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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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決意

   私が見つかったと聞いて、リオンさまはすぐに飛び出して来たらしい。ほどなくして、ロイスナートさんもやってきた。リオンさまの気持ちは嬉しいけれど、護衛を置き去りにしてくるのは、いろいろよくない。何事もなくてよかった。

 私がさらわれたとき、リオンさまたちは落ちた魔道灯の調査をしていたらしい。現場の検証、招待客の聞き取り捜査などをしていて、異変に気付くのが遅れたのだ。

「遺跡は全て調査したと思っていたが、繋がっていない部分の通路が他にもあってそれを使われた。侵入も逃走もそこを使ったようだ」

 魔道灯を落とした犯人たちは、帰りがけの駄賃として私を攫った形になったらしい。

「エミリアさまは?」

「少しケガをしたが、無事だ」

「……よかった」

 奴らが必要だったのは私だけだけれど、だからといって他人に害を与えないという保証はどこにもなかった。禁忌の術の為に何人もの人を犠牲にしたやつらなのだ。何をするかわからない。

「襲撃を聞き、駆け付けた時には、ローバー・ダリンもマイア・タランチェも既に姿が消えていた。奴らが使った『通路』は発見できたのだが、出入り口をふさがれていて、追跡に時間がかかってしまった」

「マルドーネ公子は控室で気絶していたところを確保したのですが、彼は何も知りませんでした」

 ロイスナートさんが横から解説をする。

 取り調べに当たり、公爵家のマルドーネ家にはそれなりの『配慮』があった。ローバー・ダリン、マイア・タランチェはそれに便乗する形でマルドーネ家に与えられた控室に入り、マルドーネ公爵と公子を気絶させて会場を抜け出したらしい。

「通路の出口は、大神殿だった。そこですぐさま馬車に乗りかえ、ラミネの森の方角に逃げたところまではわかったのだけれど」

 リオンさまは首を振る。

「光輪派の神殿を片っ端からあたったのだけれど、どこにもいなかった。まさかラミネの森に潜んでいるとは……」

「おそらくはダルケーン・シーマ司祭の屋敷だったところにいました」

 私は自分のいた場所について説明する。

「シーマ司祭というと、十年前に失踪したという?」

 リオンさまが目を見開く。

「はい。そのあたり、今、あの屋敷が誰の持ち物なのかは存じません。ですが、シーマ家が所有していたものに間違いないかと」

 私はシーマ家の先祖がナスランであったこと、シーマ司祭はおそらく龍の巫覡であったことを話す。

「気を失っている間、龍に会いました。そして、龍にシーマ司祭の行方をたずねました」

「龍に?」

「はい。シーマ司祭は、ダリン司祭とラナスという女性に殺されました」

 思い出しただけで、身の毛がよだつ。血まみれの光景。

「龍石を手に入れるためだったようです」

 私は目を閉じて大きく息を吐く。ただ、目を閉じれば余計にあの光景が脳裏によみがえるようだ。

「彼らはおそらく遺跡の移動の陣で、禁忌の術を使ったのだと思います。そちらは最後まで見届けることはできませんでしたけれど……」

 確定ではないにせよ、それがもたらしたものの『結果』の光景は見た。彼らが何をしようとしていたのか、正確にはわからないが、魔術王国の王が不老長寿を求めて行った行為ではないだろうか。

 恐ろしいと同時に、怒りを感じる。自分の命を長らえるために、他人の命を奪うなんて。

「はっきりはわかりませんけれど、ダリン司祭はナルンに行くと言っていました」

「ナルン?」

 リオンさまは額に皺を寄せた。

「国境近くの村だな。特にこれという産業もない山岳地だ」

「殿下。捕らえた御者によるとナルンにある山奥の遺跡に向かう予定だったと自白しております」

 脇から兵が口を添える。

「司祭は魔術王国の遺産を手に入れるのだと言っていました」

 マイラに向かって、司祭は確かそんなことを言っていた。

「魔術王国の遺産?」

「はい。詳しいことはわかりませんけれど。ラナスという女性の話では、彼らの先祖は本国に帰ったナスランだったようです。それから……ダリン司祭はマイアのことをラナスと呼んでいました。マイアは否定しているようでしたが……」

「つまり、禁忌の術を使い、そのラナスという女は、マイアになったということか?」

 リオンさまは腕を組む。

「おそらくは。そして、その術は不完全だったのかもしれません。その理由についてはわかりません」

 龍が見せてくれた光景から考えて、ラナスという女とダリン司祭の力関係はラナスの方が上だった。

「殿下。私をナルンに連れて行ってください」

「ダメだ」

 リオンさまは首を振る。

「君は狙われているのだぞ? それに奴らが龍石で何かをしでかそうとしているのが分かっているのに、君がわざわざそこに行く必要はない」

「それはそうですが、彼らは少なくともシーマ司祭の龍石を持っていました。大きな術は使えないまでも、遺跡に潜むことは可能かもしれませんし、遺跡の出入り口が一つとは限らない。待っているだけでは、安心できません。それに……私は彼らを許せないのです。お願いします」

 日記でしか知らないけれど、シーマ司祭は純粋な人だったと思う。

 ナスランであることを誇りにし、研究を続けた。あくまでも人々の幸せを願ってのことだった。ダリン司祭のこともとてもかわいがっていた。少なくともあんな風に殺されていい人ではない。

 だって不条理すぎる。この怒りは私の前世の最後があまりにも不条理だったせいなのかもしれない。

「そんな目をされたら……断りにくいな」

 リオンさまは困ったように目を伏せた。

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