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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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移動の陣

 それから移動の陣で発見した禁呪の話になった。

 教え長であるザナン伯爵は、移動の陣についての話について興味を隠せないようだ。

「ようするに、魔術王国時代に、移動の術は『禁止』になり、すべての陣は無効化するように法ができて、ナスランなる組織まで作られた、というわけですね。理由は、少し描きなおすことで、禁断の術に変わるからということですか」

「人の魂を移動させる……という話だそうで」

 リオンさまがガデリ司祭に聞いたことを説明する。

「その術のせいで、革命がおこったというのは嘘ではないでしょう。事実、私たちは、おびただしい数の死体を見ました。おそらく、贄として使われた者たちでしょう」

「……あまり気は進みませんが、そちらも調査が必要ですなあ」

 ザナン伯爵がため息をつく。

「魔素はあちこちで回収してきましたが、移動の陣に関しましては、タランチェ嬢のものとよく似ておりました。おそらくですが、赤い月とは別人でしょう」

「赤い月は、魔術王国時代の人ですものね」

 もともとの移動の陣を描いたのは、赤い月だとは思うけれど。

「たぶんだけれど、龍石が発動に必要だということで、普通の魔術陣とは違うって術者本人の魔素は残っていないのだろう。ちなみにアルキオーネ嬢の魔素をみせてもらったけれど、普通の人より純度が高い」

「そう……なのですかね?」

 魔力の量とかそういうのだけではなく、質も違うということらしい。

「龍石は、魔力の結晶で純度の高さが必要なのだと思う。つまり魔術王国時代の技術が残っていれば、龍の病の治療も容易になるということだと思う」

 リオンさまは苦笑した。

「ゴルとかで代用は可能ですかね?」

「どうでしょうねえ。実験はしてみますが、そもそもそこまで徹底して消した術を復活させて良いものか悩みますな」

 ザナン伯爵は難しい顔をする。

「しかし、伯爵。問題は、何者かがその禁忌の術を使ったということだと思うのだが」

 レジナルド殿下が口を開いた。

「人の命を犠牲にして魂を移動させる術とはいったい何だろうか」

 陛下の表情は険しい。

「おそらくですが、若返りの術ではないでしょうか」

 ガデリ司祭がコホンと咳払いをする。

「詳細は記されていないけれど、圧倒的な力をもつ為政者が次に望むのは、不老不死ではないかと」

「儂は、別にそんなことはないぞ」

 陛下がムッとしたように否定した。

「それは陛下ができたお方だからでございましょう」

 すかさず、ガデリ司祭はにこりと笑う。

「魂の移動……つまり、誰かと魂を取り替えるとか、もしくは他人の体を乗っ取るとかでしょうか?」

 なんか前世でそんなお話を読んだことがある気がする。

 脳移植みたいな感じかも。

「もしそんなことができるとしたら、永遠の命に等しいかも」

 リオンさまは眉間にしわを寄せた。

「ただ、そのために他の命を犠牲にしたりすれば、そのことで革命が起きてもおかしくない」

「そうですなあ」

 ガデリ司祭は頷く。

「移動の陣の無効化についての徹底ぶりからみて、おそらくそれくらい非人道的行為を行ったと考えられましょう」

「待って下さい。もし仮に本当に魂の移動の術が行われたとしたら、マイアさんが、その術と関係しているということになりませんか?」

 特徴的なマイアの魔素と酷似した魔素。時期的にまだマイアはプロティアの巫女の力に目覚めてはいないはずなのに。

「誘拐の時期と儀式の時期が一致するなら、その可能性はあるだろうなあ」

 兄が呟く。

「あの陣や遺体を調べてみるしかない」

 リオンさまはため息をついた。

「少なくともその術を使うのに、かなりの人間が動いているのは間違いないだろう。贄になる人間を集めるのも一人でやるのはかなりたいへんだろうし」

「確かに。組織的なものを感じるな」

 それは遺跡のことをしっていたナスランなのだろうか。

「レジナルド、マイア・タランチェ嬢の誘拐事件について、もう一度洗いなおせ。それから、念のため、彼女の周辺も調べておくべきだ。リオンは、ザナン伯爵とガデリ司祭とともにその遺跡の調査を。それから、アルキオーネ嬢、悪いが、リオンに協力を頼む」

「陛下、彼女は……」

 リオンさまが陛下を制止しようとするのを私は首を振って止める。

「大丈夫です。龍石が見つからない以上、私が行くしかないのですから」

 またあの移動の陣のところに行くのは怖い。怖いけれど、そんなことを言っていられない。

「私、たぶん好奇心の方が勝るタイプですから」

 恐怖よりも、何が起こっているか知りたいと思う自分がいて。

「きっとそんな人間だから、龍はこの力を与えたのだと思います」

 龍の病にかかる人はたくさんいるけれど。巫女と呼ばれる力を得る人間は数少ない。

「案外そう言うものかもしれませんなあ」

 ガデリ司祭が納得としたように頷いた。

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