Phase 6-03:物理プレゼンの準備(徹夜地獄)
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
――世界を救うのは、だいたい深夜3時――
ムゲン・システムズのオフィス。
夜。
というより、深夜。
というより、終電という概念がとっくに消えた時間帯。
窓の外では、東京の夜景が相変わらず無駄に輝いている。
KPIには一切換算されない光の洪水だ。
私はコンビニのコーヒーを三本目に突入していた。
「……ザルグさん」
声をかける。
返事はない。
デスクを見ると、ザルグはホログラムに囲まれていた。
いや、殴られていたと言ったほうが正しい。
数式、グラフ、エネルギーフロー図、
銀河標準規格書、監査用KPIテンプレート。
全部が宙に浮かび、
係長一名を包囲している。
「……ああ……」
ザルグが呻く。
「銀河標準KPI……
文明進捗は“指数関数的成長”が前提……」
「地球は……
横ばいどころか、
パチンコで乱高下している……」
(係長……つらい……)
―――――――――――
KPIという名の地雷原
私はノートPCを開いた。
「整理しましょう。
まず“数字で殴る”なら、
何を武器にします?」
ザルグは、虚ろな目で答える。
「……物理法則」
「それしかない」
「文化も感情も、
あいつにはノイズだ」
「なら、
エネルギー保存則とエントロピーで殴る」
(殴り方が物騒……)
私は深呼吸した。
「じゃあ、順番に行きましょう」
「第1話からです」
―――――――――――
第1話:常温超伝導(送電ロスゼロ)
ザルグが、空中にグラフを展開する。
「従来の銅線送電では、
送電ロスは平均5〜7%」
「都市規模では、
年間およそ 10¹⁵ジュールが
“熱として無駄死に”していた」
「常温超伝導体導入後――」
グラフが、一直線にゼロへ落ちる。
「送電ロス:0」
「これは娯楽でも文化でもない。
純然たる効率改善だ」
私は頷いた。
「よし、これは
KPI的にも評価されそうです」
―――――――――――
第2話:全固体電池(月産・意味不明コスパ)
「次」
ザルグが続ける。
「全固体電池」
「月のレゴリス由来材料を使用」
「エネルギー密度:
銀河標準比 10倍」
「製造コスト:
地球製の 1/10」
私はメモを取りながら言った。
「ただし……」
「40%がパチンコですよね?」
ザルグは、ゆっくり目を逸らした。
「……事実だ」
「だが!」
ザルグは急に声を張った。
「用途が愚かでも、性能は事実だ!」
「エネルギーは貯蔵され、
必要な時に取り出せる」
「文明基盤としては、
満点だ!」
(係長、必死……)
―――――――――――
第3話:テザー推進(燃料不要という暴力)
「テザー推進」
ザルグは、少し誇らしげになった。
「燃料ゼロ」
「地球磁場という“既存インフラ”を利用」
「ロケット燃料によるCO₂排出:ゼロ」
「輸送コスト:
指数関数的に低下」
私は思い出す。
「……GPSは死にましたけど」
「仕様だ」
即答だった。
「監査官は
地上の迷子など評価項目に含めない」
(それもそうか……)
―――――――――――
第4話:宇宙放射冷却(犯人はH₂O)
「次だ」
ザルグの声が、少し低くなる。
「廃熱処理」
「水蒸気による局所熱汚染を廃止」
「8〜14μmの大気の窓を利用し、
直接宇宙へ放射」
「都市部の熱収支を改善」
「ゲリラ豪雨、減少」
私は小さく笑った。
「星が明るすぎて眠れない、
ってクレームは来ましたけどね」
「知るか」
ザルグは切り捨てた。
「睡眠はKPIに含まれない」
(銀河怖い……)
―――――――――――
第5話:タワマン揚水発電(尊厳ギリギリ)
最後。
ザルグが、少しだけ言い淀んだ。
「……分散型揚水発電」
「タワマンを
位置エネルギーの缶詰として利用」
「数千棟をVPPとして接続」
「単一障害点なし」
「障害耐性:
銀河標準集中型の 約100倍」
私は言った。
「……尊厳は?」
「計測不能だ」
即答。
「だが、
系としては安定している」
(係長……もう割り切ってる……)
―――――――――――
深夜3時、希望が少しだけ生まれる
すべてをまとめたホログラムが、
部屋の中央に浮かぶ。
数字。
グラフ。
物理式。
どれも、
感情を一切必要としない証拠。
ザルグは、それを見つめていた。
「……ミナト」
「これなら……」
「殴り合いにはなる」
私は、笑った。
「十分です」
「地球、
まだ消したくないですから」
ザルグは、ゆっくり頷いた。
「……ありがとう」
その声は、
係長というより、
ただの疲れた管理職だった。
窓の外では、
朝焼けが始まりつつある。
KPIには載らないが、
それでも確かに存在する光。
「よし……」
ザルグが立ち上がる。
「次は――
本番だ」
私は、空になったコーヒー缶を見つめながら思った。
(世界を救うプレゼンって、
だいたい徹夜明けだよな……)




