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第三章 蒼風一味

この世界の『魔法』は魔力を用いて行う『錬金術』『魔導』『魔術』『呪術』の四つの技術の総称を意味してます。


そのうち詳しい設定を書く予定です。


 宿舎の窓から見える巨大な艦船に、アストは心を奪われたかのように見つめ続けた。


 ある時は殺されかけ、ある時は叩き落し、またある時は友の家として現れた巨大な建造物の同胞に彼は視線を送り続けた。

 



「これが…」



「おうともよ。帝国から命懸けで頂戴してきた『レイスター級巡洋艦』だ。」




 ヴィリアントが誇らしげに語るそれは、帆船の胴体に近代的な軍艦の艦橋を設置したような灰色の船だった。


 全長約150m、胴長の船体の甲板には三連主砲が一門、副砲としてミサイルランチャーが前後に一門ずつ設置されている。


 推力は船体後部に設置された二機のブースターであり、今は空中に浮遊しているためか、出力は控え目である。




「帝国のだけあって中の設備も充実してらぁ。本当に良い船を貰ったもんだ…。」



「それは楽しみだね。」




 本当に楽しみである。帝国と違い、魔法である程度のことを済ませる王国には巨大な乗り物等を造るという概念が無いに等しいため、アストはこのような巨大な艦船を見ることはあっても乗船する機会は無いに等しいのだ。


 だが、そのすばらしさは日頃からヴィリアントの口から聞かされており、以前から興味を持っていたのである。


 そして、今まさにその王国には存在しないソレへと乗り込むのだと思うと、自然と心が震えるのが分かった…。




「ん、お迎えかな?」




 『リリアンヌ号』から何かが向かってくるのが見えた。それは人が10人くらいなら余裕で乗れそうな大きさの小型艇であった。普通の飛行機とヘリコプターを混ぜたような外見であり、プロペラの代わりに翼を付けた輸送ヘリと言っても差支えが無い。


 この世界…特に王国軍の場合、個人・・が使用できる一般的攻撃魔法にはこの程度のサイズを粉々にできるものが腐るほど存在する。状況によっては空中に停止することが多いヘリコプターやVTOL機は王国軍兵士にとって格好の的であった。武装ヘリ一機と魔術師一人の戦闘能力が同格以下なんて割りに合わないにも程があるため、これらの兵器は早々に役立たずの烙印が押されたのであった…。


 その半ば絶滅危惧種な乗り物は、宿舎の二階にあるアストの部屋の窓の近くで空中停止した。窓に横付けされたヘリモドキのハッチが開き、中から黒いロングコートと額にゴーグルを身に着けた亜麻色の髪の少年が出てきてアストの部屋に入り込んできた。 




「アストさん、おひさばぁ!?」



「…お日様?」



(馬鹿野郎…!!)




 にこやかに挨拶をしようとしたにも関わらず、いきなりヴィリアントに叩かれた少年…。その様子をアイカは不思議そうに、アストは冷や汗をたらしながら苦笑いを浮かべた…。


 アストは先月入ったと言う紅葉を除いたメンバーとは顔見知りであり、この少年も例外なくそうである。ただ、アイカ(王国兵)の前で魔衛士エリートが空賊(犯罪者)と知り合い…むしろ仲良しな事実を曝すのは流石に不味いものがある……。


 最悪死刑台送りになってもおかしくないのだ…。そのことを思い出したのか彼は気を取り直して名乗り始めた。




「そ、そうでした初対面でしたね…。ジェームズ・クラッドです。蒼風一味のエンジニアを担当してるっす。以後よろしくお願いしやす。」



「こちらこそ。」



「魔導隊所属、アイカ・クラリーネ二等武官です。しばらく御世話になります。」



 

 交流のあるアストはともかく、初対面の王国兵…しかも貴族の人間にまともな挨拶を返され、ジェームズは目を丸くした。


 彼の常識だと、空賊や亜人には名前を教えもしないのが貴族なのだが…。




「おや、貴族関係の方にしては広い心をお持ちのようで。御丁寧にどうも。偏見かもしれねーっすけど、てっきりあんな人ばかりかと…。」



『ちょっと、そこのあなた!!早く私を拾いなさい!!』



 

 ジェームズが窓の外に視線を向けると、アイカに二階から蹴り落とされた貴族のお嬢様が何か喚いているのが薄っすらと聴こえてきた…。




「実際、その通りだよ…。」



「お恥ずかしい限りです…。」



「…本当に珍しい御方っすね。嫌味抜きで『アイカさん』て呼ばして貰いますわ。これからしばらくの間、よろしくお願いします」



 

 エリゼネアの様子に対してアストは呆れたように、アイカは申し訳なさそうに呟いた。そのアイカの態度にジェームズは再び興味を抱き、彼は自分なりの礼儀を持って接することを決めたのであった。


 その状況を満足そうに見てたヴィリアントが口を開いた。




「さて、そろそろ行くか。さぁ乗った乗った!!」



「御搭乗の際はシートベルトをしっかりと着用し、無闇に席を立たないようお気をつけくださいっす。あ、運賃は片道銅貨8枚ですんで両替は御早めに~。」



「おい…。」



「冗談っすよ、冗談。」



 既に纏めてあった荷物を持ち、二人の軽口の応酬を聞きながら小型艇…『ミロク・ボンド』に乗り込む一行。因みに席はあれどシートベルトは無かった…。ジェームズ曰く『気合でどうにでもなるっす!!でも立たないでくださいね』とのこと…。




「ちょっ、私を無視しないでくださる!?」



 

 さっきも叫んでいたことを確認したにも関わらず、すっかり忘れていた…。




「あの人飛べないんですか?仕方ない、一回着地しますかね…。」



「あぁ、大丈夫だよジェームズ。【Teikuappu】」



 

 アストは開きっぱなしのハッチから身を乗り出し、手をエリゼネアの方に向けながら呪文を呟いた。使用するのは魔術による重力操作。すると…。




「きゃあ!?」




 まるで見えない何かに引っ張られるようにしてエリゼネアが勢いよくこっちに飛んできた。彼女はそのまま真っ直ぐ開けられたハッチへと向かい、ハッチの直前でスピードが弱まってゆっくりと中に入れられた。


 彼女は自分の身に何が起きたのか理解できずに目をグルグルと回していたが、それを余所にジェームズがアストに感心したかのように声を上げた。




「流石アストさん、噂に違わぬ魔術の腕前っすね!!」



「いやいや、それほどでも…。」




 満更でも無い。だが、魔術の腕前のみならばクローマ侯爵の方が上なので素直に喜べない。いつかは越えたいものである…。




「んじゃ、出発!!」



「お待ちになって!!まだ私の荷物が!!」




 最後に何か聴こえた気がするが誰も気にしなかった…。ミロク・ボンドはその機体をリリアンヌ号へと真っ直ぐに進めた。











 結局エリゼネアの荷物はアイカが既に持っていてくれたため、引き返したり時空操作魔術を使用するような面倒くさい状況にはならなかった。本当に良い子である…。


 ほんの数分で空の散歩は終了し、一行はリリアンヌ号のデッキへと直接降ろされたのだが何故か操縦者であるジェームズもそこで一緒に降りた。暇なので自分も皆について行きたかったそうで、ミロク・ボンドは自動操縦で格納庫に向かわせたそうだ。ていうか…。




「だったら操縦者いらないんじゃないの?」



「分かって無いっすね。こういうのは自分で動かすから楽しいんじゃないっすか!!」



「何はともあれようこそ我が家へ!!早速中を案な…。」




---ズカンッ!!




 何か言おうとしたヴィリアントだったが、物騒な音が彼の足元から聞こえてきたため言葉が止まる。その場にいた全員が彼の足元へと視線を向けると、頑丈なデッキの床に深々と突き刺さってた。



 一枚のトランプが…。




「やけに遅かったじゃないか、ヴァン…。」




 底冷えするような低い声が上から響いた。辺りをよく見回すと、声の主がリリアンヌ号の主砲砲身部分に腰を降ろしてこちらを見下ろしていた…。正確にはヴィリアントを睨んでいる…。




「よ、ようリゲル…留守番ご苦労さん。」



 

 引き攣った表情でヴィリアントにそう呼ばれた灰色の髪をした眼鏡の男は座っていた場所から飛び降り、綺麗に着地した。この男の名前は『リゲル・ドラグノフ』。蒼風一味の副船長でこの一味で二番目に古株であり、黒いスーツにシルクハット、赤い瞳がトレードマークである。 見た目だけは三十代前後の彼は、ゆっくりとヴィリアントへと近づいて行く…。



 掲げた両手に魔力が籠められたトランプを大量に漂わせながら…。




「貴様、言ったよな?顔合わせたその日のうちに彼を連れて来るって…。」



「…あるぇ?言ったっけ?」



「ほう?」



 その途端ヴィリアントに向かって大量のトランプが発射された。まるで追尾機能でも積んでいるかのように彼だけを正確に狙って飛んで行く。頑丈な床にあっさり突き刺さる危険物を彼は必死に避ける。




「どああぁぁぁ!?すまんすまん忘れてた!!」



「てんめぇこの野郎!!あのクソ寒い中、貴様が指定した場所で私が何時間待っていたと思っているんだ!?」



「いや、会ったその日のうちにアストと揉めてそれどころじゃなか…!!」



「どうせお前が原因だろうがっ!!」




 実際そうである。




「そこに直れ!!叩きのめしてくれる!!」



「嫌なこった!!」




 殺人絵札の弾幕を放ちながら追ってくるリゲルから逃げるように走り出すヴィリアント。それを追いかけるようにリゲルもまた走り出す…。


 思わずアイカが『…デジャヴです。』と呟いた気がするが敢えて無視する。




「あ~あ、行っちまった…。仕方ない、俺が案内しますかね。」



「毎度思うんだけど彼って本当に船長なの?」



「ここでは肩書きなんてただの担当名義っすからねぇ。本人も別に気にしてないですし…。とにかく行きましょうか。」




 こうしてジェームズを筆頭に残った面々はリリアンヌ号の内部へと歩を進めた。













「取りあえず、こちらが御三方の部屋になるっす。」



「これはまた凄いな…。」


 


 ジェームズに案内され、船内中央部(艦橋の真下あたり)に存在する居住区に招かれた二人。案内された部屋は彼らの手により改造され、かなり立派なものだった。


 扉を開ければ広々としたリビング、テーブルにソファー。テレビやキッチンにシャワー室まであった…。持ってきた私物を置いたら『武官専用宿舎』にある自分の部屋と兼色が無いくらいだ。


 


「女性である御二人は敢えて同室にしましたが、それでよろしかったですか?」



「はい、ありがとうございます。エリゼネアには後で私から伝えておきます。」




 因みに、今ここにエリゼネアと紅葉は居ない。リリアンヌ号に乗り込んでからというもの、エリゼネアがやけに静かになったと思っていたら、彼女は船酔いで気持ち悪くなっていたのだ…。途中で限界が来た彼女はバッタリ倒れ、紅葉に担がれて医務室へとつれていかれたのだった。



(大丈夫かな彼女…。)



 別に船酔い自体を心配しているわけでは無い。心配なのは、確実にこの船に乗っているであろう船医の存在である。蒼風一味のほぼ全員と顔見知りであるアストは、この船の船医の正体・・がなんなのかを知っている。初めて会った時は腰が抜けたものだ…。




「どうかしたのですか、フランデレン卿?」



「…いや、なんでもない。」

 

 


 なんにせよ、アイカもギリギリまで知らないほうがいいだろうと思い黙っておくことにした。エリゼネアには悪いが度肝を抜かして貰うことにしよう…。


 するとその時、アストが寝泊りする予定の部屋の隣の扉が開いて中から誰か出てきた。猫耳と尻尾を付けた黒髪のショートで赤目の少女だった。




「あら、ジェームズじゃない。ここで何して……ちっ、あんたらか…。」



「…やあ、こんにちは。」 



 忌々しそうに舌打ちしてこちらを睨む彼女は『ミレイナ・トンプソン』、この船では給仕係を担当している。彼女は『ネルア族』という猫のような亜人であり、猫耳と尻尾はその証でもある…。


 色々な事情があって昔からアストと王国の人間を嫌悪している。まさしくエリゼネアと対を成す存在とも言える…。




「そう言えば今日から一緒にこの船に乗るんだっけ…?」



「…あぁ。」



「ふん、気分が悪くなったわ…。」




 尤も、アスト自身を憎んでる理由と王国を憎んでる理由は少し違うのだが…。この険悪なムードに耐え切れなかったのかジェームズがミレイナを宥めようとする。




「よせよミレイナ。もう決まったことだろ…。」



「…分かったわよ。ま、精々仲良くしましょうか…『猫に呪われた男の子』さん?」




 その言葉を最後にミレイナは自分の部屋へと戻っていった。重苦しい空気を残して…。




「すいませんね、アストさん…。」



「……いいよ別に。彼女は悪くないし…。」



 

 ミレイナのあの態度は仕方の無いことだと思っている。その理由は自分という存在そのものが原因であるため、どうしようも無い…。



 

「こっちはこっちで、どうにかするさ。」



「そうですか…。って、アイカさん?さっきから呆然としてますが大丈夫ですか?」




 ジェームズの言葉に気づき、隣で立ってるアイカの方へと視線を向けると、彼女は放心状態で棒立ちしていた…。視線はミレイナの部屋の扉に固定されている。




「アイカさ~ん?…起きてますか?」



「はっ!!すいません、ちょっと目眩が…。」



「君も船酔いか?」



  

 そうなると後が大変である。ここで倒れられてエリゼネアの二の舞は勘弁してほしい…。




「じゃあ、次は医務室に向かいましょうかね?どっちにせよ案内する予定でしたし。」



「それがいいね。行くよ、アイカ?」



「あ、はい…。」



『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』 




 今まさに足を動かそうとしたその時、誰かの悲鳴が船内に響いた…。その声は明らかに女性、朝から鬱陶しいくらい聞き続けてる彼女の声だった。


 ある程度こうなることを予想していたアストとジェームズは平然としていたが、アイカはそうもいかない。突然の同僚の叫びには、流石に彼女も動揺せざるをえなかった…。




「クラッドさん、エリゼネアは医務室に行った筈ですよね!?」



「『ジェームズ』でいいっすよ。叫んだってことは間違いなく医務室に行った証拠っす。」



 行けば分かると言いながら歩を進め始めたジェームズ。アイカは少し迷ったものの、アストがジェームズについて行ってしまったので、結局同じ方向に歩き始めた。が、途中で立ち止まり再びミレイナの部屋に視線を向けた…。




「……。」



「アイカ…?」



「…何でもありません。」




 まるで彼女は何かを振り切るかのように踵を返し、足早にその場から立ち去ったのであった。













「いやああああああああああああ!!来ないでええええええええええええええええええええ!!」




 長い廊下のような船内を歩き続け、医務室前までやってきた3人は思わず立ち止まってしまった。エリゼネアの恐怖感がヒシヒシと感じてしまったのだ…。




「個人差があるのは確かですけど、彼女は一層駄目みたいっすね…。」



「おい、ジェームズ。これはなんの騒ぎだ?」




 医務室に入ることを躊躇っていたら背後から誰かに声を掛けられた。振り向くとそこには、焦げ茶色の髪をした黒い瞳の青年が立っていた。やや長いその髪を一本に束ねており、左腰に刀を一本、後ろ腰に横向きにしてもう一本刀を携えていた。右腰には拳銃の入ったホルスターがぶら下がっている…。


 だが注目すべきは彼の服装。所々装飾の入った緑色の軍服なのだが、それはどう見てもマルディウス王国の仇敵…。




「キルミアナ帝国の軍人!?」



、な…。俺は『カザキリ』、戦闘員兼雑用だ。久しぶりじゃねぇか、アスト。」



「やぁ、元気そうだね?」




 驚愕するアイカの言葉を何でもないかのように返すカザキリ…。彼はヴィリアントとはリゲルに次ぐ古い仲であり、その前の軍人時代ではアストと戦場で何度か逢い間見えて顔見知りである。


 実力はアストに引けを取らない程であり、間違いなくエースなのだが訳あってその名前は一部の人間にしか伝わっていないのだが…。


 尤も、まともに会話をしたのはヴィリアントと交流が出来てからで、アイカはそれらの事実を知る由もない…。そのため他のメンバーとは比較的に彼女たちの目を気にすることなく昔話ができそうだ。




「で、結局何なんだ?」



「僕たちの連れが船医の洗礼を受けたようでね…。」



「…なるほど。」




 それだけで通じたらしく、カザキリは溜息をついた。彼も例の洗礼とやらを受けたのであろう…。




「この一味で一番・・の古株だからな、正面切って文句も言えねぇよ…。な、ジェームズ?」



「そうっすね。いい年して大人げないったらありゃしませんもん…。」



「いいいいいいいいいやああああああああああああああああああああああああああ!!!!」




 二人がシミジミと呟いていたら医務室の扉が勢いよく開かれ、中から誰か飛び出てきた。まぁ、当然といえば当然エリゼネアなのだが…。


 医務室から飛び出したエリゼネアはすぐにアイカをみつけ、即座に彼女の背後へと隠れた。無論、そんなことをされてアイカがうろたえないわけが無い…。




「ちょ、どうしたのですか!?」



「そのままでお願いしますアイカさん!!私をあれから守ってくださいましっ!!」



「……やれやれ、困った御嬢さんねぇ…。」



「っ!!いったい私の同僚になに…を……?」



 

 エリゼネアに何らかの方法で恐怖を植えつけたであろう張本人を睨むべく、やけに高い声のした医務室の方へと目をやると、アイカは段々と声が尻すぼみしていった…。





「あらあら、そんなに怒らないで頂戴な?私はただ酔い止め薬を取り出そうとしただけよ?」





 医務室に前に立っていたのは、赤い髪をした幼女・・だった…。


 見た目10歳前後のその子は髪型をセミロングにし、昔の海賊が被ってそうな帽子とヴィリアントの船長服とそっくりなコート、さらに足がスッポリ隠れるぐらいの白いスカートを履いていた。


 予想外の容姿に一瞬思考が止まったアイカの様子を、彼女は紫色の瞳で面白そうに見つめながら口を開く…。




「…まぁ、その子にはちょっと刺激が強かったかしらね?…御免遊ばせ♪」



「っ!?」




 その瞬間彼女の背後で"無数の黒い何か"が蠢いた…。アストとアイカ、カザキリとジェームズは冷や汗をかき、エリゼネアが再びパニック寸前になる。




「ひぃ!?本当にあなたは何者なんですの!?」



「何者かですって?…ふふふ、多分あなたの予想通りだと思うわよ?」



 

 その黒い霧のような何か達は、やがて彼女と同じくらいの大きさに集まって10体前後の塊に変化した。そして、その10体全部が…






---怪しく輝く双眼を覗かせた…。






「ひいいいいぃぃぃぃぃっ!?」



「なななななななな何なんですかあなたは!?」



 

 ここまで冷静キャラを維持出来たアイカだったが流石にこの状況には限界だった…。それを見やり、目の前の赤髪の幼女は満足したような表情を見せ、言葉を紡ぐ…。 










「初めまして、私はこの船の航海士兼船医の『リリアンヌ・スカイレオ』……あ、もう違うんだったわ。私の名前は…。」







 その瞬間、彼女の姿が背後の何かと同じように黒い霧となって霧散した。その瞬間、アイカは後ろから伸びてきたやけに冷たい手を頬に添えられ、後ろを振り向かされた…。






「『リリアンヌ・レイスター』、古来から船から船へと取り憑く悪霊・・よ♪」





 重力を無視して彼女と同じ目線に浮いたリリアンヌに、ゼロ距離で挨拶をされたアイカはヘナヘナと力無くその場に座り込んだ…。




なんでこんなに長くなったし…。


・超蛇足・

ジェームズの愛機である『ミロク・ボンド』は→『MI6・ボンド』っていうしょうもない意味が籠められてたり…。

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