呼び出し
兄とエミリアさまの縁談は驚くべきスピードでまとまっていった。
両親からしてみれば、メルダナ公爵側から求婚状がきたというだけで青天の霹靂だ。
加えて、兄とは相思相愛だという。話がうますぎて父は私の結婚式の後に開けると母と約束していたワインを開けてしまい、非常に怒られたそうだ。
母も、エミリアさまは私と仲が良いことを知っていたから、何か話を聞かせろと椿宮まで押しかけてきた。反対なのかと思ったら、兄とエミリアさまのなれそめとかをしりたかったらしい。相変わらず恋バナ大好きな人だ。息子の恋バナまで聞きたいとは。
ちなみに上級貴族同士の婚姻は皇帝陛下の許可がいる。
と言ってもほぼ形式だけのもので、普通は申請したらよほどのことがない限りすんなり決まるものだ。
「どうしましょう。アルキオーネさん。陛下に呼び出されてしまいましたわ」
両家からの連絡を受け、通常なら日をあけずに降りるはずの許可がおりず、逆に宮廷から呼び出しを受けたらしい。
呼び出されたのは、メルダナ公爵とうちの父。それからエミリアさまと兄だ。
「おそらく婚約のことだと思うのですが……」
エミリアさまはとても不安そうだ。
メルダナ公爵家とアルマク家の縁談は、異議を唱えられるほどおかしなものではない。あえていうならば、私がリオンさまに嫁ぐことになっているから、格上のメルダナ公爵家と繋がることを良しとしない人間がいるかもしれないとは思う。
「リオンさまに相談してみましょう」
「……ええ」
アルマク家は今まで権勢と無縁の家門だった。人は変わるものではあるけれど、今のところ父も兄も権力に興味はない。財力に関してさほど問題はなく、メルダナ公爵家やリオンさまの足を引っ張らない。逆に力を強めるほどでもない。
とにかく可もなく不可もなくを売りにしているような家門だ。
特に皇帝の意に背くようなこともしていない。
「まさか本当に嫌味を言うためだけに呼び出したってことはないと思いたいのですけれど」
昼休み。ロイヤルルームにいるリオンさまのもとに向かいながら、思わず呟く。
「どういうこと?」
「先日、リオンさまに、陛下がお兄さまを気に入っていらっしゃるって話を聞きまして」
「そう……では、やはりフィーナ殿下とのお話があったのですね」
エミリアさまの表情が険しくなる。
「ダビー先輩は誰彼構わずたらしこむ人だから……そう、陛下もなのですね」
「嫌味を言いたい程度には、気に入っていたというらしいのです。ただ、それは陛下であって、フィーナ殿下ではありません。そもそも兄はフィーナ殿下とは親しくもありませんし」
「それは……わかっていますけれど少し心配ですわ」
エミリアさまはふうっとため息をついた。




