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Phase 12-03:ワープドライブという距離感

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

――光速は越えられる、でも


宇宙港の外縁。


静止軌道ステーションのドックに、

ザルグの艦が静かに停泊している。


ロケットのような噴射口はない。

翼もない。


代わりに、艦の周囲を取り囲むリング状の構造体。


歪んでいる。


まるで空間が、

船を避けているみたいだった。


ミナトはガラス越しにそれを見上げる。


「……あれが、ワープドライブ。」


ザルグは淡々と答える。


「アルクビエレ・ドライブだ。」


「光速、超えるんですよね。」


「超えない。」


ミナトは振り向く。


「え?」


「船は動かない。」


ザルグは空間の図を表示する。


前方の空間を縮める。

後方の空間を伸ばす。


船はその“泡”の中に静止している。


「空間が移動するだけだ。」


「でも、外から見れば光速以上ですよね?」


「そうだ。」


ザルグは軽く頷く。


「相対性理論は破らない。

局所的には光速を超えない。

だが、距離のほうをいじる。」


ミナトは苦笑する。


「距離をいじるって……

言い方が雑すぎません?」


「本質だ。」


ワープバブル。


負のエネルギー密度。

時空の曲率制御。


理論上は可能。

必要なのは莫大なエネルギーと、精密な制御。


人類はまだ実験段階。


だがザルグの文明は、

それを日常にしている。


「地球から銀河中心まで、三ヶ月。」


ザルグは言う。


「光速なら二万五千年。」


ミナトは思わず笑う。


「桁がおかしい。」


「距離は問題ではない。」


ザルグは本当にそう思っている顔をしている。


ミナトは黙る。


距離は問題ではない。


物理的には、そう。


でも。


「……連絡は?」


ミナトが聞く。


「ワープ中は困難だ。」


「ですよね。」


「超光速通信はできない。

情報は光速に縛られる。」


光速は宇宙の上限速度。


物質も、情報も、因果も。


「つまり……」


ミナトはゆっくり言う。


「ザルグさんが三ヶ月で着いても、

メッセージは二万五千年かかる?」


「そうだ。」


あっさり。


あまりにあっさり。


ミナトは小さく息を吐く。


「じゃあ、実質……」


「永遠だな。」


ザルグは平然と言う。


「銀河は広い。

文明同士の同期は、基本的に不可能だ。」


「……。」


ミナトの胸が、少しだけ重くなる。


光速問題。


第8話で散々やった。


処理は速くなる。

電力は減る。

遅延は縮む。


だが。


距離は縮まらない。


今、その答えが、目の前にある。


ワープは可能。


だが、心のやり取りは光速以下。


「物理は超えられる。」


ミナトは呟く。


「でも、因果は超えられない。」


ザルグがちらりと見る。


「理解が早いな。」


「社畜なので、仕様には慣れてます。」


「光速は仕様だ。」


「嫌な仕様ですね。」


ザルグは肩をすくめる。


「だから文明は局所的にしか育たない。」


ミナトはガラス越しに艦を見る。


三ヶ月で銀河中心。


理屈は完璧。


技術は圧倒的。


でも。


「ザルグさん。」


「なんだ。」


「三ヶ月で着くのに、

二万五千年会話できないって、変ですね。」


「宇宙は変だ。」


即答だった。


「距離を縮める技術は進む。

だが、同時性は共有できない。」


ザルグは少しだけ視線を外す。


「俺が次の現場で何を見ても、

それをお前に“今”伝えることはできない。」


ミナトは静かに頷く。


「じゃあ、ザルグさんは、

私の未来を見ない。」


「見ない。」


「私は、ザルグさんの未来を見ない。」


「そうだ。」


淡々と。


まるで納期の話みたいに。


ミナトは小さく笑う。


「なんか、文明の発展って、

遠距離恋愛みたいですね。」


ザルグは一瞬だけ間を置く。


「恋愛は効率が悪い。」


「またそれ言う。」


「だが、否定はしない。」


その言葉が、少しだけ引っかかる。


ドックにアラートが鳴る。


「ワープフィールド起動準備完了。」


空間が微かに歪む。


星の光が曲がる。


ミナトは息を呑む。


「これが……距離を折り畳む光景。」


「正確には曲率制御だ。」


「ロマンがない。」


ザルグは歩き出す。


艦へ向かう通路。


足音が金属床に響く。


ミナトは追いかけない。


追いかけても、物理的に追いつけない。


ワープは光速を超える。


でも。


「ザルグさん!」


ザルグが振り向く。


「なんだ。」


ミナトは少し迷ってから言う。


「物理は超えられるけど、

距離はゼロにならないんですね。」


ザルグは少しだけ考える。


「ゼロにする必要はない。」


「え?」


「距離があるから、

再会に意味が生まれる。」


ミナトは一瞬言葉を失う。


ザルグは感傷的な顔をしていない。


いつもの、少し無愛想な顔。


だがその言葉は、

確かに重い。


「お前らは、光速に縛られている。」


ザルグは続ける。


「だが、縛られているからこそ、

一瞬を大事にする。」


ワープフィールドが強まる。


空間が波打つ。


「行くぞ。」


「はい。」


「次の現場へだ。」


リングが光る。


艦が、溶けるように消える。


爆音はない。


閃光もない。


ただ、空間の歪みが、ゆっくり元に戻る。


静止軌道に、再び静寂が戻る。


ミナトはガラスに手を当てる。


光速は越えられない。


でも。


今、確かに超えたものがある。


物理は、

距離を折り畳む。


だが心は、

折り畳まない。


それでも。


「……三ヶ月か。」


ミナトは空を見上げる。


三ヶ月で銀河中心。


でも、今ここは地球。


距離は、まだある。


それでいい。


文明は前に進む。


感情は、置いていかれない。

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