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Phase 2-01 月面強制連行

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

 サーバールームの窓の外には、満月が浮かんでいた。


 白く、静かで、何も知らない顔で。


「……あの」


 私は、恐る恐る口を開いた。


「冗談ですよね?」


 ザルグは答えなかった。


 代わりに、私の社員証を指で弾く。


「月へ行くぞ」


「いや無理です!!」


 反射的に叫んでいた。


「明日、重役会議あるんです!

 私が作った資料で説明する予定なんです!

 あれ、私がいないと誰も分からなくて……!」


「安心しろ」


 ザルグは、さらっと言った。


「資料なんてものは、AIに任せておけ」


「それができないから私が……!」


「それより」


 ザルグは、私の手首を掴んだ。


 妙に力が強い。


「お前にはエネルギーインフラの実地研修を受けてもらう」


「実地研修って……

 まさか……」


「月だ」


「月!?

 月って、あの月ですか!?」


 私は窓の外を指差した。


「そうだ」


「無理です!!

 会社に連絡もせずに連れて行かれたら、

 普通に懲戒解雇です!!」


「安心しろ」


 またその言葉だ。


「ワープ航法の余波で時間軸を調整する」


 嫌な予感がした。


「行って帰ってきても、地球時間では五分しか経っていないようにしてやる」


「……本当ですか?」


 私は、真顔で聞いた。


「絶対ですよ?」


「もちろんだ」


 ザルグは胸を張った。


「相対性理論の応用だ。完璧だ」


「……前回」


 私は、声を低くした。


「二十年、遅れましたよね?」


 一瞬、空気が止まる。


「……あれは」


 ザルグは、目を逸らした。


「ケアレスミスだ。有効数字の入力ミス」


「そのミスで、

 私の子供時代が消えたんですけど」


「今回は万全だ」


 即答だった。


「俺の計算能力を疑うな」


「(その計算能力が信用できないんですけど……)」


 心の声が漏れないように、私は深呼吸した。


「……分かりました」


 諦めが勝った。


「でも、本当に五分ですよ?

 五分ですからね!?」


「ああ」


 ザルグは頷いた。


「五分だ(多分)」


「『多分』って何ですか!?」


 叫んだ瞬間、視界が歪んだ。


 身体が引き伸ばされるような感覚。


 上下左右の区別が消える。


 ――次の瞬間。


 足元は、灰色の砂だった。


 頭上には、漆黒の宇宙。


 そして、青く輝く地球。


「……」


 声が出なかった。


「……月?」


 私は、ゆっくり周囲を見回した。


「本当に……月?」


「そうだ」


 ザルグは、平然と答える。


「静かの海。

 工場建設に向いている」


「工場……?」


 その時、私は気づいた。


 遠くで、何かが動いている。


 無数の機械。


 月面を掘り返し、組み立て、繋げていく。


 巨大な構造物が、音もなく形を成していた。


「ちょっと待ってください……」


 私は、声が震えるのを感じながら言った。


「いつの間に……

 こんな設備を……」


「お前が」


 ザルグは、さらっと言う。


「『ハリー・ポッター』を読んでいる間にな」


「……その話、

 もうやめてください……」


「感動している暇はない」


 ザルグは、私の肩を掴み、前を指差した。


「見ろ」


 そこには――


 地球を正確に向いた、

 異様に長いレールがあった。


 月面に据え付けられた、巨大な砲身。


 ただの構造物なのに、

 それが「危険」だと本能が理解してしまう。


「……これ」


 喉が鳴った。


「まさか……」


 ザルグは、にやりと笑った。


「その“まさか”だ」


 背筋が、ぞくりとした。


「さあ」


 ザルグは言った。


 「配送を始めるぞ」

 

 「でも……なんで、わざわざ月なんですか?

 地球で太陽光発電すればいいじゃないですか」

 

 ザルグは、心底呆れた顔をした。

 

 「だから遅れていると言っているんだ、この惑星は」

 

 ザルグは、月面の空――何もない黒を指差す。

 

 「地球には“空気”があるだろう。

 あれは生命には必要だが、発電には邪魔だ。

 光は散乱し、吸収され、夜になればゼロだ。

 雲が出れば終わり。土地を作れば反対運動」

 

 「……確かに、太陽光って不安定ですね」

 

 「だが月は違う」

 

 ザルグの声が、少し誇らしげになる。

 

 「大気ゼロ。減衰ゼロ。

 極域ならほぼ24時間、太陽が当たる。

 誰も住んでいない。誰も文句を言わない。

 重力も軽いから、構造物は地球の1/6の強度でいい」

 

 「……発電に関しては、理想環境ですね」

 

 「問題は“送る”ことだ」

 

 ザルグは、黒い電池ブロックを軽く叩いた。

 

 「電気は線で送るとロスが出る。

 宇宙空間ならなおさらだ。

 だから“固める”」

 

 ミナト

 「……電気を、固める?」

 

 「そうだ。エネルギーを構造体に封じ込め、

 あとは初速を与えて投げる。

 運動エネルギーはほぼ損失ゼロで届く」

 

 ザルグは、レールガンを見た。

 

 「だから月で発電し、固体電池にして配送する。

 一番シンプルで、一番効率がいい」

 

 ミナト

 「……なるほど。

 月は“発電所”で、電池は“宅配便”なんですね」

 

 ザルグ

 「ようやく理解したか。

 これが銀河標準のエネルギー物流だ」



 私は、目の前でゆっくりと開いていく装填口を見つめながら、

 はっきりと悟った。


 ――これは、

 絶対に問題になる。

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