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Phase 8-02:水星駐在1ヶ月・ラグ地獄

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

――光速は悪くない。ただ、遠すぎるだけだ――


水星基地・休憩区画。

「休憩」と書いてあるが、実態は椅子と端末と壁しかない箱だ。


ミナトは、椅子に沈み込みながらコントローラーを握っていた。


画面には、見慣れたFPSのロビー画面。

地球の友人たちが、軽快に動き回っている。


「……よし」


ミナトは深呼吸した。


「今日は……いける気がする」


水星駐在、1ヶ月目。

人は、1ヶ月で絶望に慣れるらしい。


―――――――――――


『唯一の娯楽』


水星には、娯楽がない。


映画?

通信が遅すぎて、ネタバレが先に届く。


音楽?

サビが来る前に、次の曲の情報が届く。


本?

電子書籍のページ送りに数分かかる。


だから――

ミナトの唯一の娯楽は、オンラインゲームだった。


「よし……マッチングした……!」


画面が切り替わる。


ミナトは、慎重にキャラクターを動かした。


(この角……敵が出る……)


(今だ!)


バン!


ミナトは、確かに引き金を引いた。


確かに撃った。


確かに――


画面が赤く染まる。


YOU ARE DEAD


「……」


沈黙。


「……は?」


―――――――――――


『Pingという名の現実』


ミナトは、画面右上を見た。


Ping:600,000ms


「……60万……?」


指で数え始める。


「……600,000ミリ秒……」


「……10分……?」


次の瞬間、ミナトは叫んだ。


「10分前に撃ったのに!!」


「10分前ですよ!?

私、10分前にちゃんと撃ちましたよね!?」


基地に、虚しい声が響く。


―――――――――――


『理解してしまう地獄』


背後で、端末を操作していたザルグが、ため息混じりに言った。


「当然だ」


「当然じゃないです!!」


ミナトは振り返る。


「なんで撃った瞬間に死ぬんですか!

撃つ前に死んでるんですけど!?」


ザルグは、淡々と説明を始めた。


「水星と地球の距離は、

軌道条件によって約7〜15光分だ」


「光分……」


「光が7〜15分かかる距離、という意味だ」


ミナトは、ゆっくりと理解した。


「……つまり……」


「お前の『撃った』という情報が、

地球のサーバーに届くまで、約10分」


「で、向こうの『撃たれた』判定が返ってくるまで、さらに10分」


「合計……」


「約20分だな」


「……」


ミナトは、コントローラーを見つめた。


「じゃあ……」


「私が今見てる敵って……」


「20分前の敵だ」


「……」


―――――――――――


『光速という逃げ場のない壁』


「でも……」


ミナトは、最後の希望にすがった。


「通信、光回線ですよね?

もっと速くできないんですか?」


ザルグは、即答した。


「無理だ」


「なんで!」


「光速が上限だからだ」


ザルグは、指で空間に式を書く。


「$c ≈ 3×10^8$ m/s」


「宇宙で一番速い。

これ以上は出ない」


「ルーターを良くしようが、

回線を太くしようが、

距離÷光速は変わらん」


ミナトは、頭を抱えた。


「……物理……」


「逃げ場がない……」


「そうだ」


ザルグは、少しだけ意地悪そうに言った。


「これは設定だ。

宇宙の」


―――――――――――


『生活に侵食するラグ』


その後も、ミナトは何度か挑戦した。


・敵が見えた瞬間に死ぬ

・遮蔽物に隠れたはずなのに死ぬ

・リスポーン地点で死ぬ


最終的に――


「もうやだ……」


ミナトは、椅子にもたれた。


「撃つ意味ないじゃないですか……」


「ある」


ザルグが言う。


「未来に向けて撃っている」


「そんなSFみたいなこと言われても……」


ミナトは天井を見上げた。


「……これ、

通信の問題ですよね」


ザルグは黙ったまま、端末を操作している。


ミナトは、ぼそっと呟いた。


「……ああ、これ……」


「通信の話になるな」


その瞬間、

水星の静かな基地に、

次の問題の気配が、確かに立ち上がっていた。

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