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Phase 10-03:ダイソン・スウォーム講義

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

水星基地の講義室は、やけに整っていた。


白い壁。

余計な装飾のない床。

中央に浮かぶ、半透明の立体投影。


太陽。


そして、その周囲を取り巻く無数の点。


「改めて説明しておく」


ザルグは、講義用の声に切り替わっていた。

芸人のキレも、怒鳴り声もない。


ただの、科学者だ。


「ダイソン・スウォームとは、

恒星を囲わない」


ミナトは瞬きする。


「……囲わない、んですか?」


「よく勘違いされる」


立体投影が変形する。

巨大な殻——ダイソン・スフィアのイメージが一瞬表示され、すぐ消えた。


「殻は作らない。

重すぎる。

危険すぎる。

そして、非効率だ」


代わりに現れたのは、

太陽の周囲を無数の軌道で巡る衛星群。


「スウォーム。

群れだ」


一つ一つの点が拡大される。


「直径10km級のソーラーサテライト。

厚みは数メートル。

内部はほぼ全部、発電と放熱のためだけの構造だ」


ミナトは、思わず笑ってしまった。


「……10kmが“小型”扱いなんですね」


「恒星相手だからな」


ザルグは淡々と続ける。


「太陽の総出力は

約 3.8×10²⁶ ワット」


数字が空間に浮かぶ。


「地球全体の消費電力は、

せいぜい 2×10¹³ ワット」


差は、あまりにも大きい。


「つまり」


ザルグは、数字の間に指を滑らせた。


「太陽は、

地球が必要とするエネルギーの一兆倍以上を、

毎秒、宇宙に捨てている」


ミナトは、喉を鳴らした。


「捨ててる……」


「そうだ。

誰にも使われず、

ただ放射されている」


立体投影が変わる。

太陽から放射される無数の矢印。


そのうちの、ほんの一部が色を変えた。


「我々が回収するのは、1%」


「……たった1%?」


「たった、だ」


ザルグは即答した。


「1%で、

人類史上の全エネルギー消費を、

軽く、何万回も上回る」


ミナトは、しばらく黙った。


「……じゃあ、残り99%は?」


「捨てる」


「捨てるんですか!?」


「捨てる」


冷たいほど、即答だった。


「文明というのはな、

全部取ろうとした瞬間に破綻する」


ザルグは、わずかに口角を下げる。


「1%で十分すぎる。

それ以上は、管理不能だ」


立体投影が拡張される。


100億基。

それぞれが独立した軌道を持ち、

衝突を避け、

自己修復し、

発電し、

送電する。


「これがType II文明の定義だ」


ミナトが復唱する。


「恒星のエネルギーを、直接使う文明……」


「正確には」


ザルグは言い直した。


「恒星のエネルギーを、制御可能な形で蛇口にする文明だ」


蛇口、という言葉が妙に生々しい。


「ダムでもない。

発電所でもない。

蛇口だ」


ザルグは、指を鳴らす。


立体投影の太陽が、一瞬だけ輝度を増す。


「開けば、出る。

閉めれば、止まる」


ミナトは、背中が少し寒くなるのを感じた。


「……そんなの」


「神の仕事だと思うか?」


ザルグは、ミナトを見る。


「違う。

これはただの工学だ」


沈黙。


「問題はな」


ザルグは、ゆっくりと言った。


「蛇口を開いた後だ」


ミナトは、息を呑む。


「エネルギーが足りない文明は、動く」


「だが」


ザルグは、指を一本立てた。


「エネルギーが無限に近づいた文明は、止まる」


立体投影の数字が消え、

太陽だけが残る。


「今から起こるのは、

人類史上最大の給電開始だ」


ミナトは、窓の外——光のリングを思い出す。


「……まだ、スイッチは入ってないんですよね?」


「ああ」


ザルグは頷く。


「まだだ」


一拍、間を置いて。


「だが、もう後戻りはできない」


太陽は、黙って燃え続けている。


文明は、その周りに、

蛇口を取り付け終えた。


あとは、

ひねるだけだった。

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