアントに詰め寄る。
「ヴィリアント船長、貴様一体フランデレン卿になに…を……ッ!?」
しかし途中でガシャン!!!という音が聞こえ、アイカは思わず目をそちらに向ける。すると、アストの背後に首から上が斬り飛ばされた″骸骨″が転がっていた…。
「高等魔導式魔法『髑髏傀儡軍』か、面倒な…」
かなり精密な魔法の気配を感じていたので辺りに気を配っていたら案の定である。気が付けば先程自分が片付けた空賊達と同じくらいの数の骸骨が、剣や槍等の武器を持ってこちらを取り囲んでいた。
さらに気配を感じて視線を上に向けると、この船の艦橋部分に10人程の男達が立ってこちらを見下ろしている。恐らく、この空賊団の船長と幹部達なのだろう…。
「…相手は手練れの魔導師だ。油断は禁物だよ?」
「どうせお前程じゃねぇだろ?いいから早く行ってこい。」
「りょーかい。アイカ、いつまでもボケッとしないで。」
「え…あ、はい!!」
今更ながら、こちらのノリを全く知らないアイカの目の前でこういうやり取りをするのは、下手すると彼女には刺激が強過ぎるので自重した方がいいかもしれない…。
そんなことを考えつつ、取り敢えず思考がフリーズしていたアイカを正気に戻し、アストはフェルマッド号の船内へと向かっていった…。
「…貴様らぁ、生きて帰れると思うなよ!?」
「お前から仕掛けてきたんだろバーカ。」
自分の船と部下たちを滅茶苦茶にされ、憤怒する鉄蛇空賊団の船長。そんな彼の怒りはヴィリアントにどこ吹く風と受け流され、尚且つコケにされてついに怒りを爆発させた。
「黙れ!!野郎共、やっちまえ!!」
「「「「おう!!」」」」
船長の号令に応えるように、骸骨兵と幹部達が三人に向かって一斉に襲い掛かってきた。だが、当のヴィリアント達はのんきに会話していた…。
「しかし、本当にアストって強いんだねぇ…。ヴァンより強いんじゃないのかい?」
「んなわけあるか…って言いたい所だが、流石にアイツ相手じゃあ強気になれねぇな……。カザキリ、お前はどう思う?」
「さぁな。取り敢えず、俺はアイツと戦ったら死にかける自信があるね…」
「「「「「無視すんじゃねぇ!!」」」」」
3人の態度は空賊達の怒りの炎に油を注ぐ結果になった…。
だが正直な話し、彼らにとってこの戦闘はアストとリゲルが船内に進入した時点で終了している。何故なら…
「舐めやがって、死ねえ!!」
幹部の一人であろう筋肉質な大男が紅葉に向かって巨大な棍棒を振り下ろしてきた。
「いよっ、と。」
しかし、頑丈な床をも粉砕する威力を持ったそれを、彼女は片手であっさり受け止めた。
棍棒と手のひらがぶつかった瞬間、周囲に衝撃が走ったものの彼女はビクともしなかった…。
そして、そのまま空いたもう片方の手に握り拳を作り…。
「オラァ!!」
「ぐっはあ!?」
思いっきり正拳突きで殴り飛ばした。殴られた男は錐揉み回転しながら飛んでいき、船の甲板をぶち抜きながらそのまま落ちていった…。彼女の可愛い見た目からは想像できない一撃を目の当たりにし、残った者達は紅葉に戦慄する。
「な、何つう馬鹿力だ…何者だテメェ!?」
「当ててみな!!せえぇりゃあ!!」
背中に担いだ斬馬刀を抜き放つことなく、彼女は素手で空賊達を薙ぎ払い始めた。単純で豪快な破壊の暴風に空賊と骸骨兵は次々とぶっ飛ばされていった。
「クソッタレ!!脳天吹き飛ばしてや…!!」
「やらせると思うか?」
「ッ!?ガァッ…!!」
近寄っては勝てぬと感じ、遠くから狙撃銃で紅葉に狙いを定めていた空賊は、背後から近寄ってきた何かに胸を貫かれ絶命した…。
「なっ!?貴様!!」
「おや、魔力持ちか…」
二刀のうちの左腰の一本を抜き放ち、銃を構えた空賊に後ろから突き刺したカザキリは、もう一人を一瞥しつつ死体から刀を抜き取った。彼のつまらなさそうな視線に、王国出身のその空賊は怒りを露わにする。
「クッ…、魔導師に剣で勝てると思うな!!」
魔力を巡らせた剣を引き抜き、カザキリに襲い掛かる空賊幹部。カザキリはゆっくりと懐から何かを取り出し、それを放り投げた…。
その瞬間、目を焼くような閃光が辺りを包んだ…。
「うわぁ!?」
閃光弾の不意打ちに目を潰された空賊幹部は、思わず手で目を押さえながら苦悶の表情を浮かべながらうめき声をあげる…。
「お前、知ってるか?」
「ッ!?」
カザキリの声が聞こえ、思わず身構えるも何も見えず何も出来ない。そして…
「魔法使いってのは…」
「ぐあっ!?」
---彼の足に刃が突き立てられた…
「こうやって斬ったり…」
「ぎゃああぁっ!?」
---剣を握っている右腕が斬り飛ばされる…
「刺したりすると…」
「うぐっ!?」
---心臓を真っ直ぐに貫かれた…
「俺たち魔力無しの人間と一緒で…」
「………」
---最後に首を飛ばされる頃には、既に事切れていた…
「……簡単に死ねるんだよ…」
魔力も特殊な能力も使わずに殺した魔法使いに、カザキリは少しだけ儚げな視線を送りながら次の得物を求めて駆け出そうとした…。
しかし、少し進んだ所で頭上から爆発音が聞こえ、つい足を止める。音の発生源に目を向けると、この船の艦橋の天井部分で2人の男が相対していた…。
---1人は、憎悪を向けながら骸骨兵を生み出す赤髪の男
---もう1人は、その骸骨兵たちを黒いサーベルで蹴散らしながら歩を進める金髪の男…
トレードマークとも言える蒼いコートをなびかせながら進撃するヴィリアントの様子を見て、カザキリは思わず呟いた…。
「…何だかんだ言ってヴァンの奴、アストに対抗意識燃やしてやがるな?」
ヴィリアントとは長い付き合いであるカザキリは、彼がいつも以上にやる気を出していることに気が付いた…。
「ま、紅葉にああ言われたってのもあるだろうが…。何にせよ、鉄蛇には気の毒な話だな……何せ…」
---荒れ狂う蒼風は、蛇どころか龍さえ殺すぜ?
てなわけで、ヴィリアントの活躍と鉄蛇撃沈は次回に持ち越しです…。