Phase 5-02:海を持ち上げる計画
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
― 重力は、裏切らない ―
翌朝。
ムゲン・システムズ本社・大会議室。
私は眠気と不安を引きずりながら、長机の一番端に座っていた。
正面のホワイトボードには、でかでかと日本地図。
そして、その前に立つ――
当然のように、ザルグ。
(……嫌な予感しかしない)
「いいか、ミナト」
ザルグは、チョークを持つと、ためらいもなく日本列島に丸を描いた。
「電気を貯める方法は二つしかない」
チョークが走る。
化学エネルギー(電池)
位置エネルギー(重力)
「電池は便利だ。だが劣化する。希少資源も必要だ。
つまり――文明が不安定になる」
私は小さく頷いた。
ここまでは、正論だ。
「だが重力はどうだ?」
ザルグは、チョークを床に落とした。
カツン。
「裏切らない。
重力は、宇宙が終わるまで一定だ」
(言い方が怖い……)
「つまりだ」
ザルグは、日本地図を指差す。
「お前らが夜に困るのは、
電気が足りないからではない」
「昼間に余ったエネルギーを、
“高いところ”に逃がしていないからだ」
「……揚水発電、ですか?」
恐る恐る口を挟む。
「ほう、知っているじゃないか」
ザルグは満足げに頷いた。
「そうだ。水を高い場所に汲み上げ、
落とすときに発電する。
原始的だが、極めて優秀な方法だ」
「でも、日本の揚水発電所って、
もう結構使われてますよね?」
「あんなものでは足りん」
ザルグは、にやりと笑った。
そして――
日本海を指差した。
「俺が使うのは、これだ」
「……海?」
「そうだ」
ザルグは、北アルプス方面にチョークを走らせる。
「下の池:日本海
上の池:北アルプスの谷」
一瞬、思考が止まった。
「……え?」
「海水を汲み上げ、山に貯める」
「夜になったら、落とす」
「終わりだ」
(終わりじゃない!!!!)
私は、思わず立ち上がった。
「無理です!!
スケールがおかしいです!!
海水を山に!? どうやって!?
ていうか、塩害とか、生態系とか!!」
ザルグは、面倒くさそうにこちらを見る。
「パイプラインだ。完全密閉。漏れない」
「貯水池も完全防水」
「塩害? 起きない」
「……じゃあ、海面は!?」
「数センチ下がるだけだ」
「それ、誤差じゃないです!!
港湾関係者が怒ります!!」
「夜に戻す」
「昼は下がり、夜は戻る」
「潮汐と同じだ」
(漁師さんに殴られる……)
私は額を押さえた。
「そもそも……
なんで、そんな無茶を……」
ザルグは、少しだけ真面目な顔になった。
「都市は夜に電気を食う」
「照明、空調、交通、娯楽」
「人類は、暗くなると活動したがる」
「それを支えるには、
夜に“落とせる何か”が必要だ」
ザルグは、チョークで
$U = mgh$
と書いた。
「質量 × 重力 × 高さ」
「この式は、文明を裏切らない」
「だから――」
ザルグは、静かに言った。
「海を持ち上げる」
会議室が、静まり返った。
誰もが理解している。
理屈は、正しい。
ただし。
(社会が……死ぬ……)
「……止められますよね?」
私は、最後の希望を込めて聞いた。
ザルグは、即答した。
「いいや」
「昼の余剰電力が、もう行き場を失っている」
「使うか、捨てるかだ」
「物理的に正しい方を選ぶ」
(ああ……始まる……)
私は椅子に座り直し、
心の中でそっと呟いた。
(次のクレーム、
“海が減った”とかじゃ済まないな……)




