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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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遺跡 6

 昼食をとったあと、めぼしそうな本と日記を回収し、その部屋を出ることにした。

 卵についてはすごく気になったけれど、それこそ人工の龍とやらが孵ってしまってもどうしたらいいのかわからないので、とりあえず保留。

 ちなみに入り口は、私たちが戻ってくるとしばらくしてゆっくりと閉まりはじめた。時間なのか、中に人がいなくなったからなのかはわからない。台座に浮かんでいた文字も消え、まるで何事もなかったかのようだ。

「ここに触ったら、開いたのですけれど」

「何か書いてあるな」

 兄が煤を丁寧に払っていくと、赤い月のマークが描かれていた。

「俺が触ってもなんともないな」

 兄がマークに触れても何の反応もない。

「もう一度、触ってみます」

 赤い月に指を触れると、また階段が現れた。

「どうやら、アルキオーネ嬢だと現れるようだ……なるほど」

 ポンと、リオンさまが手を打った。

「扉が開いた意味が分かった。アルキオーネ嬢だからだ」

「どういうことでしょうか?」

「彼奴は『龍の巫女』を捜していた。つまりあの研究室へは龍と縁の深いものでないと行けない仕組みなのだろう」

 私が触れたから、隠れていた扉が開いたということだろうか。

 にわかには信じがたいけれど、事実、私が触れた時だけ反応するということは、そういうことなのかもしれない。

「ということは、ナスランは、人工の龍の研究をいまだに摘発しようとしているのか?」

「どうだろう。そうだとしたら凄い使命感だが──」

 リオンさまはゆっくりと首を振る。

「その可能性もないわけではないが、そのためにやっていたことがあまりにも非道すぎる。どちらかというと、その研究を手に入れようとしていると考えたほうがいいのかもしれない」

「研究を手に入れる……」

 思うに原作のリオンさまの実験室は、どう考えてもあの部屋だ。はっきりと確証はないけれど、少なくとも原作では、リオンさまは『赤い月』なる人物の志をついで、実験をつづけた……って感じなのかな。闇組織みたいになっちゃうのは、どうしてなのか。日記を見る限り『赤い月』は魔術王国に隠れて研究をしていたのだから闇組織といえばそうなのだけれど、魔術王国は既になく、たとえリオンさまが『人工龍』なるものの研究を引き継いだとしても、裁くべき法は既にどこにもない。もっとも法律に違反していないからといって、『禁忌』と言われるようなものに手を出すのはヤバイとは思うけれど。

 なんにしても、もう少し事実関係が明らかにならないと、何もわからない。

 あの研究室に置かれていた本を読み解くことで、少しでも何かわかればいいのだけれど。

「ちなみに研究所の上の施設は、一体何だったのでしょう」

 考えていてもらちが明かないので、再び湖沿いの道を歩きながら、跡形もなくなった建造物について考える。

「今となってはわからないけれど、いざという時のフェイクの施設があったことも考えられるかな」

 赤い月は違法な研究をしていたわけで、これだけの施設を地下に作ったのは、魔術王国の目を逃れるためだった。だとすれば、一番大切な研究室を隠すために、別のものを用意していた可能性もある。

「それにしてもこれだけの施設を作った『赤い月』には、相当な財力があったのだな」

「違法な研究はともかく、魔術王国の政権争いにも絡んでいた人物だった可能性もありますねえ」

 兄とロイスナートさんの言う通りだ。

「私たちが追っているナスランは『赤い月』ではなく、『ナスラン』が残したものから、この遺跡を知ったのかもしれませんね」

 名前が一緒だから同じものとは限らない。そもそも、同じ人間のはずはないのだから。

「これだけ帝都の地下に張り巡らされているわけだから、国家に隠れて何かをするには、単純に『通路』として考えても使い勝手はよいだろう」

 医務庁の襲撃は、この遺跡を『進入路』として使用された。現在はその出入り口は完全封鎖したが、椿宮をはじめ思ってもみないところに地上との出入口が作られている。

「ただ、調査をしたところだけを見ると、ナスランは『通路』として使うくらいはしていたようだけれど、『生活拠点』として使っていたというような場所は確認されていない」

 マイアと酷似した魔素が見つかった辺りは、マーケー地区に近く、比較的人の出入りがあったことは確認されている。シュリーマン神官長の証言通り、神殿関係者だったものと思われる遺品は、その周辺で発見されている。

 医務庁を襲撃した者たちは、ナスランの指示で通路を使用したようだが聞き取り調査によれば、遺跡に入ったのはその時だけのようだ。

「まあ、少なくとも調査を始めてから三年たつけれど、誰かが迷い込んでくるなんてこともなかった。ナスランは一旦、この遺跡からは手を引いて、身を隠したのだろうな」

「諦めたのでしょうか?」

「さあ。そもそも何がしたかったのかわからないから」

 リオンさまの表情は険しくなる。

「通路として使っていただけなら、秘密でも何でもなくなった時点で、価値はなくなっただろう。そうではなく、遺跡の何かを必要としているのであれば、再び遺跡に侵入しようとするかもしれない」

 もちろん、遺跡の出入り口は封鎖しているが、まだ知らない出入口が存在している可能性はゼロではない。引き続き監視は必要だ。

「もし、ナスランが何かを捜しているとすれば、アルキオーネ嬢、君が狙われる可能性はやはり高い。この遺跡では君という鍵が必要みたいだから」

 リオンさまは大きくため息をついた。

 





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