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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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龍鱗

 稲光に目がくらむ。雷鳴とともに大地が揺れた。

「危ない! アルキオーネ嬢」

 リオンさまは私を抱き抱えると、そのまま床に伏した。ガクンと落ちる感覚の後、大きな横揺れが続く。リオンさまは私の頭をかばうように覆いかぶさってくださっているため、周囲の様子はいまいちよくわからない。

 さすがにこの部屋には落ちてくるようなものはなさそうだけれど人の叫び声とミシミシと何かが音を立てている。

 どれくらいたっただろう。揺れが収まると、静けさが戻ってきた。

「大丈夫?」

「はい。リオンさまは?」

「私も大丈夫だ」

 リオンさまがゆっくりと身を起こし、私の視野が開けた。

 すぐ近くの床に大きな亀裂が入っている。亀裂の片側はやや隆起したのか、床が波打っていた。

 激しい揺れのせいで酔いのような感覚が残っているものの、痛みなどはない。

 起き上がろうとして、反対側をみると龍の頭がすぐそばにあった。

「わっ」

 さすがに心臓に悪い。龍の頭だけで私の身長より高くて、その口は大人でも丸呑みできそうなほどだ。龍が肉食かどうかは知らないけれど。

「でかっ……」

 当たり前といえば当たり前の感想を呟いたのは、やっぱり兄だ。神にも等しい存在である龍にも臆しているようすはない。順応性が高いというか、怖いものを知らないのか。私が龍は敵ではないと認識しているから、兄も安心しているのだろう。

『すべて終わったようだ』

 龍が呟いた。

「龍がしゃべった!」

 意思疎通は出来ないと思っていたのだろう。兄が驚きの声を上げた。

「我々も龍の言葉を聞くことが可能とは……」

 リオンさまも目を瞬かせる。

 みんなにも龍の声が聞こえるらしい。

 私にとっては二度目の龍との邂逅だけれど、他の人にとっては初めてのことだ。驚いても不思議はない。

 それにしても静かだ。

 先程まで叫んでいたダリン司祭の声もきこえない。

「リオンさま、この者たち、すでに干からびております」

 倒れていたダリン司祭の部下たちの姿を調べていたロイスナートさんが、報告する。

「見ない方がいい」

 そちらを見ようとした私はリオンさまに止められる。いつもなら好奇心が勝ってしまうのだけれど、今日のところはリオンさまの忠告に従った。

 体調もあまりよいとは言えない状況だから、ちょっとしたことで吐いたりしてしまうかもしれない。

「何が起こったのでしょう?」

 私はゆっくりと身を起こしつつ龍にたずねた。

『その者たちは魂を抜かれ、彼奴の力で動いていた木偶人形にすぎない』

「魂を抜く?」

「『隷人』だ。魔術王国時代に、罪人の魂を抜き、奴隷として使うという刑罰があったのは、赤い月の研究室から持ち帰った本に書いてあった」

 リオンさまが口をはさむ。

「沼人より高度な作業ができること、ある程度の判断能力があることから、定期的に魔力を補ってやれば、見た目は人と変わらないということでかなり重宝されたらしいが、流石に人道的に許されぬということで、禁止になったらしいが……」

「何て恐ろしい……」

 魔術王国は滅ぼされるべくして滅びたのかもしれない。

 ナスランが王国の遺跡を封印して回ったのは、そうした背景があったからなのだろう。

「ダリン司祭はまだ息がある。生きているのが不思議な状態だけれど……」

 兄がダリン司祭のいた陣の中に入り、そこに倒れている人物の手を取る。

『我と交信中に強引にヌシらによって切断されたゆえ、彼奴は雷の衝撃を受けた』

 どうやら私たちの撃った雷が、龍を捕らえていた陣を破壊したことで、その中にいたダリン司祭にもダメージがはいったということらしい。

『もともと人としての器は壊れる寸前だ。意識が戻るかは運しだいだろう』

 龍の大きすぎる力をその身に宿すということは、非常に危険な行為らしい。一時的には確かに力を得ることはできるけれど、肉体が受け止めきれずに霧散するのがオチなのだそうだ。龍の巫女や寵児でも、龍の力を際限なく受け止められるわけではない。

「それでわざわざ人工的に龍を作ったり、石をつくったりするのね」

 龍の力を少しでも利用するために、人の体ではないものに力をためようとしてきたのだろう。

「ねえ、司祭の命をあなたは救えますか?」

 ダリン司祭の全身は黒く焦げ、顔もただれている。信者に人気のあった整った顔は既に見る影もない。

『救いたいのか?』

 龍は少し驚いたようだった。

「正直なところ、助けたいという感情はありません。けれど、彼が何をやってきて何をやろうとしてきたのか知るためには、生かしてその口から聞くしかありません。それにいかに悪党とはいえ、この状態の人間を放置するのは寝覚めが悪いです」

『ほほう』

 龍は笑ったようだった。

『人の子の考えはいつも複雑で面白い。命をしばしつなぐことはできるが、壊れた器は修復できぬ。それでよければ、我の鱗を砕いて飲ませるがいい』

 ひらりと、黒いものが光を放って、私の手のひらに舞い降りた。


水曜日は更新お休みしてすみませんでした。


寒暖差の激しい季節になってまいりましたので皆さまもお身体ご自愛ください



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