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Phase 10-01:芸人ザルグの憂鬱

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

テレビスタジオは、今日も異様な熱気に包まれていた。


司会者が、満面の笑みで叫ぶ。


「さあ本日のゲスト!

銀河一キレやすい男!

“物理でキレる宇宙人”ザルグさーん!!」


割れんばかりの拍手。

歓声。

効果音。

テロップ《※このあと怒ります》。


ザルグは、舞台袖で深くため息をついた。


「……俺は芸人じゃない」


そんな独り言は、もちろんマイクに拾われない。


ステージに立った瞬間、照明が当たり、観客の期待が一斉に向けられる。

“怒れ”。

“キレろ”。

“面白いことを言え”。


司会者が振る。


「ザルグさん! 最近、地球はエネルギー余りだそうですが?」


ザルグは一瞬だけ、真面目な顔になった。


「余っているんじゃない。

“制御できていない”だけだ。

エネルギーというのは――」


その瞬間、観客の誰かが小声で言う。


「来るぞ……」


ザルグの額に青筋が浮いた。


「いいか貴様ら!!

エネルギーはおもちゃじゃない!!

核融合は遊びじゃないんだ!!

$E=mc^2$だ!!

質量が!!

エネルギーに!!

変わるんだぞ!!」


会場、爆笑。


《ドッ!!》

《物理キレ芸、炸裂》

《今日も通常運転》


「アハハハハ!」

「それそれ!」

「待ってました!」


ザルグは叫んでいる。

本気で。

必死で。

だが、誰も“内容”は聞いていない。


彼が怒れば怒るほど、

正しいことを言えば言うほど、

数字が跳ね上がる。


——視聴率。

——再生数。

——広告単価。


「笑うなぁぁぁぁ!!」


その絶叫に、最大級の拍手。


楽屋。


ザルグは椅子に沈み込み、天井を見上げていた。

汗は、もうとっくに冷えている。


「……俺は、科学者だ」


誰に言うでもなく、そう呟く。


「文明を前に進めるために、

物理を語っていたはずだ」


楽屋のドアがノックされる。


ミナトが、紙コップの飲み物を二つ持って入ってきた。


「お疲れさまです、ザルグさん。

今日も“神回”でしたよ」


「やめろ」


「トレンド1位です。

《#今日のキレ角度》ってタグまでできてます」


ザルグは、コップを受け取りながら苦笑した。


「……角度じゃない。

内容を聞け」


ミナトは少し黙ってから言った。


「でも、ちゃんと“役に立って”ますよ」


「何がだ」


「ザルグさんが怒ると、

みんな安心するんです」


「安心?」


「“あ、今日も世界は壊れてないな”って」


ザルグは、返す言葉を失った。


正しいことを言っても、

理解されなくても、

怒る姿だけが消費される。


それでも“役に立っている”と言われる。


——科学者としては、死んだも同然だ。


「……飼い慣らされたな、俺は」


ミナトは否定しなかった。


モニターの中では、

次回予告が流れている。


《次回も怒る!ザルグ!》

《科学でキレる男!》


ザルグは、それを背に立ち上がる。


「正しさは、娯楽に負ける」


ぽつりと、重い言葉を落とした。


「だがな……」


拳を握る。


「それで文明が前に進まないなら、

それは“幸福”じゃない」


ミナトは何も言わず、黙って聞いていた。


この時点では、

まだ誰も知らない。


この“芸人ザルグの憂鬱”が、

やがて太陽を覆う引き金になることを。

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