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Phase 3-05:GPSは甘え

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

混乱は、拡散していた。


ニュース、SNS、社内チャット、政府系ホットライン。

ムゲン・システムズの管制室は、世界の悲鳴の集積場になっていた。


「……また来た」


私は、受話器を取る前から内容が分かってしまう自分に絶望していた。


『ミナトさん!

 地方自治体からです!

 救急車の現在地がズレてます!!』


「……何キロですか」


『最大で、六キロ』


「……軽症ですね」


『感覚が麻痺してません!?』


私は受話器を置き、天井を見上げた。


「ザルグさん」


「なんだ」


「人、死にますよ」


ザルグは一瞬だけ、こちらを見た。


「死なない」


「どうして言い切れるんですか!?」


「人類は、GPSができる前から生きてきた」


「……それは、そうですけど……!」


ザルグは腕を組んだ。


「お前たちは、ここ数十年で

 “位置”を機械に外注しすぎた」


「外注……」


「道を覚えない。

 空を見ない。

 山も川も、ただの“背景画像”だ」


ザルグはモニターを指差した。


映し出されているのは、

地図アプリが狂い、矢印だけが宙を泳ぐ画面。


「これは故障じゃない」


「依存症の禁断症状だ」


私は、反論しかけて――言葉を失った。


確かに。


私自身、

スマホがなければ、隣の区の道すら怪しい。


「……でも」


私は絞り出すように言った。


「現代社会は、GPS前提で設計されてるんです」


「物流、医療、交通、災害対応……」


「それを一気に奪うのは、乱暴すぎます!」


ザルグは、少し考えた。


「乱暴?」


「うん」


「では聞くが」


ザルグは静かに言った。


「お前たちは、GPSが壊れる可能性を想定して設計していたか?」


私は、答えられなかった。


「……してないですよね」


「してない」


ザルグは頷いた。


「だから、甘えだ」


「便利さを“前提条件”にして、

 壊れた時の責任を物理法則に押し付ける」


「それを、文明と呼ぶのか?」


管制室が、静まり返った。


モニターの向こうでは、

世界が右往左往している。


タクシーが止まり、

ドローンが着陸し、

人々がスマホを空にかざしている。


「……」


私は、ゆっくり椅子に座った。


「じゃあ、どうすればよかったんですか」


「GPSが死んでも回る社会?」


ザルグは即答した。


「冗長化だ」


「複数の測位系」


「磁気、天体、慣性、地形」


「どれか一つが死んでも、残りで生きる」


「それが、工学だ」


「……全部、コストかかりますよ」


「命より高いコストはない」


その言葉に、

私は完全に黙った。


その時、またアラートが鳴った。


〈EMERGENCY:遭難通報〉


映像が切り替わる。


夜の雪山。

ヘッドライトだけが、白い闇を照らしている。


「……スキー場?」


私は画面を見つめた。


カップルらしき二人が、

スマホを手に、途方に暮れている。


「GPSが……」


「現在地が……」


「……でも」


女性が、空を見上げた。


「ねえ、見て」


カメラが上を向く。


真紅のオーロラが、

静かに揺れていた。


「……きれい」


男性が呟く。


「すごいな……」


「遭難しかけてるのに?」


私は思わず声を漏らした。


ザルグも、画面を見ていた。


「……」


「……なんで」


ザルグのこめかみに、血管が浮かんだ。


「なんで喜べる!?」


「GPSが死んでるんだぞ!!」


「帰れないかもしれないんだぞ!!」


「危機感を持て!!」


管制室に、ザルグの怒声が響いた。


私は、少しだけ苦笑した。


「……ザルグさん」


「なんだ」


「それ、人間の仕様です」


ザルグが睨む。


「説明しろ」


「人はですね」


私はゆっくり言った。


「危機より、感情を優先する生き物なんです」


「今この瞬間が、きれいだったら」


「未来の不安を、後回しにできる」


ザルグは理解できない、という顔をした。


「非合理だ」


「ええ」


私は頷いた。


「でも、それで生き延びてきた種でもあります」


ザルグは腕を組み、天井を見た。


「……」


「理解できん」


「愛だの、感動だの」


「数式に落ちないものが、多すぎる」


私は小さく笑った。


「だから、物理屋さんは胃が痛くなるんですよ」


ザルグは、少しだけ黙り込んだ。


そして、ぽつりと言った。


「……次は」


「次は?」


「人間の感情が介在できないシステムを作る」


「GPSも、愛も、関係ないやつだ」


私は背筋が寒くなった。


(……それ、絶対また問題起こすやつだ)


モニターの中で、

オーロラは美しく揺れていた。


GPSは死んでいた。


でも――

物理は、確かに生きていた。

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