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Phase 12-01:帰還の日

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

――任務完了という言葉


水星基地は、驚くほど静かだった。


あれだけ騒がしかった増殖工場も、

フレアに焦げたアンテナも、

酸素警報の赤い点滅も、今はない。


代わりにあるのは、

整然と並ぶモニターと、

規則正しく脈打つダイソン・スウォームの稼働データ。


文明は、回っている。


そして、その中央に――


ザルグの端末が、短く鳴った。


ぴ、と。


それだけだった。


ザルグは視線を落とす。

何も言わない。


ミナトは、その沈黙の長さで理解した。


「……来たんですか?」


ザルグは小さく息を吐く。


「――ああ。」


端末の画面には、簡潔すぎる文字列。


【銀河連盟本部】

任務完了。

地球文明 Type II 暫定昇格確認。

担当官ザルグ、帰還せよ。


任務完了。


それだけだ。


二十年。


太陽を囲み、

水星を削り、

人類を怒らせ、笑わせ、焦がし、泣かせた二十年。


それが、四文字。


任務完了。


ミナトは画面を見つめたまま、首をかしげる。


「……完了、なんですか?」


その声は、怒りでも悲しみでもない。


ただ、実感がなかった。


ザルグは肩をすくめる。


「数字上はな。

ダイソン出力、安定。

エネルギー供給、持続可能。

文明自立度、基準超過。」


「でも――」


ミナトは言葉を探す。


「なんか……終わった感じ、しませんよ?」


水星はまだ回っている。

火星開発も続いている。

オメガは稼働中。

審査艦は去った。


世界は、普通に明日を迎えようとしている。


なのに。


ザルグは端末を閉じる。


「それが文明ってやつだ。

劇的に終わらない。

気づいたら、次のフェーズに入っている。」


少し間を置いて、付け足す。


「俺の仕事は“立ち上げ”だ。

運用は、お前らの仕事だ。」


ミナトは笑おうとして、やめた。


「……ザルグさんがいなくても、回るってことですか。」


「そういうことだ。」


あまりにも、あっさりと。


ミナトは椅子に座り直す。


モニターに映るのは、

安定出力 1.02 × 10²⁶ W。


太陽を蛇口にした文明。


それを作ったのは、目の前の宇宙人だ。


「任務完了って、便利な言葉ですね。」


ザルグは振り返らない。


「どういう意味だ?」


「責任が、全部そこに吸い込まれる感じがする。」


ミナトはゆっくり続ける。


「成功も、失敗も、

後悔も、焦げた髪も、

全部“完了”って言えば終わる。」


ザルグは一瞬だけ黙る。


そして、珍しく低い声で言った。


「終わらない。」


「え?」


「文明は終わらない。

だからこそ、任務は完了するんだ。」


それは理屈だ。


でも、少しだけ感情が混ざっていた。


ミナトは画面を見る。


任務完了。


その文字が、やけに軽い。


「……じゃあ、帰るんですね。」


「帰る。」


「いつですか?」


「近日中だ。」


「近日中っていつですか?」


「近日中だ。」


ミナトはため息をつく。


「ずるいなぁ。」


ザルグはようやく振り返る。


「何がだ。」


「実感、全然ないんですよ。」


ミナトは正直に言う。


「昨日も今日も、明日も、

普通に仕事してるし。

普通にダイソンの出力見てるし。

普通にザルグさんいるし。」


少し笑う。


「なんか、また明日もいる気がする。」


ザルグは、ほんのわずかだけ目を細めた。


「文明は続く。

人は入れ替わる。

それだけだ。」


「納得できないです。」


「納得する必要はない。」


端末が再び小さく鳴る。


帰還プロトコル起動。


それだけの通知。


水星の窓から、太陽が見える。


リングが静かに輝いている。


あの日、強制日食で暗くした太陽。


今は、文明の光源だ。


ミナトは立ち上がる。


「……任務完了、ですか。」


ザルグは答えない。


ただ、太陽を見ている。


その横顔は、いつもの仏頂面だ。


でもミナトにはわかった。


任務完了。


その言葉は、

ザルグにとっても、軽くはない。


二十年分の重さが、

その四文字に圧縮されている。


ミナトは、やっと少しだけ実感した。


「ああ。」


「終わるんだ。」


静かな水星基地。


文明は回っている。


そして――


ザルグの任務は、本当に、終わろうとしていた。

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