Phase 8-03:地球がまた燃えている(電子の限界)
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
――問題は、いつも“熱”から始まる――
水星基地。
静寂。
……のはずだった。
ピピピピピピ――!
警告音が鳴り響く。
ミナトは、反射的にモニターを見た。
「……あ、これ……」
見覚えがある。
いや、見覚えがありすぎる。
―――――――――――
『また地球が赤い』
画面には、地球本社――
ムゲン・システムズのデータセンター。
温度グラフが、真っ赤だった。
「……また燃えてますね」
ミナトは、乾いた声で言った。
「第4話で、
『宇宙に熱を捨てる』ってやりましたよね?」
ザルグは、腕を組んだまま画面を睨んでいる。
「やった。
放射冷却も、
大気の窓も、完璧だった」
「じゃあ、なんで……?」
画面の向こうで、地球の技術者が叫ぶ。
『ダメです!
冷却が追いつきません!』
『設計データの通信量が、
想定の3倍に膨れ上がっています!』
『CPU温度、限界です!』
ミナトは、ピンと来た。
「……通信量?」
―――――――――――
『原因は“速くなりすぎた”こと』
ザルグが低く唸る。
「ダイソン・スウォームだ」
「え?」
「第一期工事の設計・制御データが、
秒単位で地球に流れ込んでいる」
「数兆枚の衛星だ。
その軌道制御、姿勢制御、
発電量の最適化……」
「情報量が桁違いだ」
ミナトは、少し考えてから言った。
「……でも、それって
『通信が速くなった』から
起きてる問題じゃないですか?」
ザルグは、ゆっくり頷いた。
「その通りだ」
「情報は届いた。
だが――」
ザルグは、苛立ったように言った。
「受け取る側が耐えられない」
―――――――――――
『電子という“重たい存在”』
ザルグは、指で机を叩いた。
「いいか、ミナト」
「地球の計算機は、
いまだに電子を使っている」
「電子は――」
一拍置いて、言い切る。
「重い」
ミナトは、思わず聞き返した。
「……重い?」
「そうだ」
「質量を持っている。
$9.1×10^{-31}$kg」
「ゼロではない」
「質量があるということは、
慣性があるということだ」
「止まりにくく、曲がりにくく、
そして――」
ザルグは、吐き捨てるように言った。
「ぶつかる」
―――――――――――
『ぶつかる=熱』
ザルグの指が、空中に電子の流れを描く。
「電子は、導線やチップの中で、
原子にぶつかりながら進む」
「ぶつかれば、エネルギーが散る」
「それが――」
「熱だ」
ミナトは、思い出した。
「……ジュール熱」
「そうだ」
「電子は、
『泥の中を全力疾走している』ようなものだ」
「速くすればするほど、
摩擦が増えて、熱が出る」
「通信量を増やせば増やすほど、
地球は燃える」
画面の中で、
データセンターの冷却ファンが悲鳴を上げている。
―――――――――――
『最大の無駄:光→電気→光』
ザルグは、さらに続けた。
「しかも、最悪なのはここだ」
「地球のネットワークは、
光ファイバーを使っている」
「情報は、光として届く」
ミナトは頷く。
「はい。光回線ですよね」
「だが」
ザルグの目が細くなる。
「ルーターに入った瞬間、
電気に変換する」
「CPUで処理するためにな」
「処理が終わったら?」
「……また光に戻す」
「そうだ」
ザルグは、苛立ちを隠さない。
「光 → 電気 → 光」
「この変換のたびに、
エネルギーが失われ、
熱になる」
「無駄だ。
あまりにも無駄すぎる」
―――――――――――
『ザルグ、完全にキレる』
沈黙。
次の瞬間、ザルグが吐き捨てた。
「電子は――」
一語ずつ、噛みしめるように。
「遅くて」
「重くて」
「熱い」
ミナトは、思わず背筋を伸ばした。
(出た……名言……)
「そんなものを、
情報文明の中枢に使うな」
「電子は、
もはや時代遅れだ」
ザルグは、はっきりと言い切った。
「これからは――」
「光だけを使う」
「フォトン(光子)に任せろ」
―――――――――――
『フォトン原理主義者、爆誕』
ミナトは、慎重に聞いた。
「……つまり?」
ザルグは、振り向く。
その目は、完全に思想の目だった。
「電子を捨てる」
「チップの中まで、
すべて光で処理する」
「計算も、通信も、
一度も電気に変換しない」
「オール・フォトニクスだ」
ミナトは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
(あ……)
(これ……
革命が始まるやつだ……)
画面の向こうで、
地球はまだ赤く燃えている。
だが、ザルグの視線は、
すでにその先を見ていた。




