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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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舞踏会 2

 可愛らしいフィーナ皇女を二人の皇子がエスコートする形で入場してきた。

 フィーナ皇女は淡い水色のドレス。レジナルド殿下は白のフロックコート。リオンさまは黒のフロックコートだ。

 美形三兄妹だけあって、非常に絵になる。

 レジナルド殿下はマイア・タランチェ子爵令嬢をエスコートしようかなどと言ってはいたけれど、さすがに昨日の今日ということで実行には移さなかったようだ。

 ちなみにマイアは、ローバー・ダリン司祭と入場したらしい。マルドーネ公子は従妹と入場していた。エミリアさま情報によれば、マルドーネ公爵が、マイアをパートナーとすることを禁止したらしい。公爵としては、これ以上スーヴェル皇后陛下の機嫌を損ねるような真似をさせたくないのだろう。ただ、その件については既に手遅れな気がする。

 もちろん、フィーナ皇女が大人になった時、マルドーネ公子のことが好きだというのであれば、可能性はなくもないけれど、周囲にあれだけ他の女性に入れあげているのを見られて、『王配』はないだろう。皇女が降嫁するならワンチャンありかもしれないけれど。

「リオンさま、アルキオーネさんを意識しての『黒』衣装ですのね」

 くすりと、エミリアさまが笑う。

「単純に、レジナルド殿下との対比なのでは?」

「アルキオーネさんたら、男心をわかっていらっしゃらないのね」

「そんな……」

 黒は男性の儀礼用の衣装としてはスタンダードな色なので、別に私に合わせたとかではない気もしなくもないのだけれど。

 私と淡い水色のドレスで、リオンさまの色と呼べるものは紅い髪飾りとルビーのイヤリングだけ。何しろ、ドレスは半年前に発注しているから、色合わせなんて考えてもみなかったのだ。アクセサリーを紅にしたのは、侍女が気をきかせてくれたのだろう。ごめんなさい。私は全く気にしていなかった。

「色を合わせるとか、よくわからないのですよね……」

 思わず呟く。

 服はまず、自分に似合う色や形を合わせるものだと思う。もちろん相手との調和も必要だけれど。

 なまじ前世日本人だったせいで、黒髪黒目が大多数の世の中だったせいもあるのかも。

 今世では、地球上ではありえなかったカラフルなカラーを持つ人が多いから、相手のカラーのおしゃれというのが成立するのだろう。

 とはいえ、私は前世と同じ、黒髪黒目。

 リオンさまの黒服は、果たして私を意識してのものなのか、それともレジナルド殿下の白との対比なのかは聞いてみないとわからない。聞く勇気はないけれど。

 三人の殿下が一段高い檀上に上ると、今度は二人の側妃の名が呼ばれた。

 ルシアーナ妃、バーニア妃がにこやかに二人で入場する。

 リオンさまに聞いたところによれば、妃同士の仲は世間で思われているよりはずっと穏やかな関係らしい。

 皇后であるスーヴェルさまのさっぱりしたご気性もあるだろうし、陛下がまだご健康で継承権争いがそこまで顕著でないからだろう。

 あと、皇子二人があまり帝位に興味がなさそうという点も大きい。

 とはいえ、私が知らないだけで、政治的な抗争は水面下で行われている可能性もあるだろう。

 私とリオンさまの婚約が発表されたら、レジナルド殿下の周囲も今以上に慌ただしくなるかもしれない。

 そしてファンファーレが鳴り響き、陛下とスーヴェル皇后陛下が二人で入場をしてきた。

 スーヴェル皇后陛下は宝石をちりばめた豪奢なドレス。陛下は見事な金糸で獅子が刺繍されたマントをまとっている。

「皆のもの。今日は儂の誕生会に集まってくれて感謝する」

 陛下はそう言ってから、リオンさまに目配せした。

 あたりがしんと静まり返る。

「さて、今日はまず、ひとつめでたき知らせがある」

 リオンさまはゆっくりと檀上から降りて、私の方へと歩いてきた。

「アルキオーネさん」

 エミリアさまに背を押され、私はリオンさまの方へと歩き始める。

 周囲の視線が一気に自分の方を見ているのが分かって、汗がだらだら出そうだ。

「手を」

 リオンさまに促され、手を伸ばすと、そのままその手に軽く唇を落とされた。

 小さな歓声がおきて、私は羞恥心で頬が熱くなってきたけれど、リオンさまは涼しい顔で私の手を取って、壇上へとエスコートをする。

「見ての通り、息子であるリオンが、この度、アルキオーネ・アルマク嬢と婚約することが決まった」

 陛下の言葉とともに、ワーッという声が上がった。

「婚約式は一月後を予定している。結婚の日取りについてはまだ未定ではあるが、今日、この瞬間からアルキオーネ嬢は儂の義理の娘として扱うように」

 陛下の義理の娘という言葉の重さに思わず緊張しながら、私は周りを見回す。不意に、ぞくりとしたものを感じて、そちらに目をやった。

 大多数は祝福と好奇の視線だったけれど──。

 そこにあったのは、ローバー・ダリン司祭の冷ややかな目であった。


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