Phase 1-03 20年後/サーバールームでの再会
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
サーバールームは、今日も暑かった。
空調は正常。
警告ランプも点灯していない。
それでも、
肌にまとわりつくような熱がある。
「……また温度アラートか」
ミナトは端末を確認しながら、ため息をついた。
ラックが並び、
ファンが低く唸る。
この音にも、
もう慣れた――はずだった。
そのとき。
音の質が変わった。
ファンの唸りの奥に、
別の“振動”が混じる。
空気が、わずかに歪んだ。
「……え?」
足元が、ふっと軽くなる。
次の瞬間、
サーバールームの中央に“何か”が現れた。
人の形をしている。
だが、人ではない。
青白い肌。
関節の位置が、微妙に違う。
目が、淡く光っている。
「……」
ミナトは、言葉を失った。
その存在は、周囲を見渡し――
サーバーラックに近づいた。
そして、
手をかざす。
「……っ」
次の瞬間、
さっと手を引っ込めた。
「……おい」
低い声。
「なんだ、この灼熱地獄は」
ラックを睨む。
「ここはサウナか?
それとも、この箱の中で
小型の恒星でも飼ってるのか?」
「……え?」
ミナトは、完全に思考停止していた。
「……サ、サーバーです」
幻覚だと思いながら答える。
「今、AIの学習処理を回してて……
負荷が高いんです……」
「学習?」
その存在――ザルグは、
信じられないものを見る目をした。
「……これが、か?」
ラックを指差す。
「おいミナト。
よく聞け」
一歩、近づく。
「お前たちは『計算』をしているつもりかもしれないが」
一拍。
「物理的に見れば、
これはただの
**『超高価な電気ストーブ』**だぞ」
「……ストーブ?」
「電気を流す。
抵抗 R にぶつかる。
ジュール熱が発生する」
淡々と、だが鋭く。
「お前たちが投入したエネルギーの大半は、
情報を処理するためじゃない」
ラックを軽く叩く。
「このシリコンの板を
焼くために使われている」
ミナトは、反論できなかった。
「その上、だ」
ザルグは、天井の空調を指した。
「焼けた石を冷やすために、
さらに電気を使ってファンを回す?」
低い笑い。
「『熱を出して、それを冷やす』……?」
首を振る。
「マッチポンプどころじゃない。
エネルギーに対する冒涜だ」
「そ、そんなこと言われても……」
ミナトは、かすれた声で言った。
「抵抗があるのは、
物理の法則で……」
「知っている」
即答。
「だからこそ、言っている」
ザルグの目が、鋭く光る。
「物理的に正しい計算機――
可逆計算なら」
言葉を区切る。
「理論上、発熱はゼロにできる」
「……え」
「ランダウアーの原理だ」
ミナトは、何も分からなかった。
だが、
“ヤバい理屈”だということだけは伝わる。
「なのに、お前たちのCPUはどうだ」
ザルグは、指を立てた。
「1ビットの情報を操作するのに、
理論上の下限値の
何億倍ものエネルギーを」
一拍。
「熱として捨てている」
サーバールームの熱が、
急に重く感じられた。
「『計算に使われた有効エネルギー』対
『廃熱』の比率を見ろ」
吐き捨てるように言う。
「99%どころか、
ほぼ100%がゴミだ」
「……」
「エントロピーが増えるのは仕方ない」
声が低くなる。
「だが、お前たちは
何も生み出さずに
ただ掻き回して、増やしている」
沈黙。
「宇宙熱的死・早期加速罪
(ヒート・デス・アクセラレーション)」
ゆっくり告げる。
「銀河法廷に訴えれば、
即有罪だ」
「そ、そんな罪状……」
ミナトは、震える声で呟いた。
ザルグは、
大きく息を吐いた。
「……いや」
少しだけ、声の調子が変わる。
「これは、
設計した者の罪ではない」
ミナトを見る。
「判断した者の罪だ」
そして、
静かに続けた。
「……で」
話題を切り替える。
「二十年前」
ミナトの胸が、跳ねた。
「夏。公園」
「……」
「私が渡した設計図は」
目を細める。
「どこだ」
ミナトは、こめかみに指を当てた。
「……あー……」
記憶の奥が、揺れる。
「なんか……
幾何学模様みたいな……」
ザルグの表情が、変わった。
「……続けろ」
「夏休みの自由研究に……
清書して……」
その瞬間。
ザルグは、
膝から崩れ落ちた。
「……清書……?」
床に手をつく。
「……お前は……
あれを……」
ミナトは、言いにくそうに続けた。
「……画用紙に……」
サーバールームには、
ファンの音だけが残った。
「……続きを、話せ」
低く、重い声。
ミナトは、
ゆっくりと息を吸った。




