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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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51/119

婚約 5

短めです。

 結局のところプロティア教の巫女というのは、どれくらいの立ち位置なのだろう。

 普通に考えて、子爵令嬢であるマイアは、皇族の結婚相手として名前が挙がることはない。原作のように大恋愛の末にレジナルド皇子と結ばれるとなったら、かなり大きな障害が待っている。それこそ、上級貴族に養子縁組などを行い、皇子と身分が釣り合うようにしなければならない。

 前世の記憶がある私としては、身分なんてと思ってしまうけれど、少なくともこの世界ではそういうわけにはいかないのだ。

 そんなマイアが皇子妃として名前が上がるということは、プロティアの巫女というのは、かなり希少な存在だということになる。

「ガデリ司祭にご相談なさってはいかがでしょうか?」

「おっちゃんなら、今、帝都にいないぞ」

 兄が首を振る。

「国境沿いの神殿のいくつかを視察に行くと聞いている。マーケー地区のことがあってから、念入りに視察をしていて、忙しいらしい」

 神殿側としても、ナスランの捜索を続けていて、その指揮を執っているのが、ガデリ司祭だ。人選として申し分ないけれど、そのために本殿に不在なことが多くなっているらしい。

「つまりその隙にダリン司祭が好き放題しているということだ」

 コホンと、陛下が咳払いをする。

「プロティアの巫女は司祭の秘蔵っ子でな」

 誘拐事件のあと、マイアは心身喪失状態で神殿の治療院に入ったらしい。そこで治療を受けているうちに、神力を得て、神の声を聞けるようになったということだ。

「まだ未成年ということもあって、神官というわけではない。が、見栄えが良いこともあって、光輪派の説法の時に顔を出したりすることもあるようだ」

「つまり有名人ということですか」

 私はそれほど熱心な信者ではないから、まったく知らなかった。

「光輪派は、プロティア教の三割くらいまで勢いを広げている。またその三割が、他の七割よりも熱心な信者だ。いや、過激というべきかな」

 陛下は大きくため息をついた。

「皇子妃にと言っているのは、まだ一部だ。そもそも、あれだけの観客がいるなかで、公子といちゃつく姿を見せつけている。周囲の思惑はともかく、巫女本人はそう思ってはいないのかもしれない」

「そうですね……」

 少なくとも、マルドーネ公子のためにリボンを縫うまでしている。もちろんルール上、誰が縫ってもいいことにはなっているのだけれど。私と違って、直接、決闘の原因になっていたというわけでもない。

「それにしても、あの決闘時、剣が光ったようにみえたの、本当に神力だったのですか?」

 兄は未だにザナン伯爵の説明に納得がいっていないらしい。

「あの時はあのように申し上げましたが、実は不審に思いまして、魔素を回収しました」

 マルドーネ公子にリボンを預けられた時、こっそり魔素を回収したらしい。

「魔素そのものは、光の護符でまちがいありませんでした。ただ、私が検査した時より、魔素にくっついている神力は増幅していました」

「増幅?」

「神の力は、魔術と違い、『祈り』により増幅できるという特徴があります。そもそも魔刺繍のように付与するのは非常に難しいのですけれども」

 神力は高位の神官ならば、護符などを作ることが可能だが、素材を選ぶ。どちらかといえば固いもの、石や金属などを使うという話だ。

「つまり増幅した神力が光らせたと?」

「……そういうことになりますね」

 ザナン伯爵は頷く。

「それって、不正ではないのですか?」

「厳密には。ただ、それよりも、魔素が地下遺跡で見つかったものと酷似していることの方が重要です」

 不正を疑って調べ始めたザナン伯爵だったが、それどころではなくなったということらしい。

「あの。もし同じだと仮定するのであれば、マイア・タランチェ子爵令嬢は地下遺跡で何らかの魔術を使ったことになりますよね。ですが採取したのは三年前なら、彼女はまだプロティアの巫女として目覚めてはいないのでは? もちろん神力と魔力は関係ないのかもしれませんけれど」

「それが不思議なのです。魔素は神力によって言ってみれば同じように変質しています。ですから、普通に考えたら彼女のものではないはずなのです」

 不可解だとザナン伯爵は首を振る。

「ところで、その魔素は何の術の魔素だったかわかるか?」

「用途が分からない設備の部分で回収したものです。現在解析中ではありますが、失われた移動の魔法陣の可能性が高いとみておりますが」

 ザナン伯爵の話で何となく思い出したことがある。

 原作でリオンさまは、地下遺跡を自分の城のようにしていた。この国では失われてしまっている空間移動の魔術を使い、学院内のあらゆるところを自在に移動していた。それから沼人を操り、一度入ったら出ることが困難な迷宮に侵入者を閉じ込めたり。

 そういえばリオンさまが率いていた『赤い月』という魔術師集団は、何かを手に入れて何かを復活させるために活動していたような気がする。それがいったい何だったのか全く思い出せないけれど。

「アルキオーネ嬢?」

 黙り込んだ私をリオンさまが心配そうに覗き込む。

「龍の病にかかった時に見えたものを思い出しました。関係があるかどうかはわかりませんけれど、その場所に連れて行ってもらってもいいでしょうか?」

 小説の中で、リオンさまは、自らの血を使って空間移動の魔術を使っていた。マイアがリオンさまに連れ去られるところで、しっかりと『見た』描写があったから、やり方はたぶんわかる。もし、小説が龍の未来視ならば、私にも使えるはずだ。やり方が違うのであれば、それはそれで私はもはや原作のことを気にしなくてもいいということになる。

「アルキオーネ嬢、それはいったい……」

「お願いです。リオンさま。実際に見たら、もっと思い出せることがあるかもしれません」

 もし原作の内容と少しでも一致するのであれば、それこそ遺跡の謎も解けるかもしれない。

「リオン、アルマク嬢を案内しなさい。遺跡は三年がたってもまだ謎が解けていない。そのヒントでもみつかるなら、やってみるべきだ。なにしろ帝国創世以前の遺跡のようだからな」

「……わかりました。ただし、きちんと準備してからにしましょう。少なくとも制服やドレスで行くような場所ではありません」

 陛下に命じられて、リオンさまは諦めたように頷いた。

 

 

暑すぎて集中ができません( ;∀;)

みなさまもお身体ご自愛ください。

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