Phase 1-05 神の数式は、名刺の裏にあった
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
ザルグは、まだ床に座っていた。
完全に力が抜けた様子で、
壁にもたれかかっている。
「……」
サーバールームの音が、
現実を思い出させるように鳴り続けている。
ミナトは、気まずさに耐えきれず、口を開いた。
「……あの」
ザルグは、反応しない。
「……本当に、
きれいな形だったんです」
独り言のように、続ける。
「当時、
なんでか分からないけど……
見てて、落ち着く感じで」
ザルグの指が、わずかに動いた。
「……きれい、だと」
「はい」
ミナトは、
首から下げていた社員証のストラップをいじりながら言った。
「そういえば……
あの絵を見て、
やたら気に入った人がいて」
ザルグの目が、
わずかにこちらを向く。
「……誰だ」
「えっと……
そのコンクールを協賛してた、
地元のITベンチャーの社長さんです」
ミナトは、少し困ったように笑った。
「『この形、いいね』って。
『意味は分からないけど、好きだ』って」
ザルグは、黙って聞いている。
「で……」
ミナトは、
社員証を指先でつまみ上げた。
「その会社、
創業したばかりだったらしくて」
「……」
「ロゴがまだ決まってなかったから、
『これ使わせていい?』って」
ザルグの眉が、わずかに動いた。
「……ロゴ?」
「はい」
ミナトは、
少し照れたように続ける。
「それで、
そのまま採用されたみたいで」
そう言って、
社員証をザルグの前に差し出した。
「……ちなみに、
その会社」
一拍。
「今、私が勤めてる会社なんです」
ザルグは、
ゆっくりと顔を上げた。
社員証のロゴを、凝視する。
六角形と螺旋が絡み合った、
よくあるテック系のデザイン。
――の、はずだった。
次の瞬間。
ザルグの目が、強く光った。
「……解析モード」
低く呟く。
ロゴの線が、
ザルグの視界で立体的に浮かび上がる。
「……この結合角……」
指先が、震え始めた。
「この位相……
この同期条件……」
息を呑む音。
「……間違いない」
ザルグは、社員証を掴んだ。
「クーパー対の絶対安定領域だ」
「……え?」
「電子ペアのスピンを、
完全に同期させるトポロジー……」
ザルグは、
信じられないものを見る目で呟く。
「……おい、ミナト」
「は、はい」
「この図形……
どれくらいの人間が見ている」
「えっと……
社員全員、ですかね」
「……他には」
「名刺とか、
看板とか、
パンフレットとか……」
ザルグは、
ゆっくりと立ち上がった。
さっきまでの絶望が、
嘘のように消えている。
「……二十年」
呟く。
「二十年かけて、
お前たちは……」
ザルグは、
社員証を握りしめた。
「無限のエネルギーを生み出す魔法陣を、
首からぶら下げて生きていたのか」
「……ええっ!?」
ザルグは、
サーバールームの外――
夜空の向こうを見た。
ビルの隙間から、
月が見えている。
「ハードウェアはある」
静かな声。
「設計図もある」
そして、
指を伸ばす。
「足りないのは、
リソースだ」
ミナトは、嫌な予感がした。
「……リソースって」
ザルグは、
月を指差した。
「電気と、材料だ」
ミナトは、言葉を失った。
「……まさか」
ザルグは、振り返る。
目は、完全に本気だった。
「次の仕事だ」
「……」
「あの月を、
電池工場にするぞ」
「……は?」
ザルグは、
当然のことのように言った。
「設計図があるのに、
使わない理由があるか?」
ミナトは、
頭を抱えた。
サーバールームの熱が、
さらに一段、上がった気がした。




