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私を殺すラスボスは兄の親友  作者: 秋月 忍
高等部編

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105/119

初恋?

 ロイヤルルームに向かうと、リオンさまと兄、それからフィリップ兄さまも一緒だった。

 ちなみにレジナルド殿下は、今日は生徒会室で食事をとるらしい。リオンさまとレジナルド殿下の仲は悪くないから一緒のことも多いのだけれど、今日はたまたま、ということだ。

 エミリアさまと目が合うと、兄は申し訳なさそうに頭を下げた。

 陛下に呼び出されたことは兄にとってもショックなことだったようだ。

 もっとも兄は、アルマク家がメルダナ公爵家とつながりを持つことを良しとしないのではないかと思っていそうだけれど。

 ちなみにクラーク先輩は、剣術の稽古が忙しいとかで今日は来ていない。クラーク先輩は既に騎士隊からスカウトが来ていて、卒業と同時に入隊することが決まっている。相変わらず、ちょっと気弱なところがあるのだけれど、剣を持つと別人のように強くなると評判だ。

「リオンさま。それで、いったいどういうことだと思われますか?」

 テーブルにつくと、私は質問をする。

「私とリオンさまとの縁談が問題になっているということでしょうか?」

 アルマク家が権力を持ちすぎてはいけないということなら、理解できなくはない。うちはどの派閥にも属していない中立派で、良くも悪くもないという侯爵家だった。私がリオンさまの婚約者に選ばれたとき、龍の巫女という事実を伏せた状態でも特に反対されなかったのは、そのせいもある。

「そうではなくて……結構面倒なことになっている」

 リオンさまは険しい顔になった。

 どうやら陛下の単純な嫌がらせとかではないらしい。

「フィーナが、アルキオーネ嬢の兄に惹かれているという話があってな」

「フィーナさまが?」

 私たちは異口同音に叫ぶ。

「待てよ。俺はそもそも殿下と話したのは数えるくらいしかないぞ」

 兄は首を傾げる。

「うん。それは私もそう思う。たぶん、私とアルキオーネ嬢との婚約を発表した舞踏会の話だとは思うのだが……」

 リオンさまも半信半疑という感じだ。

「挨拶くらいはした……けれど、たいして話をしていないし、アルキオーネと離れてからは、ずっとメルダナ嬢と一緒だったし」

 そもそも舞踏会では魔道灯の事故があって、早々に中止になってしまった。

 フィーナ殿下も事故の後は安全を確保するために部屋に戻られたはずだ。

「私を担いで逃げて下さったダビー先輩の勇姿に惹かれたとかでしょうか?」

 エミリアさまは心配気に呟く。

「そんなことはないと思うのですが」

 そもそも自分にも危険が及ぶような事故の時に他人に目をやるほどの冷静さがあったとしても、それはいわゆるひとめぼれみたいな熱を持つとはあまり思えない。

 それにお姫さま抱っこをして逃げたのならロマンティックだけど、担ぐようにしている時点で、ポイントはかなり低いはず。

「でも、事故処理の時、ダビー先輩はかなり目立っていらしたから──」

「フィーナ殿下は事故の時、飲み物コーナーにいたから、その勇姿は見ていないと思うよ」

 横からフィリップ兄さまが口をはさむ。

「飲み物コーナー?」

「ああ。レジナルド殿下と一緒にいたからね。だから気に入ったとすれば、他のタイミングじゃないかな」

 フィリップ兄さまは従姉とともに殿下たちと話をしていたところだったらしい。

「他のタイミングって、どのタイミングだよ。そもそも殿下と話をしていないし、自分で言うのも悲しいけれど、俺の容姿に一目ぼれするなんてありえないと思うし──」

「そんなことはないです」

 兄の言葉をエミリアさまに否定されて、兄の顔は真っ赤に染まった。

 そして、それを見てエミリアさまも顔を赤らめて俯く。

 うん。案外、ラブラブなのね。他でやって欲しいかな。

「待って」

 リオンさまは、フィリップ兄さまを見た。

「フィリップ、事故の時、フィーナをかばったとかした?」

「騒ぎになってガラスとかもいくつか割れましたので、両殿下の安全を確保しようとはしましたけれど」

 フィリップ兄さまは()殿()()の安全の確保をしたという自覚はあるけれど、フィーナ殿下をかばったという気持ちは薄いらしい。

「念のために聞くけれど、ランデバーという家名は名乗ったよね?」

「名乗りましたよ」

 リオンさまの質問にフィリップ兄さまは首を傾げる。

「リオンさま? どうかしたのですか?」

 リオンさまの意図が分からず、私は口をはさむ。

「なあ、フィリップ。君か、それとも兄上かわからないけれど。ひょっとして、アルキオーネ嬢を妹のようだとかフィーナに話してはいないか?」

「え? どうしてそれを?」

 フィリップ兄さまは驚いたようだった。

「なるほど。そういうことか」

 リオンさまは得心したというように頷いた。

「フィーナ自身が勘違いしたのか、それともフィーナの話を聞いた誰かが勘違いしたのかわからないけれど、フィーナの相手はダビーではない。おそらくフィリップ、君だよ」

「は?」

 私たちは再び異口同音に首を傾げ、目を丸くした。

 

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