Phase 4-03:犯人はH₂O
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
屋上の手すりにもたれながら、
私はしばらく、黙って雲を見ていた。
さっきまで、
あれはただの「夜空の曇り」だと思っていた。
今は違う。
人間が吐き出した結果にしか見えない。
「……でも」
私は、ようやく言葉を探し出した。
「水蒸気って、
地球に元々たくさんあるじゃないですか」
「ほう」
ザルグは、少しだけ興味を示した。
「海もあるし、雲もあるし。
自然の水循環の中で見たら……
データセンター一つ分なんて、誤差じゃ……」
「その“誤差”が、問題なんだ」
ザルグは即答した。
「いいか、ミナト」
ザルグは、地面に小石を拾って、
屋上のコンクリートに円を描いた。
「これが“地球”だ」
その円の中に、
さらに小さな点を打つ。
「これが“都市”」
「……小さすぎません?」
「正確だ」
ザルグは、平然と言った。
「地球全体で見れば、
お前らの活動範囲は、この点にも満たない」
そして、その点を指で強く叩く。
「問題はな、
この一点に、熱と水蒸気を集中させていることだ」
ザルグは、スマホを取り出した。
画面には、
過去数十年分の気象データ。
都市部と郊外の比較。
「見ろ」
グラフが、明らかに歪んでいる。
「都市部だけ、
降水量のピークが異常に尖っている」
「……ゲリラ豪雨」
私が呟くと、ザルグは頷いた。
「そうだ。
水蒸気は“平均すれば問題ない”が、
偏れば、即座に牙を剥く」
「でも……」
私は、まだ納得しきれていなかった。
「それでも、
温暖化の主犯はCO₂ですよね?」
「もちろんだ」
ザルグは、あっさり認めた。
「CO₂は“毛布”だ。
地球全体をじわじわ暖める」
一拍置く。
「だが、お前らは今、
その毛布の下で何をしている?」
「……?」
「ドライヤーを全力で回している」
ザルグは、冷却塔を振り返った。
「電気を使う
→ 計算する
→ 熱が出る
→ 水で冷やす
→ 水が蒸発する
→ 湿度が上がる
→ 雲ができる
→ 雨が降る」
「……」
「これは、地球規模の話じゃない」
ザルグは、指を一本立てた。
「都市という“局所”の話だ」
私は、ようやく理解し始めていた。
「つまり……
CO₂は“原因”、
H₂Oは“直接の結果”……?」
「近い」
ザルグは、少しだけ満足そうに言った。
「正確にはこうだ」
一語ずつ、区切る。
「CO₂はトリガー。
H₂Oは弾丸」
私は、冷却塔から立ち上る霧を見た。
あれは、
見た目には無害で、
触れれば消えてしまいそうで。
でも。
「……あれ全部が、
熱を運んでるんですね」
「そうだ」
ザルグは、冷たく言った。
「水蒸気は、
最強の温室効果ガスだ」
「えっ!?」
思わず声が出た。
「え、でもそれ、
あまり聞かない話じゃ……」
「当たり前だ」
ザルグは肩をすくめた。
「水蒸気は
“結果”だからな」
「結果……?」
「CO₂が増える
→ 気温が上がる
→ 水蒸気が増える
→ さらに温室効果が強まる」
ザルグは、淡々と続ける。
「正のフィードバックだ」
私は、背筋が寒くなった。
「……じゃあ、
私たちがやってることって……」
「エコと言いながら、
水蒸気増幅装置を増設している」
容赦がなかった。
しばらく、風の音だけが聞こえた。
雲は、相変わらず低い。
「……じゃあ、
どうすればいいんですか」
私は、ようやく問いを投げた。
「コンピュータを止める?
工場を止める?
エアコンを全部切る?」
ザルグは、首を横に振った。
「不可能だ」
即答だった。
「お前らはもう、
エネルギーを使う文明になった」
「……」
「だから、選択肢は一つしかない」
ザルグは、空を見上げた。
雲の向こう。
そのさらに向こう。
「空気を使わずに、熱を捨てろ」
「……空気を使わずに?」
「そうだ」
ザルグは、静かに言った。
「水に移すな。
蒸発させるな。
大気に触れさせるな」
私の胸が、嫌な予感でいっぱいになる。
「……まさか」
ザルグは、薄く笑った。
「宇宙へ捨てる」
「……ですよね」
思わず、遠い目になった。
(やっぱり来た……)
「だが、ロケットはいらん」
ザルグは、付け加える。
「光で捨てる」
「……光?」
「次は、それを見せてやる」
ザルグは、冷却塔を背にして歩き出した。
「犯人はH₂Oだ。
だが、裁く方法はある」
私は、その背中を追いながら思った。
(また世界が、
ちょっとだけ変わる音がする……)




