Phase 4-05:晴れすぎた夜
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
その夜。
私は、オフィスの自席で
コーヒーを片手に、ぼんやりと窓の外を見ていた。
……明るい。
街灯は、いつも通りだ。
ネオンも、いつも通りだ。
なのに。
「……星、見えすぎじゃない?」
窓の外。
東京の夜空に、
ありえない数の星が浮かんでいた。
(え?
ここ……山奥じゃないよね?
新宿区だよね?)
「……ミナト」
背後から、低い声。
振り返ると、
ザルグが腕を組んで立っていた。
「見えているな?」
「……はい」
私は正直に答えた。
「天の川、
うっすらですけど……
見えてます」
ザルグは、
小さく鼻を鳴らした。
「当然だ」
「当然、ですか?」
「空気が仕事をやめた」
「……はい?」
ザルグは、
窓の外を指差した。
「雲がない
水蒸気が少ない
エアロゾルも減っている」
「つまり」
一拍置く。
「光を散らすものがない」
「だから、
星の光がそのまま届く」
私は、
思わず息を呑んだ。
「……すごい……
こんな星空、
東京で初めて見ました……」
「文明以前は、
毎晩こうだった」
ザルグは淡々と言った。
「人類は、
夜を暗くしすぎたあと、
明るくしすぎた」
「今は、その反動だ」
その時。
プルルルルル……
電話が鳴った。
嫌な予感しかしない。
「……はい、
ムゲン・システムズ
クレーム処理係のミナトです……」
『あの……
そちらの会社で
何かしました?』
声は、
妙に困惑している。
「どういったご用件でしょうか……?」
『星が……
明るすぎるんですけど』
「……はい?」
『寝室、
カーテン閉めてるのに
明るいんですよ』
『月明かりじゃない
街灯でもない
星の光なんです』
『子どもが
「昼みたい」って
眠れなくて……』
私は、
一瞬、言葉を失った。
「……星が、
明るすぎる……」
『はい。
あと、天文マニアが
近所に集まり始めてて……』
『望遠鏡、
路上に出して……』
『なんか、
勝手に“聖地”って
呼ばれてるみたいで……』
「……申し訳、
ございません……」
電話を切る。
私は、
ゆっくりと振り返った。
「……ザルグさん」
「来たか」
ザルグは、
まるで予想していたかのように言った。
「晴れすぎたな」
「晴れすぎる、
って概念……
初めて聞きましたよ……」
その直後。
プルルルル……
プルルルル……
電話が止まらない。
『洗濯物が乾かない!』
『乾燥しすぎて喉が痛い!』
『加湿器が売り切れてる!』
『静電気がバチバチする!』
「……あれ?」
私は、混乱した。
「湿度、
下がったんですよね?」
「下がった」
ザルグは頷く。
「だからだ」
「……え?」
「乾燥しすぎると、
逆に乾きにくい素材もある」
「繊維が硬くなり、
水分が内部に残る」
私は、
頭を抱えた。
「……そんな……
ちょうどよく、
って無いんですか……」
ザルグは、
しばらく黙って夜空を見ていた。
星は、
相変わらず美しい。
そして、
残酷なほど正確だった。
「……ミナト」
「はい」
「お前らは、
“不快”を減らしたいだけだ」
「……」
「だが、
快適を定義できていない」
私は、
その言葉に
何も返せなかった。
「蒸し暑いのは嫌
曇り空も嫌
でも乾燥は嫌
星が見えすぎるのも嫌」
ザルグは、
ゆっくりと言葉を並べる。
「それは物理の問題じゃない」
「……人間の
わがまま、ですか?」
「そうだ」
即答だった。
「人間は、
最適点を“気分”で決める」
「それは、
方程式にできない」
私は、
デスクに座り直した。
「……でも」
小さく言う。
「それでも、
人はここで生きるしか
ないんですよ」
「快適じゃなくても
文句を言いながら……」
ザルグは、
一瞬だけ私を見た。
そして。
「……面倒な種族だな」
「はい」
私は、
苦笑いした。
「本当に」
再び窓の外。
雲一つない空。
星が、
静かに瞬いている。
美しすぎる夜。
そして。
クレームが止まらない夜。
私は、
深く息を吸った。
(……次は、
何をやる気なんだろう……)
背後で、
ザルグが小さく呟いた。
「……次は
“貯める”話だな」
(あ、
それ一番ヤバいやつ……)
私は、
胃のあたりを押さえながら、
静かに絶望した。




