第3話 フール・オン・ザ・ヒル
沈黙。ただ気まずい時間が永遠に続いている。
エレベーターはそこまで狭くはなく、3人は少し離れて距離を保っている。このままではいけないと思った健司は覚悟を決めて質問を始めた。
健司「…そういや名前を決めるとき、ビリーはサージェントペパーズ?って言ってたけどあれは何なの?」
ビリー「…」
エリナ「第1探索部隊、「ロンリーハーツ」のリーダーが
ペパー軍曹という人なんです。ビリーは幼少期の頃からペパー軍曹に強い憧れを持っていて、探索部隊に入ったんです」
健司「具体的に何が凄いの?」
ビリー「まず、第一にフィクシングの現時点最深値まで行ったってとこだ。次に最初で最強の部隊ってとこ」
健司「確かうちらは…第64部隊だよね」
ビリー「ロンリーハーツは第1部隊。最初の探索部隊だ。その為、中央政府もとい人類連合軍とも親密な関係になっている」
エリナ「その中央政府は私たちとカーミット副司令官も属している巨大な組織です。人類連合軍というのは昔の名です」
健司「なるほど…」
またもや沈黙が流れる。この時間が若干長く感じた。やがて降りるべき地面が見えてきた。どんどん近づいていく。
フィクシングは、計り知れないほどの巨大な谷底の為、所々に人が十分に生活できるほどのスペースはある。東京ドーム何個分とかそのくらいのスペースがある。
エリナ「もうそろそろ着きます。降りたら警戒を」
エレベーターが止まり、3人は降りた。少し遠くではあるが、オブラディは目視できる。やや危ない道のりだが、3人はオブラディへと向かった。
フィクシング現時点最浅値である第一発見地域、通称オブラディは周りが土と岩という所以外、比較的外とあまり変わらない。光も届いていれば飲み水もちゃんと確保されている。だが、
ビリー「…人っこ1人もいねぇな」
人の気配がしない。村もあれば、生活している痕跡もある。
収穫中の畑、中途半端に開いた扉、整えられていないシーツ、全てが“途中”だ。
健司「喉乾いたから水飲む」
エリナ「あ、これイチゴ畑じゃん!一つ貰お」
ビリー「勝手に行動すんな!罠かもしれねぇぞ!」
健司がビリーの方に体を向ける。ビリーに近づき、耳元で話す。
健司「もし罠だったら“引っかかって”やればいい。そうすれば敵がこっちに来る。そこでこっちも攻撃すりゃいい」
ビリー「だとしても計画性が足りねぇじゃねぇかよ。そこんとこどうすんだよ?」
健司「…」
ビリー「やっぱ無計画じゃねぇか!大体…」
健司「見えました。奥の岩陰に1人、銃口を向けています」
ビリーはその場から離れ、健司はエリナに奥の2人のことを伝える。
エリナ「あんたらは剣でしたよね?じゃここは私に任せてください」
エリナが腰にあるリボルバーを手に取り、銃口を敵に向ける。その手はとても落ち着いている。少したりとも震えていない。
住民「死にやがれェッーー!」
住民(敵)が銃を撃つ。エレナは上体を倒し、弾を避けている。まるでバレットタイムのようであった。静かに上体を起こすと、再び銃口を向け、引き金を引く。
エレナ「行け、“タックスマン”」
エレナのリボルバー、“タックスマン”は、市販のリボルバーとは少し違う。特注の品で普通のリボルバーとは違い、装填する弾が44マグナムより何十倍も威力が違う物を使う為、圧倒的な破壊力である。だが、弾も特注品の為結構金がかかる。
弾は相手の両面に正確に命中した。ビリーと健司は銃を取り上げ、尋問へと変わった。
住民「フール・オン・ザ・ヒル(丘の上の愚か者)め…何が目的だ?」
住民は酷く悶え苦しんでいる。
健司「何故俺らを敵対視するんだ?別に俺らはそんな気ないんだぜ?」
住民「嘘つけ…大体“上”から来るやつはマシなやつがいない!」
ビリー「わかった、誓ってもう危害は加えない。まずはお互いに知ってることを話そう、俺らは敵ではない」
住民「…いいだろう。何が知りたい?」
健司「住民はあんただけじゃないだろう?他はどこにいる?」
住民「…」
住民が後ろの方に指を指す。全員が武器を所持し、構えている。
女「デズモンド!!」
デズモンド「その声は…モリー?」
一瞬、ビリーとエリナはビクッとした。
ビリー「この流れ、もしかして…」
エリナ「…かなりやばいことしちゃった?よね?」
デズモンドとモリーはお互い抱き合っている。見ているだけでモリーの抱く力が強いということがわかる。
モリー「これからどうするの!?子供だっているのよ?目が見えないならどうして生活していくのよ!?」
デズモンド「…あんなに金ピカだった結婚指輪はもう真っ赤だよ…はは…ほんとごめん…」
モリーは静かに泣く。誰にも泣き声が聞こえないように。何故なら近くに敵がいるからだ。最も愛する人を死ぬより残酷な状態にした、宿敵が。
モリー「私たちの幸せな物語を…よく邪魔してくれたわね?」
ビリー「ほんとにそういうつもりじゃないんだ。俺たちがはやく知ってりゃそんなことしなかった」
モリー「…もう聞きたくない」
再び沈黙が流れる。住民たちからの視線が槍のように突き刺さる。そして事の重大さを改めて痛感した。
エリナ「…罪を償います」
モリー「!!」
エリナ「どんな罰でも受けます。ただ…」
モリー「ただ?」
エリナ「2人を、生きて帰らせてやってください」
モリーは周りを見渡し、エリナを見る。
モリー「…わかった」
健司「待て!!エリナ!!」
ビリー「正気か!?戻ってこい!!」
エリナ「罪を…償わせて」
エリナは谷底へと突き落とされた。
エリナ・リグビー
年齢 17歳
誕生日 8月5日
身長 168cm
体重 51kg
武器 タックスマン(リボルバー)
趣味 買い物
特技 銃の弾避け
好きな音楽のジャンル スラッシュメタル




