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いる

「で、あんたは結局どっちと付き合うのよ」

 一騒動後の夕食を三人で取る中彼方は、俺が二人の内どちらかと付き合うことが当たり前! と言うような顔で聞いてきた。柊はさも自分は気にしてないよ? 見たいな顔で夕飯に手を付けているが、時折・・・・・・まぁ大体三秒に一回のペースでちらみしてくる辺り相当気になっているのだろう。

「なんか二人のどっちかと付き合うのが当たり前みたいな言い方だな」

 俺は思った事をそのまま口に出してみた。すると彼方は笑いながら、

「だって当たり前じゃない、美少女すぎる女の子二人があなたに言い寄ってるのよ? 選ばない手はないわ。それに雪人は好きな人とか居ないじゃない」

「あ、いや」

 俺は言葉に詰まった。

「ぇ何? 居るのかしら」

 彼方は冗談半分に寧ろからかうような口調で言った。

「ぃる」

「「ぇッ?」」

 彼方と柊の声がシンクロした。顔の表情も固まり具合もすべてがシンクロした。固まったまま口を開けないで居た彼方の代わりに、比較的早く回復した柊が口を開く。

「どんな奴だ」

「ぇっと・・・・・・結構綺麗な奴なんだ。なんて言うか、顔もすごく綺麗で可愛いし、身長なんかも割りとあってモデル見たいで」

(なんだ、私じゃない)

(私のことか)

 俺が口を開くと二人はどうやら納得するかのようにうなずき始めた。だが、俺が話せば話すほど二人の顔に俄かに異変が現れ始めた。

「それで、その子は、不思議ちゃんなんだ。いきなり一人でしゃべり始めるし、理解できないことも言うし、でもそこがいいみたいな」

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

(む、そんなような奴が雪人のクラスに居たような)

「でさ、その子がさ、突然俺の膝とかに座ってきたり、好きとか言ってくるもんだから、俺はきょどるわけじゃん? でもあまりうれしいって思えないわけよ。だって普通興味のある異性にそんな事できるか? できねぇよな。だからなんて言うか、俺は少しあきらめてるんだよなぁ。やばぇ俺へタレだ」

 俺は好きな子がどんな子かというより、愚痴っていた気がした。愚痴り終わると脱力し自分の情けなさにため息を吐く。

 そんな俺を彼方は見かねて笑った。なんだろうか、彼方のこんな優しい表情初めて見た気がする。

「なんで笑うんだ?」

 俺は思わず口にした。笑われたことが不快なわけじゃない。今の彼方は俺をバカにしてるわけじゃない。長年の付き合いだ。俺にだってそれくらいはわかる。

 なんというか姉のような表情をしているのだ。恋に悩む弟の相談に乗る姉。そんな感じだ。

 彼方は口を開こうとしている。俺は何を言われるのか、なんとなく期待した。

「雪人・・・・・・それはね」

「それは?」

「雪人の勘違いよ」

「は?」

「あんたが新庄さんを好きだなんて勘違い! って言うよりはウソね」

「な! べ、別に新庄のこととかいってねぇし? 勘違いしてるのはそっちだし? てか! あれだけ俺に期待させといて言うことはそれかよ!」

「何を期待したかなんて知らないけど私は事実を言ったまでよ」

「ぐぬ、どうして俺が新庄のこと好きじゃないってわかるんだよ」

「バカ・・・・・・あんたと私が何年幼馴染続けてると思ってるのよ。あんた、私達に迫られて、逃げる為にあんなこと言ったんでしょ」

 確かにその通りだった。彼方には何もかもお見通しってわけか。

「それにね、あんたの事情に新庄さん巻き込むのは可哀想よ」

「あ、いやでもほらここに新庄いないし」

「新庄さんはね、本当に雪人のことが好きなのよ」

 俺は絶句した。確かに新庄は事あるごとに俺にアタックしてきた気はする。だが、それはあまりにも積極的過ぎた。俺は正直からかわれているのだとばっかり思っていた。だってそうだろ? 好きな相手に意味ありげな発言をしたり、まさか膝の上に座ってきたり、そんなことできるはずがない。でももしそれが本当なら、俺のさっきの発言は本当に最低だ・・・・・・

「ま、実際ここには新庄さん居ないからそんな気落ちしないで。確かに、雪人は最低だった。でもね、私はあんたの最低なところ沢山知ってる。それでも好きなんだから今さらどうこう思わないわよ。あんたはいつもバカやってるところが格好いいんだから」

「彼方・・・・・・」

 俺はなにやってるんだか、今になって彼方がいい奴だなんて思い始めてる。本当は前からいい奴だった。けど俺はいつも彼方の悪いところばかりに目を向けていた気がする。なのに彼方・・・・・・俺とは真逆で、もちろん俺の悪いところも沢山見てるけどそれ以上にごくわずかな俺のいいところを見ていてくれた。

 少し、いや、かなりうれしかった。

「ありがとうな彼方」

「そうね、もっと感謝しないさい」

「あぁ」






「ぐ、ぐぬぬぅ・・・・・・私の入り込む余地がない」

 一方そのころ柊は雪人と彼方の幼馴染クオリティーに苦しんでいた。


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