Phase 3-01:光害と原始人
※この作品は生成AIを使用して作成されたものです
――鳥取砂丘に「置き配」された黒いブロック騒動が、ようやくニュースのトップから落ちた頃。
ムゲン・システムズの会議室には、妙に静かな夜が戻ってきていた。
静かなのは、室内だけだ。
窓の外――東京は、相変わらず明るすぎた。
ビルの輪郭を縁取るLED。
壁面を走る巨大広告。
交差点に溜まるネオンサイン。
視界に入るもの全部が「自分はここにいる」と主張してくる。
夜なのに、夜の顔をしていない。
私は紙コップのコーヒーを啜りながら、ふと思った。
(……これ、目が疲れるタイプの明るさだ)
窓際に立つザルグは、黙って街を見下ろしていた。
背中からでも分かる。機嫌が悪い。
「……明るすぎる」
ぽつりと、吐き捨てるように言った。
「この星は、夜を恐れすぎている」
「まあ、人間は暗闇が苦手なんですよ。本能的に」
私が当たり障りなく返すと、ザルグは肩を小さく揺らした。笑ったのではない。呆れた揺れだ。
「せっかく届けたエネルギーが」
彼は窓の外を指差す。
「全部『光』と『音』に変換されて、熱になって散っていく。
ただのエントロピーの増大だ。ゴミを作ってるだけだ」
(まだ言う……)
――あのパチンコ屋の輝き。
ザルグが膝から崩れ落ちたあの日から、彼の中で何かが折れたまま、綺麗に固定されてしまっている。
「月で削った岩が、看板とパチンコ屋の輝きに化けるとはな」
「いや、まあ……経済が回るってことは、平和ってことで……」
「平和の名を借りた浪費だ」
ザルグは即答した。
一瞬で切り捨てるあたり、今日の彼は“議論”をする気がない。
私は諦めて話題を変えることにした。
「それで、今日なんですけど」
鞄からスマホを取り出し、通知を見せる。
「政府の宇宙開発局から連絡が来てます。会議に出てほしいって」
「宇宙開発局?」
ザルグの眉がぴくりと動いた。
「次は『次世代ロケット』の話だそうです」
言った瞬間、自分でも分かる。
これ、地雷だ。
案の定、ザルグの目が細くなった。
「……まだ『火遊び』をする気か?」
「ひ、火遊びって……」
「燃焼だ。化学反応だ。火薬だ。
あれは“爆発”の延長で空に行ってるだけだろ」
「でも現状、ロケットが一番現実的で――」
「現実的じゃない。慣れただけだ」
ザルグは振り返った。
その目が妙に冷たい。理屈で世界を切る目だ。
「重力に逆らうのに、燃料を燃やして自分の質量を増やす。
意味が分からない。マゾだ。宗教だ」
「宗教って……」
「重力信者の儀式だ」
言い切って、ザルグは机の端に置いてあった私の社員証を指で弾いた。
カン、と軽い音が鳴る。
「お前らは“最弱の力”を神様みたいに崇めてる」
最弱の力――重力。
私はため息をついた。
確かに物理的にはそうだ。
でも、最弱でも、地球に縛りつけるには十分すぎる。
「……あの」
私は念のため確認する。
「会議で、そのまま言わないでくださいね? “重力信者”とか“宗教”とか」
「言うに決まってるだろ」
即答だった。
(やっぱり……)
私は胃のあたりが、きゅっと縮むのを感じた。
「ちなみに、会議は明日の午前――」
「今日行く」
「え?」
「待ってくれないんだろ? 納期」
「いや、でも政府の会議って、準備とか調整とか――」
「お前らが勝手に遅いだけだ」
ザルグは窓の外をもう一度見た。
東京の夜景が、眩しくて、うるさくて、眩い。
「この星は、光を捨てるのが上手すぎる」
そして、私の方に振り返り、ニヤリと笑う。
「なら、次は“捨てられない仕組み”を作る」
(その発想が、たいてい事故るんだよなぁ……)
私が言葉を飲み込んだ瞬間、ザルグはコートを掴んで立ち上がった。
「行くぞ、ミナト」
「どこにですか」
「重力信者の祭壇だ」
「言い方!」
ザルグはドアノブに手をかけたまま、最後にぽつりと言った。
「2025年にもなって、まだ燃焼で空を飛ぶとか……」
少し間を置いて。
「原始人め」
私は頭を抱えながら、彼の後を追った。
――この宇宙人、また何かやらかす。
そう確信しながら。




