Phase 6-04:物理プレゼン(決戦)
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
――感情を捨て、式で殴れ――
ムゲン・システムズ最上階・役員室。
空間が、歪んでいた。
昨日まで「役員室」と呼ばれていた場所は、
今や三次元の皮を一枚かぶっただけの監査用演算空間になっている。
空気が薄い。
音が、遅れて届く。
重力の向きが、時々わからなくなる。
その中心に――
ヴォルクス監査官がいた。
幾何学的な光の集合体。
角度の合わない直線。
観測するたびに形が変わる、高次元の圧。
「時間だ」
声が、直接頭に落ちてくる。
「ザルグ係長。
最終報告を提出せよ」
ザルグは一歩前に出た。
背中は――
少しだけ、震えている。
―――――――――――
物理プレゼン、開始
「……ヴォルクス監査官」
ザルグは深呼吸した。
「本計画は遅延しています。
それは事実です」
「しかし――」
指を鳴らす。
ホログラムが起動した。
都市。
月。
軌道。
エネルギーフロー。
「我々は、
文明を“効率”ではなく“物理法則”で再設計しました」
―――――――――――
スライド1:エネルギー保存則
「第一に」
「この星では、
エネルギーは失われていません」
グラフが展開される。
発電量
貯蔵量
消費量
廃熱量
すべてが、
保存則に従って閉じている。
「常温超伝導体により、
送電ロスはゼロ」
「全固体電池により、
時間的分離が可能になった」
「エネルギーは、
必要な場所・必要な瞬間へ移動している」
ヴォルクスが、わずかに沈黙した。
「……当たり前のことを言っているな」
ザルグは頷く。
「はい。
当たり前を、徹底しただけです」
―――――――――――
スライド2:エントロピー生成
「次に、
この文明の特異点を示します」
夜景。
ネオン。
パチンコ屋。
カラオケ。
「地球文明は、
1秒あたり 10¹³ワットを
“無意味に”消費します」
「その結果、
熱・光・音として
高速にエントロピーを生成する」
数式が浮かぶ。
dS/dt ≫銀河標準
「非効率です。
極めて」
「だが――」
ザルグは一瞬、間を置いた。
「安定しています」
―――――――――――
スライド3:分散という戦術
都市全体が、
点の集合として再描画される。
「集中管理ではない」
「発電も、
貯蔵も、
消費も、
局所的」
「タワマン揚水発電は、
単なる苦肉の策ではありません」
「SPOF(単一障害点)が存在しない」
ヴォルクスの光が、わずかに揺れる。
「……理論上、
破壊耐性は高いな」
「はい」
ザルグは即答した。
「この文明は、
壊れても動き続ける」
―――――――――――
スライド4:廃熱処理という誠実さ
最後のスライド。
地球から、
赤外線が静かに宇宙へ流れていく映像。
「廃熱は、
隠していません」
「水蒸気で誤魔化さず、
大気の窓を通して
宇宙へ返している」
「この文明は、
自分たちの出した熱を
宇宙に嘘をつかず返却している」
沈黙。
重い。
―――――――――――
ヴォルクスの評価
「……」
長い沈黙のあと、
ヴォルクスが言った。
「非標準」
「非効率」
「計画遅延」
「だが――」
光が収束する。
「物理的には、破綻していない」
ザルグの喉が鳴る。
「この文明は、
“賢く”はない」
「だが、
物理を裏切ってはいない」
私は、思わず拳を握った。
(来た……!)
―――――――――――
判決は、まだ出ない
「結論は出さない」
ヴォルクスが告げる。
「24時間以内に、
最終判断を下す」
「それまで、
この星は仮保留だ」
光が、ゆっくりと消えていく。
―――――――――――
決戦後
役員室に、
重力が戻った。
ザルグは――
その場に座り込んだ。
「……殴った」
「全力で」
私は、苦笑する。
「物理でですけどね」
ザルグは、かすかに笑った。
「それでいい」
「それしか、
できない仕事だった」
窓の外では、
昼の東京が始まっている。
KPIに載らないが、
まだ消えていない世界。
私は思った。
(たぶん――
ここが、本当の分岐点だ)




