舞踏会 4
短め。すみません。
「パートナーというより、保護者のようだな」
ダリン司祭が衆目の中、マイアをしかりつけているのを見て、リオンさまは呟く。
「本当に自由な方ですのね」
彼女も一応は貴族の令嬢であるはずだが、自由奔放すぎる。
「ウーム。あれを自由と呼んでよいものかな……」
リオンさまは首を傾げた。
「私は彼女はもっと狡猾な人だと思っていましたが……」
違和感を覚えた。
私を陥れようとしたとき、得体のしれない怖さがあった。
愛らしさを武器に思い通りに人を操ろうとする、そんな人間に見えた。
「今は違うと?」
「この場で目立つ行動をとって、得することってないと思うのですよ。ダリン司祭だって、そのはずです」
彼女はプロティア教の巫女、いわば看板娘だ。
こんなたくさんの人間がいるところで、奔放な姿を見せるのはあまり賢くはない。
「決闘の時だって、勝負が終わったら姿を消してしまうくらいの計算高さがありました。公子と一緒なのは真に愛情なのかもしれませんけれど」
少なくとも決闘のリボンを用意するくらいには、マルドーネ公子とマイラは親しい。マルドーネ公爵としては頭が痛いところだろうが。
「何かから注意を背けようとしているとか……」
さすがに考えすぎかもしれない。
「……待って」
リオンさまの表情が険しくなった。
「アルキオーネ嬢。この辺一帯に水の護りを展開できる?」
「わかりました」
リオンさまが戯れにそんなことを言うはずはないので、私は頷き、水の護りを展開し始めた。
ちなみに会場では攻撃の術は唱えても使えないのだが、水の護りは攻撃ではないので、使用可能だ。しかも、意識していない限り、使用していることにも気づかれにくい。
「アルキオーネ嬢、どうなさいました?」
素人には気づかれにくくても、さすがにザナン伯爵は気づいたらしく、こちらに走り寄ってきた。
「伯爵。天井に何かある。それほど大きいものではないが、炎石のような気がする。たぶん魔道灯のすぐ上だ」
心眼を凝らしていたリオンさまが呟く。
炎石とは、言ってみれば、ちょっとした発火装置みたいなものだ。爆弾というほど攻撃力が高いものではないけれど、発火すれば、当然天井が燃えるだろうし、魔道灯を支えている場所だとすれば、それも落下するかもしれない。
「わかりました。殿下は発火を止めて下さい。私は撤去するように人を手配いたします」
ザナン伯爵が頷いた時だった。
カチリ。
何かの音がした。
みしりと天井が音を立て、炎がちらりと姿を見せる。
「何?」
悲鳴が巻き起こる。
「散水!」
上空に向け、リオンさまの魔術が飛ぶ。火はすぐに消し止められたけれど。
天井に吊り下げられた魔道灯が大きく揺れた。
「ダメだ。魔道灯を支えているロープが切れそうだ」
消火に尽力していたリオンさまの表情が険しくなる。
「受け止めてみます。合図をしたら、いっそ切ってください」
漠然と下に張っていた水の護りの術を変形させ、魔道灯を包み込むように展開させた。
「今です」
「切断」
私の合図に合わせ、リオンさまが魔道灯を吊り下げていたロープを切り落とした。
同じことを土の術でも可能かもしれないけれど、水は、形を自由に変えられる。その利点は最大限に利用するべきだ。
護りで使用する水のエーテルの流れを利用し、人のいない方へと落下を調節する。簡単な作業ではあるけれど、思った以上に大変だった。
天井にある魔道灯は、シャンデリアのように凝っている。一つそれが落ちたところですぐに暗くなるわけではないけれど、どうしても薄暗くなっていく中、慎重に魔道灯を床に着地させる。
「アルキオーネ嬢!」
リオンさまが私を抱き上げてくれたのを最後に私は意識を失った。
とりあえず、シャンデリアを落としてみた。(定番)




