Phase 5-01:夜の停電
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
― 電気は足りているのに、光が消えた ―
私の名前はミナト。
地球人で、ムゲン・システムズのクレーム処理係だ。
最近では名刺に
「※災害対応・宇宙案件含む」
と書き足した方がいい気がしている。
その夜も、私はオフィスで残業していた。
モニターには、未処理の報告書。
件名は相変わらずだ。
・GPS誤差に関する抗議
・星が明るすぎて眠れない件
・遮光カーテン不足について
・オーロラ観光客の迷子対応
(……もう、何の会社だよ)
コーヒーを一口飲み、ため息をついた、その瞬間だった。
パッ。
音もなく、照明が落ちた。
「……え?」
モニターが暗転し、空調の音が止まる。
オフィス全体が、しんと静まり返った。
「停電……?」
私は椅子から立ち上がり、窓の方へ駆け寄った。
そして――言葉を失った。
東京が、暗い。
あれほどまでに眩しかった夜景が、
まるで誰かがスイッチを切ったみたいに、消えている。
ネオンも、ビルの輪郭も、
高速道路の光の帯すら見えない。
「……東京、全域?」
思わず呟いた。
(そんなはずない……)
テザー推進。
月面発電。
全固体電池。
電力供給は、ここ数年で過剰気味とさえ言われていたはずだ。
捨てるほど余っていると、ザルグは豪語していた。
その時。
「……愚か者め」
背後から、低い声がした。
(……いた)
振り向くと、やはりそこにザルグがいた。
暗闇の中、非常灯の赤い光に照らされて、
モニターを睨みつけている。
「ザルグさん!?」
「騒ぐな。想定内だ」
「想定内!?」
「東京が真っ暗なんですよ!?」
ザルグは私を一瞥し、モニターを指差した。
「昼間の電力供給グラフを見ろ」
非常用電源が起動し、
モニターがゆっくりと立ち上がる。
グラフは――真っ赤だった。
太陽光、月面電力、テザー供給。
昼間の発電量は、需要を大きく上回っている。
「……余りまくってますね」
「捨てているほどだ」
ザルグは冷たく言った。
「では、なぜ夜に停電する?」
私は言葉に詰まった。
「……夜だから?」
「そうだ」
ザルグは、即答した。
「お前らは、電気を生鮮食品として扱っている」
「作ったら、その場で消費する。
保存? 貯蔵?
そんな概念が文明レベルで未熟なんだ」
「でも、全固体電池がありますよ!」
「鳥取砂丘に置いた、あれ……」
「あんなもの」
ザルグは鼻で笑った。
「冷蔵庫一台で、都市全体の飢えを満たせると思うか?」
言われて、何も返せなかった。
確かに。
あれは「補助」だ。
「非常用」であって、「基盤」ではない。
ザルグは、再び窓の外を見た。
闇に沈んだ東京。
かつては不夜城と呼ばれた街。
「電気を作ることに酔い、
貯めるという地味な仕事を軽んじた結果だ」
「今のお前らに必要なのは、
発電技術じゃない」
ザルグは、低く、はっきりと言った。
「惑星規模の乾電池だ」
「……惑星規模?」
胸の奥が、ひやりとした。
(あ、この流れ……絶対にロクなことにならない)
ザルグは、暗闇の中で不敵に笑った。
「安心しろ。方法は単純だ」
「物理法則は、昔から答えを持っている」
「次は――重力を使う」
(……また、世界が揺れる)
非常灯の赤い光の下で、
私はこれから始まるであろう
“重力案件”のクレーム対応を想像し、
静かに胃を押さえた。
夜の東京は、まだ暗いままだった。




