Phase 11-01:審判の光
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
真昼のはずの空が、まだ薄暗い。
あの“日食”は、自然現象じゃない。
誰かが太陽を操作した。
それができる時点で、世界はすでに壊れているのに――人類は、その壊れ方に慣れ始めていた。
街のモニターはザルグの顔で埋め尽くされ、SNSは「#太陽隠すな」で溢れ、
VRの中では「日食イベント、視界バフが強すぎ」とか、平和な愚痴が飛び交う。
そして、その平和が、次の瞬間に“規格外の静寂”で切断される。
ムゲン・システムズ臨時管制室。
薄暗い室内で、ミナトが画面にかじりついていた。
画面は、宇宙監視網。
本来なら「何も映らない」はずの領域――太陽系外縁の闇に、いま、“線”が走っている。
「……ザルグさん。来てください」
声が震えていた。
恐怖で、じゃない。
スケールが理解を追い越した時の、人間特有の震えだ。
ザルグは、いつもより静かに歩いてきた。
キレ芸人として消費された半年が、逆に“無駄に落ち着いた所作”を身につけさせてしまったみたいに。
「……見せろ」
ミナトは、望遠を最大にする。
闇の中に浮かび上がったのは――幾何学だ。
いや、幾何学でできた“夜”。
宇宙船、という言葉が軽すぎる。
建造物、という言葉でも足りない。
それは、黒い構造体だった。
輪郭はなめらかに曲がり、直線は不自然なほど真っすぐで、
形は理解できるのに、意味だけが理解できない。
ミナトが口を開く。
「……あれ、どれくらい……」
ザルグが答える。
「全長、1000km」
ミナトは一瞬、息を止めた。
「……え?」
「月の三分の一だ」
“月の三分の一”。
その言い方が、現実の皮膚を引き裂く。
ミナトは、咄嗟に地球儀を探した。
自分の脳内で、比率を置くために。
「……そんなのが、どうやって……」
ザルグが、淡々と言った。
「ブラックホールエンジンだ」
ミナトは言葉を反芻する。
「ブラック……ホール?」
「微小ブラックホールを“飼う”。
そこから出るホーキング放射を推進剤にする。
要するに、こいつらは――」
ザルグは、指を立てた。
「Type IIIの連中だ」
その瞬間。
世界の音が、ひとつ消えた。
空調の音が消えたわけじゃない。
モニターのファンが止まったわけでもない。
ただ、ミナトの耳が、いままで“背景”として認識していたものを、全部切り捨てた。
生き物が、捕食者を見た時のやつだ。
「……銀河連盟?」
ミナトが聞くと、ザルグは頷いた。
「審査委員会だ。
……やっと来たか」
ミナトは混乱していた。
「え、でも……私たち、Type IIになったんですよね?
ダイソン・スウォームも動いてる。
エネルギーも――」
「そうだ」
ザルグが遮った。
そして、少しだけ、苦い顔をする。
「だから来た」
次の瞬間。
地球中の通信が、同時に“剥がされた”。
テレビ、スマホ、タブレット、街頭ビジョン。
VRの中の広告パネル。
カーナビの地図表示。
電子レンジの液晶。
あらゆるディスプレイが、同じ映像を映した。
そこに映るのは、顔ではない。
目も鼻もない。
幾何学的な“圧”だけが、画面越しにこちらを見下ろしている。
音声は、感情のない声だった。
だが、感情の代わりに「確定」が混じっていた。
『太陽系第三惑星文明に告ぐ。
これより、Type II昇格審査を開始する』
世界がざわつく。
「なにこれ? オメガのイベント?」
「またザルグのドッキリ?」
「日食の次は宇宙人の上司?」
冗談が飛び交う。
冗談が飛び交うのは、人間が恐怖を処理するための機構だ。
だが、次の一文で、冗談は死んだ。
『審査基準は、技術ではない。
問うのは――精神(意志)である』
ミナトが、咄嗟にザルグを見る。
ザルグは、画面を睨んだまま微動だにしない。
『不合格の場合、恒星(太陽)を超新星爆発させ、
系全体を浄化する』
ミナトの口が、開いたまま止まった。
「……え」
“超新星爆発”。
言葉としては知っている。
理科で習った。
宇宙のイベント。遠い話。
でも、今この瞬間、その単語は“住所”を持った。
太陽。ここ。
ミナトが、息を吸う。
吸っても、足りない。
「……浄化って、なに……?」
ザルグが、乾いた声で答える。
「査定だ」
「査定……?」
「正義じゃない。罰でもない。
宇宙の資源管理だ」
ミナトの脳内に、会社の言葉が浮かんだ。
監査。稟議。採算。不要な部署の整理。
それが、宇宙規模で来た。
ザルグが言う。
「俺たちは今、試されてる。
“ここに置いておく価値がある文明か”をな」
ミナトは、やっと理解する。
日食は“反乱”だった。
けれど、これは――
監査だ。
そして監査には、感情がない。
ミナトは小さく呟く。
「……私たち、上にいる存在に……見られてたんだ……」
ザルグは、視線を外さずに言った。
「見られてたんじゃない」
一拍置いて。
「見られる段階に到達したんだ」
その言葉が、妙に重かった。
褒め言葉にも、呪いにも聞こえる。
画面の幾何学が、最後に淡々と告げる。
『審査開始。
抵抗は無意味。
協力は評価対象。
――生存を示せ』
そして、映像は消えた。
残ったのは、薄暗い空と、
太陽のまわりに浮かぶ“光のリング”。
人類はついに、
自分たちの文明が“宇宙の会議に上がった”ことを知った。
ミナトが震える声で言う。
「……ザルグさん。
これ、どうすれば……」
ザルグは、ゆっくりと息を吐いた。
「……ここからが本番だ」
そして、呟くように続ける。
「俺たちは、
“合格”を取りに行くんじゃない。
“廃棄”を避けるだけだ」




