↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MT  作者: あだぞら
PR
6/15


理科の授業を終えて、携帯を見たら、メールが十件近く着ていた。

その全てが、僕がいじめられていたことを冷やかすような内容だった。

また全てのメールに返信したら、他人に合わせるなんて言われてしまうのだろう。

僕はとりあえず、一番最初に着たメールに返信しておいた。


―勘違いだって(笑)

 そんなこと誰から聞いたのさ


―いじめられねぇように必死なのは分かるけどさ、さっさと認めろよ。

 どうせ最初からバレてたんだからさ。


最初…から…?

なんで、バレてたんだろう。転校初日のあいさつの時に、変な仕草でもしてしまったのだろうか。

喋り方?それとも普段の態度?

何が、いけなかったんだ…?


―どうして、バレてたの?


僕はこのメールを送信してしまった。

これが、僕の敗北を意味していたのだと、僕はまるで気付けなかった。


―バーカ。んなことわかるわけねぇだろ。

 自分で認めるようなバカ相手じゃないかぎりな。


まるで意識が遠くなるような感覚がした。

錯覚がしたんだ。

summermusicの質問に対する答えのせいで、いや、ずっと前に、バレていたんだという。

このクラスのみんなが、僕がいじめられていたことを知っているような錯覚がしたんだ。

脱出できやしない牢獄に閉じ込められたような、逃げ道を全て塞がれたような。

また、前の学校みたいにいじめられるんだ。そんなことを、別世界にいる人間のことを思うみたいに、感じたんだ。


「…邪魔なんだけど」

携帯の画面を見て立ち尽くしていた僕に、戸崎が冷たく言った。

「ごめん」

僕は、相手の顔も見れないまま言った。

全ての人にとって、僕が邪魔な存在でないように、必死に願いながら。


―死亡だね。二日目にして早くも敵だらけ。


昼休みに入ってから、メールが送られてきた。さっきのやつとは違うアドレスだった。僕がいじめられていたことを認めたことは、きっとみんなに知れ渡ってしまったんだろう。

僕の前には地獄のような三週間が待っているだけだと、漠然と思った。もう、負けたんだ。


―ねぇ、バカな男子のことなんて気にしなくていいよ?


mellowからだった。まだ、味方がいるんだ。僕は嬉しくなった。


―バカだもん。あいつら。楽しんでるだけだから無視しなきゃね。

―いっそのこともっかい転校しちゃえば?またいじめられるんだからさ(笑)

―いい加減にしてほしいよね。男子達、いつまでもガキなんだから。


summermusicのグループは中傷メールを送ってくるけど、mellowのグループがかばってくれる。

前と同じじゃない。今度は守ってくれる人達がいるんだ。


―のまれちゃだめだよ。男子なんかにさ。

―ニモツまとめて、さっさと引越しの準備したら?


こんな感じで中傷のメールと励ましのメールが代わる代わるに送られてきた。

僕は中傷のメールをそれほど気にしないでいれた。mellowのグループがかばってくれることが、とても頼もしかった。なんだか楽しかったんだ。

いじめられてるのは確かなんだけど、守ってくれる人がいて、それが嬉しくて。

前の学校のことが夢に出てきて汗びっしょりで夜中に起きて、誰にも迷惑かけたくなくて膝を抱えてた。

そんな日々に、かばってくれる仲間ができた感覚が、嬉しくて、生きてるってことが希望に思えた。

生きてるってことが、楽しくなったんだ。


―誰でもいいんだよねー。男子にとって楽しかったら全部OKみたいな、さ。

―もう、返信してこないの?朝みたいにさ(笑)

―たった二日でこのザマってのが凄いよな(笑)

―すこしの辛抱だからさ。がんばってね。


新しいメールが来るたびに、いろいろと思い出した。

テレビで言ってた仲間がいればなんとかなる、なんてこと、キレイゴトだと思ってた。

実際に仲間がいることって、すごく心強い。

自分がいじめなんかに負けないくらい、強くなった気がした。


―ケジメつけろって感じよねー。男子はさー。いつまでもガキなんだから。

―てか、自分からバラすとかマジウケる(笑)

―くだらないよ、男子のやってることなんてさ。気にしちゃだめだめ。

―レベルが低い男子なんかに構ってちゃだめだよ。

―なんかさー、いじめられっこだなーって思ってたんだよねー。

―いつもビクビクしてたの、実はバレバレだったよーん(笑)


学校が終わって、メールが来なくなっていた。

もう、飽きたのだろうか?でも、mellowのグループからも来なくなってしまった。

いじめは、まったく表面化しない。

メールでは中傷が飛び交っても、実際は騒がしい教室内があるだけ。いつも通りの教室があるだけ。

でもそれが、逆に少し怖かった。

僕の知らないところでは、どこまで悪口が飛び交ってるんだろう。

誰が僕をいじめてて、誰が僕の味方なんだろう。

何気なく話してる人が、実は僕をいじめていたり、なんとなく遠めに見てた人が、実は僕の味方だったり。

僕には誰が敵かなんて、わからない。誰が味方かなんてわからない。

僕はいつもよりぎこちなくクラスメートに接して、いつもよりビクビクと辺りを気にした。


―ハッロー!またまたいじめられる気分はどう?


summermusicからメールが届いた。

僕はこのメールを見て少し笑った。嘲笑った。

バーカ。ぜんぜんつらくなんてないんだよ。


―別に。ぜんぜん平気だけど??(笑)


今度は仲間がいるんだ。僕を、守ってくれる。

お前等なんかに、負けない。


―希望で胸がいっぱいの初心者君にいいこと教えてあげるよ。

 昼休みから届いたメールの、一番最初の文字、届いた順番に読んでみろよ。


何言ってるんだ?僕はそう思いながらも、メールを開いてみた。

順番に読んでいくにつれて、僕の鼓動は早くなった。


 死 ね バ い い の ニ 誰 も た す ケ て く レ な い


仲間なんて、最初からいなかったんだ。

みんな、みんな敵だったんだ。

僕は携帯が嘲りのメールの受信のたびに、それと同じように震えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。