曳かれ者のプロローグ
キルゼムオール・シンフォニア・ナイトメア三世、略してキルゼは魔界の王である。まぁもちろん誰もがご存知の通り、この世界と別のレイヤーには魔界という『世界』があるわけだけど──そこを統べるキルゼムオール家の第三代当主が、彼・キルゼだ。「誰もが平等に不平等になれる魔界」を実現すべく弱きを虐げ強きを虐げるサディスティックな統治をし、魔界の住人たちが謀反を起こすたびに、その圧倒的な力で全員を捩じ伏せてしまうらしい。
そしてぼくは小柴去見である。
今回の語り部は、ぼくである。
まぁ、どんな誹りも甘んじて受け入れよう。詐欺じゃねーか。こっちは小柴未来来の物語が読みたくて来たんだぞ、っていうか最初はちゃんとそっちが出てたじゃねーかよ、と。
その通りで、このお話の語り部を務める何の取り柄もない人間のことは、誰も求めていないことだろう。いちおう言っておくと、ぼくはおねえちゃんではないので、異世界がどうとかいう話もここでは控えめになると思われる。
舞台はあくまで、現実なんだ。
もっとも異世界のことを言うなら、並行世界どうしを繋ぐ接点自体がもうほとんど絶たれてしまっているのだけれど──この先、いったいなにやるんすか?
言っても不毛なことは不問にして踏み倒そう。
ともかくそういうわけで、おねえちゃんのような(暇な人は、今回の話に「おねえちゃん」というワードが何回登場するのか、数えてみてもいいかもしれない)、切った貼ったの一大スペクタクルをお望みの方はいますぐ本を閉じるか、ブラウザバックを推奨する。ここから始まるのは地味で不快なだけ、あとちょっとだけ魔界の王とかそういうのがカメオ出演してるくらいでの、原則として無味で退屈で何の役にも立たない、ぼくの話である。
無味で退屈で何の役にも立たないぼくにお似合いな、ぼくの話である。
さて、うちの姉はフィクションならなんでも食べる。そういう特性があってか、いつも何か話を始めるときの決め台詞──であり、そのまま有事の際に使える固有能力にもなってしまったコトバ──は、『あれ』だったわけだけれど。正直、ぼくに同じものを期待されても困る。ぼくはあんなふうに自信満々に自分の話をすることなんて一生ないし、そもそもこちらは基本的にアニメ・ノベルゲームラインの人間だ。置いている前提がまるで違うのである。
それでもまぁ、換骨奪胎。最低限の務めは、ぼくだって果たそう。
というわけで、こんなのはどうだろう。
──開始。




