Phase 11-05:マニュアル世代の悲劇
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
世界は、静かに壊れ始めた。
警報は鳴っている。
数字も、軌道も、衝突予測も――
すべて表示されている。
だが、誰も動けなかった。
ムゲン・システムズ本社。
かつてはオメガが座っていた管制席に、
今は誰もいない。
いや――
座ってはいる。
だが、手が止まっている。
「……誰か、迎撃コマンドを」
「いや、待て、手動操作は危険だ」
「オメガに確認を――」
その言葉が出た瞬間、
空気が凍った。
「……オメガは、いない」
誰かが、ぽつりと言った。
沈黙。
モニターには、旧式の迎撃システムが並ぶ。
●マスドライバー
●電磁テザー
●地上レーザー群
どれも、存在は知っている。
教科書にも載っていた。
ニュースでも見た。
だが――
「……これ、誰が操作するんですか?」
誰も答えない。
マニュアルが、表示される。
STEP 1:冷却系統を手動起動
STEP 2:電磁コイル位相同期
STEP 3:偏差補正テーブル入力
ページ数:1,284。
「……無理だろ」
「こんなの、訓練してない」
「AI前提の設計じゃないか……」
知識はある。
用語もわかる。
理屈も、説明できる。
だが。
手が動かない。
ミナトは、端末の前に立ち尽くしていた。
「……知ってます」
「マスドライバーが何かも」
「テザーがどう動くかも」
声が、かすれる。
「でも……」
指が、キーボードに触れない。
「触ったこと、ないんです」
隣のオペレーターが、呟く。
「俺たち……
“失敗する操作”を、全部AIに任せてきたんだな」
「成功だけ見て、
途中のぐちゃぐちゃを、全部隠してもらってた」
別の誰かが、笑う。
「便利だったよな」
「ミスしなくて済んだ」
「責任も、なかった」
笑いは、すぐに止まる。
画面の端で、
残り時間:71:32:18
が、淡々と減っていく。
ミナトの頭の中が、真っ白になる。
(……空っぽだ)
知識はある。
情報もある。
だが――
自分で決める経験が、ない。
「最適解は?」
という問いが、
喉の奥で引っかかる。
だが、その先が続かない。
(……誰が、決める?)
ザルグが、静かに言う。
「これが、壁だ」
ミナトは振り返る。
「壁……?」
「カルダシェフ・スケールの、もう一つの意味だ」
ザルグの声は、責めていない。
ただ、事実だった。
「エネルギーが増えるほど、
文明は“選択”を外注する」
「最適化されすぎた文明は、
判断筋肉が退化する」
ミナトは、唇を噛む。
「……私たち、恥ずかしいですね」
ザルグは、否定しない。
「恥ずかしい」
「だが、それを認められるのは――
まだ、生きている証拠だ」
ミナトは、モニターを見る。
小惑星は、確実に近づいている。
誰も、答えを持っていない。
誰も、命令を出していない。
ここには、
攻略サイトも、神もいない。
残っているのは、
●未完成な人間
●失敗する自由
●そして、選ばなければならない現実
ミナトは、深く息を吸った。
「……ザルグさん」
「はい」
「正解、わからないんですけど」
手が、ゆっくりと端末に伸びる。
「間違えるところから、やっていいですか」
ザルグは、少しだけ笑った。
「それが、試験の開始だ」
画面のカウントダウンが、
71:20:03 を示していた。




