心というプログラム
ここからが
リオ視点となります
そして、
ストーリーもラストに繋がって来ます
『博士、朝デス。起きてクダサイ。』
ワタシはプログラム通りに、博士にコーヒーを持ってきた。
博士は、椅子に座ったまま眠っている。
「う……ん?────あっ!い、今何時!?」
博士は勢いよく椅子から立ち上がった。
『七時半デス。』
「二時間も、うたた寝したのかぁ……。」
博士はガックリと肩を落とし、椅子に座り直す。
「それじゃあ、続きをやるかな〜。」
博士は背伸びをして、コンピュータに向き直った。
博士の体調を分析するが、博士の体は衰弱している。
『ア、アノ。
うたた寝じゃなくて、ちゃんと休んでクダサイ。
人間には、睡眠が必要ダトいうデータがありマス。』
と言って、ワタシは博士にコーヒーを差し出した。
「そうはいかないよ。一刻も早く、研究を完成させたいんだ。」
博士はワタシが淹れたコーヒーを一口飲んだ。
博士は今まで、こんなに焦って研究をしていなかった。
────ナゼ急に?
『何を、研究しているのデスカ?』
博士はコーヒーを机の上に置くと、真剣な表情でワタシの頭を撫でた。
「君の、心。
…………君にはまだ足りない、一つだけ出来ないんだ。
心というプログラムが……。」
コ、コ、ロ?
「喜ぶこと、悲しむこと……それはとても素敵なことだ。
そんな素敵なことを感じれるのが、心。」
博士は、何かを脳裏に思い浮かべながら言った。
『理解、できマセン。』
「うん。
でも、いつか。
いつかきっと、奇跡が起こるよ。」
アナタはそう言って笑った────
────それは、もう遠い昔。
幾百年の時が過ぎ、ワタシはこの世界に、独り残された。
…………知りたい。
アノ人が生命の終わりまで、ワタシに創っていた
────ココロ────
『博士、コノ資料の入った箱は、そちらの棚へ持っていきマスネ。』
ワタシは博士の部屋の整理を手伝おうとすると、
「ダメだよ、リオ。僕に任せて。」
と言って博士は、ワタシが持っている箱を取り上げて運んでいく。
不意に博士の体がふらつき、バタッという音とともに資料の用紙が床一面に広がった。
『博士!』
ワタシは慌てて倒れた博士の元へしゃがみ込むと、博士は自力で上半身を起こした。
「ただの貧血だ、心配ないよ────ガハッ、ゴホッゴホッ……」
そして、博士は急に咳き込んだ。
『博士、どうシマシタ?』
博士は自分の口元を覆った手を見て、一瞬驚いたようだったが、笑顔を作って言った。
「いや…大丈夫。何でもないよ────ガハッ、ゴホッゴホッ……」
すると、博士はまた咳き込んだ。
けれど今度は、
ポタポタと赤くドロッとした液体が床に落ちた。
博士が手で覆った口元から血が溢れ出し、床へ垂れている。
『喀血をしてイマス。
人間の場合、健康状態が危惧されマス。』
ワタシは博士の状態を分析し、報告する。
博士はそれを聞いて、呆然としていた。
『喀血は気道出血であるタメ、窒息による死亡につながる恐れがありマス。
早急に処置を…………ッ!』
突然博士は、ワタシを抱きしめた。
ワタシの耳元で、博士はワタシの名前を何度も呼びながら泣いている。
横目で博士の顔を見ると、大粒の涙がいくつも頬を流れていた。
『博士、ワタシの分析に誤りが……?』
「────────ッ!!」
ワタシの最後の一言に、突然博士は声にならない声で叫んだ。
アナタはナゼそんな顔をするの?
アナタはナゼ泣くの?
ワタシには理解できない。