Phase 1-06 ザルグの言い訳
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
「……だが、いいだろう」
「はい?」
妙に落ち着いた声だった。
「ハードウェア(設計図)はある」
ザルグはそう言って、サーバールームの窓の方へ歩いていく。
「あとは、**リソース(資源)**だ」
小さな窓の向こうに、夜空が見えた。
雲の切れ間に浮かぶ、白く輝く満月。
ザルグは、それを指差した。
「設計図があっても、材料と電気がなきゃ、ただの絵だ」
「……まあ、それは……そうですね……」
「おい、ミナト」
振り返ったザルグの目は、
深夜のサーバールームの薄暗い照明の中で、妙に輝いていた。
「次の仕事だ」
嫌な予感しかしなかった。
「あの月を、電池工場にするぞ」
「……は?」
頭が、理解を拒否した。
(月を……?)
(電池工場に……?)
ザルグは本気だった。
「お前、明日から月面担当な」
「ちょっと待ってください!
月面担当って何ですか!?」
「次の納期は二週間後だ」
「二週間で月を工場にするんですか!?」
ザルグは、ニヤリと笑った。
「できるさ。だってお前、SEだろ?」
(……この人、絶対にデスマーチ体質だ)
(しかも宇宙規模の)
私は、深いため息をついた。
社畜耐性がついた三十歳の私でも、
これは無理だと思った。
……でも。
なぜか、断れなかった。
二十年前の、あの夏の日。
公園で出会った、
意味の分からない宇宙人。
あの時の、
小さなワクワクが、胸の奥で蘇ってきた。
「……分かりました」
「よし」
「でも、残業代は出ますよね?」
「出ない」
「え」
「宇宙の平和に貢献する名誉で我慢しろ」
(……やっぱりブラック企業じゃないか!!)
……と、そのとき。
ふと、気になって口を開いた。
「……あの」
「なんだ」
「そもそもなんですけど」
言葉を選びながら、続ける。
「どうして……
二十年も、空いたんですか」
一瞬。
ザルグの動きが止まった。
「……」
「忘れてた、とかでは……
ないですよね」
ザルグは、咳払いを一つした。
「いや。忘れてはいない」
「では……?」
「……今期の経費削減目標が、厳しくてな」
「……経費」
「ワープゲートを使うと、始末書が必要だった」
「……始末書」
「だから、通常エンジンで移動した」
「……通常?」
「光速の九十九・九九九九九……%だ」
「それ、ほぼ光速じゃないですか」
「そう思うだろう」
ザルグは、肩をすくめた。
「ローレンツ因子の計算も、ちゃんとした」
「……したんですね」
「したとも」
そこで、一拍。
「……有効数字が、少し足りなかった」
「……少し?」
「ほんの、数桁だ」
「それで……?」
「私の体感時間で五分」
ザルグは、淡々と言った。
「お前たちの時間で、二十年になった」
沈黙。
「……経費削減で、
二十年を無駄にしたんですか」
「……結果的には、そうなる」
合理的判断だった。
局所的には、正しかった。
でも、結果はこれだ。
「……それ」
私は小さく言った。
「私たちがやってることと、似てますね」
ザルグは、黙った。
反論は、なかった。
「……だからだ」
しばらくして、ザルグが言った。
「私は、お前たちを
一方的には責められない」
私は、少しだけ笑った。
「……お互い、社畜ですね」
「……否定できない」
サーバールームの熱は、
まだ下がらなかった。
だが、奇妙な連帯感だけが、そこに残っていた。
こうして、私の「月面プロジェクト」は始まった。
まさか、二十年越しの宿題が、
こんな形で返ってくるとは。
そして、まさか――
私が、銀河規模のデスマーチに
巻き込まれるとは。
誰も、予想していなかった。




