奇跡の誕生
ここには、都市があった。
進み過ぎた科学は自らを滅ぼす。
まさに、その通りだった。
そこは最新科学技術が作り出した新素材によって、その都市のほとんどは銀色に染まっていた。
ロボットは当たり前で、家事炊事をするロボット、掃除をするロボット、介護をするロボットなどたくさんのロボットがそこにいる。
しかし、人間または人間にもっとも近いロボットは創り出せなかった。
ある日、人々は凶悪なウイルスを生み出した。そして、問題が起きた。
ウイルスが漏れ出したのだ。
漏れ出したウイルスは世界中に広がり、地球の人類のほとんど、生物のほとんどが死滅した。
ある滅びた都市に、二人の科学者夫妻はウイルスの脅威から逃れ、生き残っている。
彼らは遺伝子操作によって天才の我が子を創りだした。二人の子は、夫妻にとても愛され、大切に育てられていた。
しかし、彼が十六歳になるときに、彼の両親である科学者夫妻は、病によって亡くなり、彼は孤独になった。
滅びて、苔やツタなどに覆われた都市の中で一人。
高台から見渡す限り緑が生い茂る、この世界を一人で生きていくことになった。
このとき彼は孤独の痛みを、孤独である苦しみを知った。
そして、彼は自分のそばにいてくれるロボットを創り始めた。
十数年後、孤独な科学者はロボットを創った。
システムは完璧、見た目は人間の少女と見分けがつかない。
あえて出来映えを言うなら、奇跡。
「よし、あとはロボットを起動するだけだ。」
ボクはロボットの起動スイッチを慎重に押した。
バチバチィという音とともに、火花と青白い閃光が出る。
しばらくすると、火花と青白い閃光は治まった。
「成功したのかな?」
ボクはロボットの傍に近よる。
『システムの正常な起動を確認シマシタ』
ロボットは目を閉じたまま言う。
ボクがホッと安堵の息を漏らしていると、ロボットはゆっくりと目を開いた。
「初めまして、ボクは君を創った、博士だよ。」
ボクは嬉しくてたまらなかった。
『ハ、カ、セ?』
このロボットは人のように記憶を持ち、自ら学習をし、考えるロボットだ。
しかし、まだ起動したばかりで、思考があまり働いていないようだった。
『ハカセ、ナゼ泣いているのデスカ?』
ロボットは首をかしげていた。ボクは彼女に言われるまで、涙を流していることに気が付かなかった。
「大丈夫だよ。それよりも君の名前はもう決まっているんだ。」
『ナ、マ、エ?』
「そう、名前。君の名前はリオ。」
ボクはロボットに名前を付ける。なにせ唯一の家族なんだから。
『リ、オ?……ワタシの、ナマエ?』
リオはまだ理解できていなかったが、ボクはリオを抱きしめ、彼女の耳元で囁いた。「そう、君の名前はリオだよ。」
『リオ。ワタシの、名前。』
ただ、ただ嬉しくて……ボクは彼女を抱きしめた。
だって
ボクは孤独ではなくなったのだから。