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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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エミリアの縁談

前回から話が飛んでいきなり学園ものになりますが、間違っておりません。

 ナルンに行ってから半年の時が過ぎた。

 光輪派の一部は逮捕され、宗派は事実上解散となった。

 原作『学院の赤い月』とは似ても似つかない未来を私は今、生きている。


 ローバー・ダリン司祭は、あのあと意識を取り戻したものの、やはり肉体が耐えきれなかったのか、ひと月ほどして亡くなった。

 マイア・タランチェ子爵令嬢に関しては、意識を取り戻したものの、誘拐された後の記憶がすっぽり抜け落ち、神力もなくなってしまった。はっきりとはわからないものの、彼女の体を乗っ取ろうとしたラナスが消滅してしまったのではないかという見解になっている。

 とはいえ、完全に無罪放免というわけにはいかないので彼女はプロティアの神殿の監視下で数年ようすを見ることになった。

 レジナルド殿下はラキア・レイベナ公爵令嬢と婚約。

 正式に皇太子になることが発表された。

 ちなみにフィーナ皇女の婚約者については白紙になり、先送りされることになった。

 マルドーネ公子は現在は謹慎中で、学院は休学中。光輪派に深くかかわっていたことが捜査で判明しており、公爵家そのものが処分されるかもしれないが、そのあたりは政治的なこともあって慎重に判断されるという話だ。

「それで、エミリアさま、お話ってなんですか?」

 お昼に改まって話があるとエミリアさまに言われて、食堂に入る。今日は二人で話をしたいというから、ロイヤルルームではなく、二人だけで席をとる。

「実は、アルキオーネさんに相談があるの」

 エミリアさまは非常に言いにくそうに話を切り出す。

「実は縁談をいくつかいただいていて……」

「あ、すみません」

 私は食べかけていたパンをさらに戻し、姿勢を正す。食べながら聞くようなお話ではなかった。

「いいの。楽にね。まだどれと決めたわけでもないの。皇子殿下が二人ともお決まりになったでしょう? だからお父さまが急にその気になったというだけなのよ」

 エミリアさまは苦笑する。

「あれだけあなたには婚約をすすめておいてなんだけれど、私自身はまったくピンと来てなくって」

「メルダナ公爵さまは、政略的なことはあまりこだわりになられないのかと思っておりました」

 普通に考えれば、エミリアさまはどちらの皇子の婚約者になっても不思議ではなく、むしろ『皇太子』の座を決めるとも言われていた人だ。メルダナ公爵は頑なに娘を皇室に入れることを拒んでいるとは聞いていたから、てっきり政略的な結婚を徹底して避けているのかと感じていた。

「ええ。政略的なことはこだわっていないの。ただ、娘が嫁ぎ遅れになるようなことは避けたいとも考えているみたいなの」

「……そんな心配は無用なのでは?」

 メルダナ公爵家は名門中の名門であるし、エミリアさまはとても美しくて優秀な人だ。望みさえすればいくらでも引く手あまたのはず。

「皇子二人の婚約が決まったことで、私たちの年代の貴族たちの婚約が急速にあちこちでまとまり始めているの。だから父も焦っているみたいね」

 エミリアさまは肩をすくめる。

「ダビー先輩やフィリップ先輩のところにも縁談が来ているのではなくて?」

「お兄さまはどうなのでしょう? 私がリオンさまに嫁ぐということで、アルマク家もそれなりに価値があるという話にはなってはいるらしいのですけれども……」

 正直な話、あれから私は椿宮に『行儀見習い』という名の居候状態でいるため、あまり家に帰っていない。ゆえにアルマク家の現状はよく知らないのだ。兄とは学院で話をしないわけではないけれど、縁談があるとかそう言う話はしないから本当のところはわからないけれど。

「エミリアさまは公爵さまのご推薦のお相手については、あまり乗り気ではないということでしょうか?」

「……そうね」

 エミリアさまは頷いた。

「相手のかたに不足があるというわけでもないわ。念のために言うけれど、リオンさまに未練があるわけではないから」

 エミリアさまは私の顔に何を見たのか、慌てて首を振る。

「私、もう別に好きな方がいるの」

「え? どなたですか?」

 私は驚いた。エミリアさまとはいつも一緒にいるのに全く心当たりがいない。

「言わないわ。だってアルキオーネさんは、すぐに顔に出てしまうから」

 くすりとエミリアさまは笑う。

 と、いうことは私も知っている人ということなのかもしれない。

「公爵さまにそう話されてはどうなのですか? それとも、公爵さまに反対されるような人なのですか?」

 メルダナ公爵家とは不釣り合いな身分の相手ということなのだろうか。

「いいえ。お父さまに言えば、たぶん喜んで手を回してくださるでしょう。ただ、そうなったら、きっとその人は断れないから……」

「……なるほど」

 天下のメルダナ公爵家からの縁談を拒否できる家柄なんて、そんなにはない。

「嫌われてはいないと思うの。でも、だからこそ、気持ちを押し付けたくなくって──でもそれでもいいとも思ってしまう。自分がどうしたいのかよくわからなくって」

 エミリアさまは俯いて、首を振る。

「エミリアさま。こんなことを申し上げては何ですけれど……まずはその方にお気持ちを告げられてはどうでしょう?」

「あれ? アルキオーネじゃないか。今日はどうしてここに?」

「お兄さま?!」

 真剣な話をしていたのに不意に後ろから声をかけられて、私は思わず兄を睨みつける。

「ダビー先輩」

 エミリアさまは兄の顔を見ると、顔を赤らめ慌てて目をそむけた。

「エミリアさま?」

 ちょっと待って。その反応はひょっとして、エミリアさまの好きな人って、兄ってこと……なの?

 もし、そうなら。

「お兄さま、少しご相談が」

 私は兄に隣に座るように言い、兄に探りを入れることにした。


まとまりが悪くてすみませんが、もう少しだけ話が続きます。

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