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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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遺跡 3

 人が三人通れるほどの通路が奥に向かって伸びている。

 前に落ちた時は、痛みもあってよくわからなかったけれど、床も壁も天井も完全に人工物だ。

「たぶん、ここから上に上がるための仕組みもあるのだろうけれど、発見できていない」

「ただ、降りるにしても高いですものね。何らかの方法があってもおかしくないと思います」

 穴のある場所は天井よりも高い位置だ。

 穴をとじてしまうと、天井の高さは均一になってしまい、どこが出入口かわからなくなってしまう仕組みらしい。

「この遺跡は、帝国創立以前のものと聞いていますが、技術力がすごいですね」

 今よりも優れた建築技術のように見える。

「龍使いというより、それより前に滅びた魔術王国時代のものと私は考えている」

 歩き始めながら、リオンさまは話す。

 魔術王国は、かつてこの世界全土を支配していたと言われる巨大な王国だ。首都は、現在のリトラス王国のあたりにあったとされ、リトラスにはかなりの数の遺跡が発見されている。ちなみに王国が滅びた原因はよくわかっていない。魔術の暴走がおこったとか、病が流行したからなどともいわれている。

「帝国以前にこの地を支配していたと言われる龍使いだけれど、魔術王国の生き残りだったのではないかな」

「でも魔術王国の首都はここから遠いよな?」

「遠いからこそさ」

 兄の疑念にリオンさまは答える。

「リトラスのように遺跡は多くないけれど、帝国内にも、魔術王国時代の遺跡は存在する。それに、それこそリトラスより、こちらの方が魔術の技術が進んでいるのは、単純にこちらの方がより多く人材が残っていたと考えるべきかなと思っている」

「そう考えると、建国神話も実際には違う部分があるでしょうね」

 単純に龍を使役しようとしていた龍使いを倒したとかいう話ではなさそうだ。

「この遺跡にはありとあらゆるところに龍の絵や、モニュメントがある。話によれば、リトラス王国の遺跡にもかなり多いそうだ。魔術王国と龍はかなり深い関係にあったのだろうな」

 龍と魔術はもともとかかわりが深い。

 黒龍の加護を受けた私は水に関する魔術の威力が増大した。そのことからも龍の力を得れば、強大な力を手に入れられることは簡単に想像できる。

「ほら、あの角を曲がると、『龍の湖』だ」

 リオンさまが指をさした。

「龍の湖?」

「地底湖ですよ」

 ロイスナートさんが口を開く。

 原作でも地底に沼があると書かれていた。そこに沼人が住んでいて、侵入者を喰らい、地下遺跡を守っていたはず。沼と湖、呼称の違いはあるけれど。

 沼人はリオンさまが飼っていた人工生物とかいう設定だった。

 実際に私が遭遇した沼人は、『ナスラン』の命令で動いていたのか、それとも単純に地下遺跡に侵入した人間を狩っていたのかはまだ分かっていない。

「沼人がいたのはそこなのですか?」

「うーん。ここに()いたという方が正しいかな」

 リオンさまは苦笑する。

「湖の他に、人工池があるのだが。そこの方が数は多かった」

 つまり一か所でなく、何か所にも生息? していたってことらしい。

「沼人って、勝手には増えないのですよね?」

「おそらくは」

 人工生物ではあったけれど、物を食べ、消化し、排せつするという機能は持っていたから、『生きていた』のは間違いない。ただ、生殖はおそらく不可能だったと思われる。

「彼らの寿命って何年くらいだったのでしょう?」

「わからない。だが、ここには食料となるものがほとんどないから、あれだけの数がずっとここに潜んで住んでいたとは考えづらいな。ただ、彼奴らの生態も、どの程度の栄養素が必要だったのかもわからないが」

 リオンさまが答える。

 角を曲がると、随分と開けた場所に出た。

 ランタンの明りだとそれほど遠くまではみえないが、ここの天井は自然の岩のように見える。広い水面が明りに照らし出され、その湖の湖岸沿いに道はさらに奥へと延びていた。

「大きな湖ですね」

「中ほどに島があって、もう少し行ったところに橋がある。そこに遺物があるのだが、何らかの事故があったのか破壊されていて、何のための施設かわからない」

「橋ってあれですか?」

 薄暗い水面の向こうにぼんやりと影が見えた。

「アルキオーネ」

 兄が低い声で私の名を呼んだ。

「目的地はまだ遠いぞ?」

「ええと。ですがお兄さま。何がとかどこともわからない記憶を掘り起こそうとしているので、一応は見ておかなければいけないと思うのですけれど」

 もちろん一番の目的はマイアに似た魔素が発見された場所ではあるのだけれど、私としては少しでも原作の記憶と似た場所を探したい。

「ダビー、構わない。そうなる予感はしていたから」

 リオンさまは少しも驚いても怒ってもいない。私が見たいと言い出すことを最初から知っていたかのようだ。

「ただ、アルキオーネ嬢。島に渡る橋は足元が悪いのと、何度も安全を確認したとはいえ、沼人がそれなりに生息していた場所だ。それは忘れないで欲しい」

「わかりました」

 それにしても、私はそんなに無謀に見えるのだろうか。また念を押されてしまった。

「この調子だと、マジで遺跡で野宿になりそうだ」

 ふうっと兄がため息をつく。

「好奇心のままに動いていると、それこそ何か月もここにいることになるから、ほどほどにしてくれよ」

「それはわかっています」

 今回は学術的な調査とかではなく、あくまでも前世の記憶による『原作』と『現実』の相違をさぐるための調査だ。

 原作との相違点が分かれば、ひょっとしたら他のこともわかるかもという期待もある。ひょっとしたら、何もかも違っていて、私の持っている知識では何もわからないかもしれないけれど。

「光玉」

 リオンさまが辺りをこうこうと照らす光玉を打ち上げると目の前に、石で作られた橋が湖の奥へとのびている。

「足元が悪いから、ランタンの明りでは危ない」

 石造りの橋はアーチ型。足元が悪いと言っていたのは、橋そのものではなく橋の上に様々なものが散らばっているから、という意味だった。

「おそらくは島の施設がふっとんだ残骸だと思う。めぼしいものは回収しているけれど、とりあえずは触れないで。このあたりはまだ未調査のものが多いから」

「はい」

 建築材と思われるものは、どれも黒く焼けたり溶けたりしている。

「塔の調査によると、破壊されたのは、そんなに昔の話ではないと思われるそうだ」

「でもこれだけの破壊があったら、地上でも気づくのでは?」

「うん。そうだね。ただ、このあたりは、ラミネの森だと思われる。あまり人が住んでいないから。とりあえず、ここ数年の記録にそれっぽいものはなかった」

 たとえ人が住んでいても、地面の下で何か起きていたことに気づけるかはわからない。地震だと思うことはあるかもだけれど。

 橋を何とか渡り終えると、龍のモニュメントが置かれていた。牛ほどの大きさで黒曜石でつくられているようだ。島の施設のすぐ隣にあったようで、建材と思われるものがその龍にのしかかっている。が、頑丈なのか特に歪んだり破損はしていない。台座はかなり焼け焦げていて煤が降り積もっている。

「黒龍、ですかね」

 私は屈んで台座についた煤に触れた。

 指先になにか文字のようなものが刻まれた感触を感じたその時、ガクンと地面が揺れる。

「な、何?」

「アルキオーネ嬢!」

 リオンさまが私の体を支えて、モニュメントから引き離した。

「なんだ、これ」

 龍のモニュメントの目の前の地面がスライドして、さらに地下へと延びる階段が現れた。

「前に調査に来たときはなかったぞ?」

 兄が驚きの声を上げる。

「お前、何かしたのか?」

「私は触っただけです!」

 見ると台座には文字が浮かんでいる。古代文字だ。

「封印の間って書いてあるな」

 リオンさまは文字を読み解く。

「なんのことだろう?」

「とりあえず、行ってみましょう」

 私たちは入り口が閉まらないように細工をしてから、中に入ることにした。

 



すみませんが、毎日更新はここまでとなります。


今後は、月、水、金の週3回更新に切り替えますのでよろしくお願いいたします。

次回更新は7/7です。


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