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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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53/119

遺跡 2

 休みの日はあっという間にやってきた。

 私も今日は皮鎧を身に着けている。ただし剣は短剣のみ。剣術に関しては才能がないので、持ったところで無駄なので重いからやめろとは兄のアドバイスだ。

 遺跡に入るのは、リオンさま、私と兄、そして護衛騎士のロイスナートさんの四人だけ。何しろ陛下の誕生日の祝典が近いので、本来はとても忙しい時期なのだ。

 私が遺跡に入るのは、骨折をした時以来だけれど、兄はリオンさまと一緒に何度か入っている。施設っぽいものはそれほどないけれど、通路はものすごく張り巡らされているそうだ。わりと素直な道なので、迷うことはそんなにないらしいけれど。

 原作でレジナルド殿下は、遺跡の存在を知らず、マイアを捜す段階で初めて知った的な話だった。現実は遺跡探索はリオンさまが中心に行ってはいるものの、レジナルド殿下が知らないなんてことはない。地図は公にはなっていないけれど、国家がきちんと所持している。

 本来なら関係者でもない私が物見遊山で見学なんて許されるはずではないのだけれども、なんといっても私は遺跡の発見者? でもある。肩書的にも、リオンさまの婚約者になる予定だから、国家機密に触れても構わないということだ。

 そう考えると重いのだけれども。

 ちなみに遺跡には、椿宮の庭園から入ることになっている。つまりは私が落下して骨折した入り口だ。

 そこだけ今も使えるようにしている理由は、椿宮側からリアクションをとらなければ、開閉できないかららしい。つまり、遺跡側からはどこに出入口があるかわからないのだそうだ。もちろんただ発見されていないだけという可能性もあるから、当然、いつも警戒はしているらしいけれど。

 椿宮を訪れると、エディ君が出迎えに来てくれた。

 マーケー地区の孤児院から引き取られたエディ君は、新しく来た椿宮の家政婦長さんに引き取られ、ここの使用人用の区画に住んでいる。三年前と違って、すっかり健康になって、腕白な男の子だ。

「おひさしぶりです。おねえさま」

 小さな子供用に作られたお仕着せを着て、エディは丁寧にあいさつをする。

 なかなか会うことはできないけれど、エディは私のことをこうして覚えていてくれている。とても嬉しい。

「でんかは、お庭で待っているって」

「そう。ありがとう。わかったわ」

 エディの頭をなで、私は兄とともに庭園に向かう。

「お前、すごく懐かれているな」

「こちらにお世話になっている間、よく遊びましたから」

 エディは骨折してしばらく動けなかった時、何度もお見舞いに来てくれた。私が突然、穴に落ちたのは四歳児にも、かなりショックなことだったのだろうけれど。あれは事故だし。それにそのおかげで、いろんなことが解決したのだ。怪我の功名ってやつかもしれない。

「うちで引き取っても良かったのにな」

「……そうですね」

 事件が発覚する前に、リオンさまが孤児院から引き取ったことに書類上なっていたというのと、宮廷医師の診察が必要だったというのが一番の理由だ。さすがにうちで引き取るとなると、宮廷医師の診察は受けづらいというのがある。

 マーケー地区の孤児院にいた他の子たちも、宮廷の診療院にいったん入院となり、その後は新たに出来た国家経営の孤児院に移ったらしい。

「何はともあれ元気で良かったです」

 宮廷の使用人区画はかなり広く、福利厚生はしっかりしているけれど、子供が生活するには少し窮屈そうな印象があるけれど、育ての親である家政婦長さんは非常に面倒見がよく、優しい人らしい。

「ダビー、こっちだ」

 リオンさまの声に呼ばれ向かった先は、さらさらと庭園を流れている川を渡った先にある。相変わらず日本庭園を思わせる作りだ。さすがに今の時期は椿は咲いていないけれど、足元には小さなスミレが紫色の花をつけている。

「すごい荷物だな」

 リオンさまは兄の背負う荷物を見て驚いたようだった。

 多かれ少なかれ、手荷物はあるのだけれど、私がほぼ何も持っていないのに対して、兄は背中に大きなリュックを背負っている。

「二人分だからです。アルキオーネは体力がないので、自分で荷物を持たせたら早々にバテます」

「ああ、なるほど」

 本当は私だって、自分の装備は自分でとは思うのだけれど、兄が言うにはそんな責任感より、往復できる体力を残しておく方が大事らしい。

「アルキオーネ嬢に合わせて歩くから、そこまで心配する必要はないとは思うけれど。ただ、ここからはかなり距離があるから、令嬢には辛いかも」

「自分が言い出したことなので、ご迷惑はおかけしないようにいたします」

 兄に全部の荷物を持たせている時点で、かなり迷惑はかけているのだけれども、兄と私の体力差を考えると、それでも兄の方が全然動けそうなのだ。

 ただ、私が特別に運動不足というわけではなく、そこについては私が一般的な貴族令嬢だというだけのこと。

「ロイスナートさんも、本日はよろしくお願いいたします」

「……」

 リオンさまの護衛騎士であるロイスナートさんは黙したまま頭を下げる。

 相変わらずムッキムキだ。リオンさまも鍛えているけれど、ロイスナートさんの隣にいると、随分とひょろ長く見える。現在二十八歳のロイスナートさんは、童顔なのを気にして、最近は髭を生やすようになり、ベビーフェイスでなくなってしまった。

 椿の植え込みの傍にある青銅の龍のモニュメントの傍には、大きな穴が開いており、縄梯子が掛けられている。穴の傍には、この入り口を警備するために二人の兵士が立っていた。

 光の呪文を唱えてから、ロイスナートさんが一番に降りて行った。

「ところで、アルキオーネ。お前、この高さの縄梯子、一人で降りられそうか?」

「……どうでしょう?」

 下をのぞくととても深い。あの時、よく骨折だけで済んだものだ。打ち所が悪かったら、死んでいたかもしれないなと思ったら、ぞくりとした。

 綱をつけてゆっくり降りるにしても縄梯子というのはかなり揺れている。普通の梯子でも怖い高さっぽい。足がすくむ。

「アルキオーネ嬢は私が背負って降りるよ」

「ええっ?」

 リオンさまは命綱を結ぶと私に背に乗るように背中を向けた。

「リオンさま、それなら俺が……」

「その荷物でどうやって背負う気だ?」

 リオンさまが苦笑する。確かにそれはそうなのだけれど。

「荷物だけ先に下ろせば──」と言いかけた兵士がなぜか隣の兵士に小突かれた。

 私としては兄の方が気楽なのだけれども、リオンさまは一歩も譲る気はないようだ。

「……わかりました。アルキオーネ、リオンさまに背負ってもらえ。絶対に離すんじゃないぞ」

「お兄さま……」

 兄に荷物を持たせているのは私なので、兄がそう言うのであれば、仕方がない。揺れる縄梯子は怖くて一人で降りて行けそうにないのだから、ここは甘えるしかないのだ。

「重くてすみません」

 私は遠慮がちにリオンさまの背に覆いかぶさる。

 思いのほか広い背中だ。お互い皮鎧を着ているから、肌が触れ合うという感じはそこまでないのだけれど、当然のことながら、顔が近い。

「じゃあ、行くよ。しっかりつかまっていて」

 リオンさまは私を背負ったまま、縄梯子を降り始めた。当たり前だけれど、揺れる。怖くてリオンさまにギュッとしがみついてしまう。非常に申し訳ないけれど、やっぱり怖いものは怖い。自分が行きたいと言っておきながら、なんて情けないとは思うのだけれど。

 それにしても、人一人背負った状態でも、リオンさまは危なげなく降りていく。

「ついたよ」

 ぎゅっと目を閉じていたので、リオンさまに言われて初めて下に降りたことに気づいた。

「ありがとうございます」

 ずっとリオンさまに抱きついていたことに気づいた私は、あわててリオンさまの背から離れると、今更ながら恥ずかしくなってくる。

 俯いていると、いつの間にか、兄の靴がすぐ近くに見えた。あっという間に降りてきたらしい。

「では、参りましょうか」

 ロイスナートさんが、火を入れたランタンを掲げた。




昨日は、重文投稿をしてしまい申し訳ございませんでした(修正済み)


ストックを完全に切らしておりまして、読み直しをする時間もない日もあり、毎日投稿に限界を感じ始めております。

とりあえず、今日、明日は更新します。(月水金の三日更新もしくは、不定期更新にするか検討中です)


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