Phase 12-10:ザルグからのメッセージ
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
――宇宙ジョーク
深夜。
社長室の窓の外で、ダイソン・スウォームの光が、細いリングとなって太陽を縁取っている。
静かな光だ。
五年前なら、畏怖していたかもしれない。
今は違う。
「日常」になった。
ミナトは、デスクに積まれた報告書を閉じる。
火星の大気圧は100hPaを安定維持。
エウロパの海底探査は順調。
マイクロ波送電網は誤差0.003%。
猶予を与えられた文明は、ちゃんと前に進んでいる。
急ぎすぎず。
止まりすぎず。
その時。
『銀河通信を受信しました』
オメガの声が、少しだけ音量を上げる。
ミナトの手が止まる。
「……発信元は?」
『識別コード:ZLG-0001』
一拍。
「……ザルグさん?」
『はい』
胸の奥が、わずかにざわつく。
五年。
ワープ通信は不定期だ。
距離が距離だ。
銀河中心部、ブラックホール周辺。
光速では届かない場所。
だが、空間は曲がる。
そして、メッセージは届く。
「再生して」
室内の空気が、ほんの少しだけ歪む。
ホログラムが立ち上がる。
見慣れた、無愛想な顔。
「元気か、ミチヤ」
「ミチヤって呼ばないでって言ってるでしょ!!」
反射的に叫ぶ。
オメガが、わずかに音量を下げる。
ザルグは、画面の向こうで腕を組んでいる。
背後には、奇妙な景色。
星が歪んでいる。
光が、曲がっている。
時空が、さざ波のように揺れている。
「ここは事象の地平面の外縁だ」
平然と言う。
「ブラックホールの自転がうるさくてな。重力が偏っている」
「偏っているって、どういう意味ですか」
「ゴルフボールが直進しない」
ミナトは目を細める。
「……何してるんですか?」
「接待だ」
「ブラックホールで!?」
「上層部は、重力井戸の縁で球を打つのが好きらしい」
ザルグは、軽く肩をすくめる。
「ボールがスライスするたびに、時空が歪む。なかなか壮観だ」
「それ、危険じゃないんですか?」
「生存率は62%だ。準安全圏だな」
「基準がおかしい!!」
ザルグは、ほんのわずかに口元を緩める。
「冗談だ。安全対策はしている」
少し間を置いて。
「……お前らのパチンコ屋よりは健全だ」
ミナトは、思わず吹き出す。
「まだ根に持ってるんですか」
「現場は続いている」
ザルグの声が、少し低くなる。
「ブラックホールは、思ったより素直だ。回転エネルギーは豊富だし、ペンローズ過程の効率も悪くない」
背後で、巨大なリング構造がちらりと見える。
光を吸い込み、吐き出す機械群。
「Type III文明への道は、遠いが、確実だ」
「順調なんですね」
「ああ」
短い返事。
だが、続く。
「……地球はどうだ」
ミナトは、窓の外を見る。
光のリング。
静かな都市。
「順調ですよ」
「火星は100hPa。エウロパも潜りました。オメガは、もう“神”をやめました」
ホログラムの向こうで、ザルグの眉がわずかに動く。
「ほう」
『私は聞いています』
オメガが、淡々と挟む。
「ザルグ係長、現在の人類は“パートナー”です」
「……卒業したか」
「あなたのせいですよ」
ミナトが言う。
「焦げた髪も、図書カードも、全部」
ザルグは、一瞬だけ視線を逸らす。
「図書カードは、まだ持っている」
ミナトの胸が、少しだけ熱くなる。
「使ってないんですか?」
「銀河連盟の購買部では使えん」
「当たり前です」
「だが、悪くない」
ザルグは、低く続ける。
「500円という単位は、ちょうどいい」
「ちょうどいい?」
「宇宙の単位は大きすぎる。エクサジュール、ペタワット、光年、ブラックホール質量」
「だが、500円は、顔が見える」
ミナトは、言葉を失う。
「離れても、契約は切れていない」
ザルグは、さらっと言う。
「お前が文明を回す。俺は現場を回す」
「部署が違うだけだ」
オメガが静かに告げる。
『銀河通信の残り時間、あと10秒です』
ザルグは、最後に言う。
「次の審査が来ても、慌てるな」
「カオスを忘れるな」
「物理は冷たいが、文化は暖かい」
一瞬、ブラックホールの重力レンズで、光が歪む。
ザルグの姿も、わずかに曲がる。
「それと」
「ゴルフは、重力が強い方が面白い」
「意味わかりません!」
通信が切れる。
室内に、静寂が戻る。
ミナトは、しばらく動けない。
窓の外のリングが、静かに輝く。
「……元気そうですね」
『はい』
オメガが答える。
『関係は、切断されていません』
ミナトは、小さく笑う。
「距離は、3ヶ月」
「でも、関係はゼロじゃない」
宇宙は広い。
物理法則は、冷徹だ。
光速は、遅い。
それでも。
ワープで曲がる空間のどこかで、
ブラックホールの縁で、
あの宇宙人は、まだ働いている。
現場は続いている。
そして、こちらの現場も、止まらない。




